竜族の社会階級:ライダーとハートレス


■竜族が彼ら自身を竜の末裔まつえいと呼ぶのは、力ある生物である古竜とつながりを持っているためである。そのつながりの強さから、竜族は3つの階級と、アウトカーストに分けられている。つながりの強さは主に遺伝性のものであり、〈乗り手ライダー〉の多くが五公十家と呼ばれる貴族階級の出身である。


■つながりの基礎となるのは、竜族の体内にある〈竜の心臓〉であると考えられている。〈竜の心臓〉は人間にはない謎の器官で、これにより竜族は古竜を使役し、種々の超常の力を発揮させることができる。力の種類は、そのまま古竜の種類による。


◎〈乗り手ライダー〉:古竜の主人となり、その力を引き出すことができる者。その数は年々減り続けており、竜族全体の1~2パーセントしか存在しない(五公十家に限れば、六割から七割)。竜と同化するような形で能力を使うので、竜術において詠唱や掌相を必要としない。領主貴族、またその嫡子となる者の多くは乗り手ライダーであるが、古竜は希少な存在であり、また跡取りたちにとって必須の能力というわけでもないため、乗り手ライダーであっても古竜を持たず、乗りこなせない者は多い。


◎〈呼び手コーラー〉:〈乗り手ライダー〉の名のもとで古竜と契約し、その力を使うことができる者。ごく弱い能力を含めれば全竜族の半数程度がこのカーストに属すると考えられている。いくつかの術を組み合わせて使うような高位のコーラーは、術の発現を補助するために古代文字の刺青をしていることが多く、彼らの階級的特徴となっている。詠唱えいしょう掌相しょうそうを使うことで、複雑で高度な術を使うこともでき、ライダーよりも優れた能力を発揮するケースも。多くのものが高度専門職に就く。


◎〈聞き手リスナー〉:古竜の声を聴くことはできるが、竜術を使用することはできない者。つまり、使える能力は〈ばい〉のみ。全竜族の三~四割程度を占める。特に表記しない多数の竜族がここに属する。


◎〈ハートレス〉:竜といかなるつながりも持たず、声を聴くこともできない(〈ばい〉が使えない)者。〈竜の心臓〉を持たずに生まれたか、完全に機能しない状態であると考えられている。そのため、〈ハートレス〉という蔑称で呼ばれる。著しい少子化に悩む竜族社会においては、人間との混血であっても成人の儀で竜族としての誓いを立てれば建前上は完全な竜族とみなされる。そのため、偏見はあるものの公的な差別はない。一方で〈ハートレス〉は公職に就くことが許されていないなどの差別を受けている。


※竜族以外にも、たとえば人間に〈竜の心臓〉が宿るケースも存在している。彼らは寿命以外では竜族とおなじような力をもつ。ライダーのような強い力をもつ者もいるとされるが、多くは軽い〈呼ばい〉が使える程度。竜族と人間とを見分けることができるため、〈トカゲ捕り〉と俗に言われることも。

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