神を起こす方法⑦
「ね?私がいて良かったでしょう?ご主人様」
蜂蜜色のふわふわな髪で赤みがかっている大きな丸い瞳。
私にそっくりな顔をしたロッテがニコニコしている。
流石は私の可愛い
「じゃあ、早速だけどお願いしても良いかな?」
「はーい!」
ロッテが元気に手を挙げた。
「あ、ちょっと待って!」
「……ご主人様?……あっ!!」
私はごそごそと異空間収納バックの中を探って取り出した物を、ロッテの口元に運んだ。
「ご主人様……これ……おいしいでしゅ-……」
ロッテの為に用意しておいたラベルの味のする小さな薄紫色の飴だ。
幸せそうに両頬に手を当てながら口の中で飴を転がすロッテ。
そんなに頬を押さえなくても落ちたりしないよ?
私は微笑ましい気持ちになる。
喜んでもらえて良かった。好きだと思ったんだよねえ……
「うわあっ!」
ロッテから視線をゆっくり外した私は、悲鳴交じりの声を上げた。
だ、だって驚いたんだもん!!
振り向いた先に……目の前に急に顔があったら驚くよね?!
「シャル。それ何?」
犯人はいつもの事ながらお兄様だ。
驚きすぎてまだ心臓がバクバクしている私なんてお構いなしで、私の手元の小瓶を指差している。
「……これはロッテ用に作ったラベル味の飴です」
私は諦めて、お兄様の質問に答えながら小瓶を渡した。
この状態のお兄様に何を言ってもスルーされるのがオチだからだ。
……私強くなったよね。
「へえー。こんなに小さい粒なのにラベルの花の形をしているんだね」
小瓶を自分の目の高さまで持ち上げたお兄様が感心した様に言った。
『ただの丸い粒では私のチートが泣く……!』
なんて理由で、欲望のまま勢いでラベルの形にしてみました。テヘッ。
私のチートさんはいつも優秀で助かっております。
(いえいえ、どういたしまして)
あれあれ?今チートさんの声が……
「コレ食べても良い?」
「あ、それはロッテ用なので、お兄様にはこちらを……」
私はまた異空間収納バックの中をゴソゴソと探る。
そうして取り出したのは、先に取り出したのよりも少しだけ大きい三つの小瓶だ。
お兄様か誰かが『食べたい』と言うのは想定内なので、きちんと別に用意してあるのだ。
「三つ?」
「はい。いつものことですが……ラベルの他にシーラ、スーリー味の飴ですよ」
ラベルが薄紫色。シーラが乳白色。スーリーが薄ピンク色。
これもそれぞれの花の形に施してある。
「これを………………みんなで食べていて下さい」
複数の視線を感じた私は一瞬だけ固まってしまった。
怖いよ!みんな!!
「仲良く分けて下さいね……」
飴はお兄様に任せて、私はロッテに向き合った。
「ご主人様……他の味の飴も食べたいです」
「ロッテのもあるから安心して。お仕事が終わったらあげるから頑張って?」
「はーい!!」
さっきよりも更に元気にロッテが手を挙げると、ニコニコしながらそのまま一升瓶に貼り付いた。
……そうやってするんだ。
色々と突っ込みたい気持ちが湧いてくるが……ここは我慢だ。
ロッテは頑張ってくれているのだから、私が口を出す事ではない。
チラッとお兄様達の方を見ると、そちらは賑やかにみんなで飴を食べていた。
やっぱり私が作った物をみんなが嬉しそうに食べてくれるのが大好きだ。
何やらお兄様とリカルド様が販売の話を始めているのが聞こえてくる。
この世界で砂糖は贅沢品ではないし、氷砂糖は見た事あるけど……そういえば飴は無かったかも?
売るのであれば、アヴィ領とアーカー領の限定品に……おっと、珍しくチョコ派のクリス様が王都にも欲しいと言っている。
「チョコ味の飴もあったっけ……」
ボソッと私が呟くと、お兄様達が一斉に振り返った。
「「「そんなのも作れるの?!」」」
「はい。他にもクリームソーダ味とか……」
「「「作って!!」」」
「今は無理なので帰ったら……」
「「「絶対にだよ(だぞ)!?」」」
「は、はい……分かりました」
私の返事を聞くや否や……またお兄様達はお仕事モード(?)に戻った。
食い気味に……鬼気迫る感じはちょっと怖かった……。
和やかに味わっている彼方や金糸雀、サイ、セイレーヌとは違いすぎる。
彼方達みたいに和やかに食べていて欲しいよ。ホントに……。
私は深い溜息を吐いた。
そして、私は寝台の上で眠り続ける神アーロンを見た。
和泉の世界とこの世界を作った……人好きな神様。
私や彼方はこの人の事情に巻き込まれて今に至る訳だ。
沢山の文句を言って、殴ってやりたい。
……そう思った事もあった。
今は早く力を取り戻して目覚めて欲しいと思う。
一番はセイレーヌの為に。
二番目は……私はこの人と話をしてみたい。
今までの事やこれからの事を含めた未来の話も……。
「シャルロッテ……?」
いつの間にか側に来ていたセイレーヌが私の肩に触れた。
「みんなで一緒に笑顔で美味しいもの食べようね」
私はセイレーヌの手に触れながら微笑んだ。
「出来ましたー!!」
今までとっておきの純米酒入りの一升瓶に貼り付いていたロッテが声を上げた。
「ロッテ、お疲れ様ー!」
私はロッテを撫でた後に、約束の飴を口の中に入れてあげた。
「ありがとうごじゃいまひゅ……!」
また頬を押さえながらロッテが口をモゴモゴと動かしている。
思っていたよりも早かったな。
コレが酒精の加護が入ったお酒か……。
一升瓶の蓋を開けた私は、それを恐る恐るグラスに
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