神を起こす方法⑥

「これは…………?」

右手の小指には米印の様な……アスタリスクの様な模様が付いていた。

因みに……『*』こんな模様である。

私は、こんな模様のネイルをした覚えはない。というか、確実にしていない。


「それは酒精の加護の印よ」

セイレーヌはニッコリと微笑んだ。


「酒精……カシスの……加護?」

「ええ。シャルロッテの事を気に入ったみたいだったからお願いしたの」

……私を気に入った?……どこを?


「酒精をはじめとした精霊達はとても気まぐれよ。現にあなたでも精霊に出会った事はないんじゃないかしら?」

……確かに、シャルロッテとして生きてきた中で、精霊に出会った事はない。

精霊なんかいたんだ……?!

でも……

「付喪神は?……精霊とは違うの?」

「ああ、あなたの所の『ロッテ』ね」


そう。私の万能オーブン➀号(旧)こと『ロッテ』だ。

最近突然、付喪神に進化してしまった私の可愛い子である。

もう一台のロッテ➁号改め……『シャーリー』は、現役オーブンで私の為にバリバリ働いていてくれている。

シャーリーが付喪神へと進化するのも時間の問題な気がする。


「存在としては近いけど、あの子と精霊とは違うわ。付喪神は物に宿るのに対して、精霊は万物に宿る。精霊の方が存在としては上になるかしら」

付喪なだけあって、もっと上の存在なのかと思っていたがそうではなかったらしい。


勉強になったな。そう思いながら大きく頷いていると、彼方がおずおずと手を挙げた。

「……私は精霊に会った事があります」


おお!流石は聖女の彼方たん!!

いつの間にか精霊に出会っちゃっていたんだね!?

うんうん。美少女と戯れる精霊……絵になって良いじゃないか!


「ここまで来ると病気なのかもしれないわね」

「言ってやるな。主はきっと疲れているんだ。娘よ」


……あのね?そろそろ本気で泣くよ?!

どうして私の心の声が聞こえるのかな!?

二人共、確かに心を読めるスキルを持っているかもしれないけど、その力は封印されているんだよね!? 改めて確認していないけど違うの!?


私は金糸雀とサイをジト目で見た。


「ええと……何の事かしら?」

は封印されなかった……なんて言わないぞ?」

下手くそか!!

へー?ふーん?そうかそうか……。


「二人共、私の心の声を聴き放題だったんだね!?」

「それは違うわよ?」

「……何が違うの?」

「主は分かりやすいのだ」

「ええ。そうよ」

「だから心を読む必要なんかないのだ。主よ」

サイの言葉を聞いたお兄様が盛大に吹き出した。


「お兄様……汚いです」

「あははっ!ごめん、ごめん!……っく……ははっ!」

お兄様のツボに入ったらしい。大爆笑だ。


……はいはい。

あなたも読める側の人間でしたね。

なのに、その力を使わずに私の考えが分かる……。

だからそんなに面白いんですよねー?


「気にする事ないよ。それがシャルロッテだから」

「リカルド様……」

普通に捉えれば、誉めてるのか貶されているのか……微妙なラインだが、リカルド様が私を貶すはずがない!!

よし!この件はリカルド様に免じて水に流してあげよう!


「彼方は何の精霊に加護を貰ったの?」

話題をスルリとすり替える。

「え?……ええと……光の精霊だって」

なんと!光の精霊……!

一気に聖女感が増したじゃないか!

グッジョブ!光の精霊!!このままずっと彼方を見守り続けて欲しい。


「凄いね!」

「私自身は凄くないよ。光の精霊は凄いと思うけど……」

「相性が合わないとそもそも精霊には合えないわ。加護を貰ったのはあなた自身の力によるものだから誇っていいわよ?」

「はい!」

セイレーヌの言葉に大きく彼方が頷いた。


こうして彼方の成長が見れるなんて……彼方のお姉ちゃんぶっている私には、こんなに喜ばしい事はない。

彼方の小指の爪に付いている光の精霊の加護は星の様な模様だった。

彼方に似合う可愛い模様である。


取り敢えず……。

「カシスが無事で良かった……普通に突然死んじゃったのかと思ったー……」

私は心の底から安堵の溜息を吐いた。


「安心して。酒精も精霊も簡単には死なない。例え消えてしまっても大地に還るだけだから、いずれまた生を受けるわ」

「そうなんだ!」

「ええ。分裂したカシスもこの空間にいるはずよ。気が向いたらまたあの姿で出て来るかもしれないわね」

「へえー……」

精霊達の存在はなかなかに興味深い。


おっと。そうこうしている内に用意していたお酒が無くなりつつあるじゃないか!


「さて、そろそろ……とっておきのヤツを開けちゃおうかな!」


テレレテッテテー!(ドラ○もんが秘密道具を出す時の効果音だよ!)

「秘伝の純米酒ー!」(ドラえも○風に!)

私は異空間収納バックの中から、一升瓶を取りだした。


……ってあれ?

「ロッテ!?」

一升瓶にロッテが貼り付いて眠っていたのだ。


「ふわあぁー……ご主人様、おはようございますー……」

私の声で目覚めたロッテが、寝ぼけ眼を擦りながらそう言った。


「何で異空間収納バックの中にいたの!?」

全然気付かなかったよ!?

っていうか、いつの間に入ったの!?


「『私も行きたい』って言ったら反対されると思って隠れてたんです!」

ドヤ顔のロッテも可愛いけど…………自由だな?!

……恐らくはまた、マリアンナを良い様に使ったのだろう。

ごめんね。マリアンナ……。



「ロッテ……」

「私の力が必要になるかと思ったのです!」

「力……?」

「私がこの純米酒を作りました。ご主人様は酒精の加護を……貰ったのですね?」

「う、うん。分かるの?」

「ご主人様大好きな私が気付かないわけがないじゃないですか!」

うーん……。ロッテもチートの一部だから……分かるのだろう。


「私ならご主人様とこの純米酒を繋いで、酒精の加護を純米酒に付与出来ますよ!」

なんだって!?とっておきのヤツに加護とかやばみー!

……失礼。若者言葉が入ってしまいました。


「ね?私がいて良かったでしょう?ご主人様」

ロッテが私の目の前でニッコリと笑った。

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