番外編

七夕~星に願いを~

1日遅れですみません……(>_<)

久しぶりの短編の番外編です!

時間軸は『岐路③』以降です!(大雑把)


*****


「シャル。何してるの?」

私の手元を覗き込む様に、ひょっこりとお兄様の顔が真横に並んだ。


「うぎゃっ……!」

……相変わらず神出鬼没なルーカスお兄様の出現に驚いた私は、思わず手元の紙をぐしゃぐしゃに潰してしまうところだった。


兄妹とはいえ、お兄様のアップは心臓に悪い。それは、まあ、急に現れるお兄様が悪いのだが……。


真のイケメンは、間近で見ると目が潰れそうになるんだよ!ホントだよ!?

目がぁぁ……目がぁぁあ!!

なんてね!


心の安寧の為にも適切な距離は大事です。


「願い事を書いてました」

まだ少しバクバクと痛む心臓を押さえながら、そっと距離を取る。


「願い事?この細長い紙に?書いてどうするのさ」

「……お兄様」

距離を取った分……何故か、お兄様が近付いて来た。


どうして距離を詰める!?

「嫌なの?」

「……嫌ではないですけど」

「じゃあ、良いじゃない」

「……ウン。ソウデスネ。」

私は気にしない事にした。


ニコニコと微笑むお兄様を止める手段が浮かばなかったからだ。


「今日は七月七日……『七夕』の日なんです」

「それは和泉さんの世界の?」

「はい。七夕の日には笹という……木の様な枝に、願い事を書いた細長い紙を飾るのです」

「へえー、不思議なイベントだね」

「はい。他にも、七夕には『織姫』と『彦星』と言う……ええと……、詳細は色々と省きますが、一年に一度だけ会うことを許された二人が唯一出会える日でもあるんです!」

「知り合い?」

「いえ。神話……というか伝承というか……『無事に会えたら良いね!』と皆で応援します!」

「……意味が分かるんだか、分からないんだか。でもまあ、シャルとリカルドみたいだね」


な・ん・だっ・て?


「二人は神のせいで自由に会えないんだよね?」

「ええ、まあ……はい。会いたかったら、ちゃんと自分の仕事をしなさいという戒めもありますからね」

……これがどう私とリカルド様に当てはまると?


確かに、お互いに忙しかったりして、会えない日々も多いが……私達は一年に一度しか会えないわけではない。

だからこそ、お兄様の真意が分からない。


「僕が神様。シャルとリカルドが織姫と彦星。……ね?似てるでしょ?」

ニコッと笑いながら首を傾げるお兄様。


ああ……。

お兄様の言いたい事をようやく理解した。


『ね?似てるでしょ?』……じゃない!

分かっているなら、もっと私達を放っておいて欲しい。

って、堂々と言ったよね!?


私はリカルド様とイチャイチャしながらラブラブしてモフりたいんだよ!


「却下」

「『却下』!?……私、まだ何も言ってませんけど」

「シャルの考えてる事は全部お見通しだよ」

「左様ですか……」

私は半眼で虚空を仰いだ。


お兄様は神様じゃなくて……魔王だよね。うん……。魔王様おにいさまだよっっ!!


「それで、シャルロッテは何を書いたの?」

……願い事。

それなんだよねー。


迷うところである。


リカルド様ともっと会いたいとか、ラブラブしたいとか、モフモフしたいとか……リカルド様との願い事だけでも、正直言って山の様にある。


でも、これを素直に書いたら、お兄様が瞳を細めながら『ふーん』って笑うのが目に見える。

……心の負担を減らす為には、もっと一般的な願い事でなくてはならない。


「因みに……お兄様の願いはありますか?」

チラッとお兄様を見ると、お兄様がニッコリ微笑んだ。


「シャルとリカルドの破きょ……」

「あー!!今日は良い天気だなー」


おい、こら!お兄様!

今、何て言おうとした!?

『破局』!? そんなの認めないよ!?


「そ、その他は?」

「えー?我が儘だなー。でも、教えてあげる。シャルが行きおく……」

「はっ!?」

何なんだお兄様は!!


『行き遅れ』!?

今度はそう言おうとしたよね!?


恐ろしや……どうしてそうなるの。


「お兄様……」

『破局』に『行き遅れ』って……

リカルド様という大好きな婚約者がいる私的には看過できないんですけど!?


「大事な妹には、僕の側にいて欲しいって願っちゃ駄目なの?」

「……うっ」

お兄様が、捨てられた子犬の様な瞳でこちらを見ている。

『まだまだ』と強調された部分は気になるが……。

私だって、リカルド様とずっと一緒に居られたら良いなって思うが……お兄様と離れ難い気持ちだってあるのだ。

みんな一緒に幸せになりたい。


「では……こんな願い事はどうでしようか?」

私は短冊にサラサラとペンを走らせた。


書き終わった願い事は――――。


【いつまでも皆で幸せに過ごせますように】


「平凡だけど良いんじゃない?」

「……平凡が一番です!」

私が無難にまとめれば……その言い方!

くっ……。コレが魔王様おにいさまか……。


「ああ、でも君にはコレが足りてないんじゃない?」

お兄様はそう言いながら、私からペンを奪った。


【美味しいお酒がたくさん飲めますように】


……よくお分かりで。


「美味しいお酒を飲みながら、大好きな皆といつまでも幸せに暮らしたいですね」

「うん。後はシャルとリカルドがわか……」

「あー!何も聞こえない!!」


そんな願いは叶えてたまるか!


――私はしばらくの間、耳を塞ぎ続けたのであった。



皆さんの願い事が叶いますように……。

byシャルロッテ

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