やっぱり不穏な流れ…?

ロッテ①とお米からのお酒作りの実験中に、突然のロッテ②の登場。

そこからのロッテ②の下克上に、ロッテ①の闇落ちとロッテ②の爆死…………。


本当に夢で良かった……。

夢オチありがとう。

あんな終わりは絶対に嫌だ。


ただ、残念な事と言えば……

夢の中でだが、甘酒まで作れた事とロッテ②がお酒を作れると言っていた事だろうか。


いや、夢で良かったと思ってるよ?!

ても、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ惜しいなと思った私は、試しにロッテ②に尋ねてみた。


「ロッテ②ー、お酒なんて作れないよね?」

「作レマスヨ?」

「そうだよね。やっぱり無理だよね……」


あれ……?

……ちょっと待って。

「ロッテ②……今、何て答えた?」

私の聞き間違いじゃなければ『作れる』と聞こえた気がしたんだけど……


『作レマスヨ?オ酒』

「え……?本当に?!」

『ハイ』

「夢じゃなかったの?」

『夢??何デスカソレハ』

「あ……ああ、ごめん。こっちの話」


なんて事だ!!


夢だけどー、夢じゃなかったー!


「じゃあ!早速作りたいんだけど、良いかな?!」

『……ハイ』

「ロッテ②?」

何か……いつものロッテじゃないみたいだ。

いつものロッテは明るくて元気で……。


『……何デモアリマセン。造るならオ姉様のイル厨房に行キマショウ』


私……ロッテ②に何かした?

それに『オ姉様』?

それってロッテ①の事……?

今までそんな風に呼んだ事なんてないはずなのに……。


「ロッテ②何かあったんじゃないの?」

『イエ。何モアリマセンヨ……』


……やっぱり、おかしい。

何とも言えないよそよそしさを感じる。

ずっと目を逸らされている感じだ。


何度もしつこく質問してみたが……ロッテ②は教えてくれなかった。


そうして腑に落ちないながらも、私はロッテを持って厨房へ向かった。


****


『ゴ主人様、オ待チシテオリマシタ!』

私達を出迎えたのは、ロッテ②とは対照的に明るいロッテ①だった。


「う、うん。私達が向かっているの知ってたの?」

『ハイ。勿論デス。妹二聞キマシタカラ』


妹……。

今度はロッテ①から『妹』というキーワードが出た。


「ねえ……ロッテ達。あなた達って今までそんな呼び方してた?」

『イイエ。最近デスヨ』

「最近?……もしかして何かあったの?」

『別二……アア、私達仲良シニナッタンデスヨ。ネエ?妹』

『……ウ、ウン。ソウダヨ。オ姉様』


何だこの微妙なよそよそしさは……。


「何かあるんだったら……」

『イエ。心配ニハ及ビマセン』

食い気味にロッテ①が答えた。

「……ロッテ②も大丈夫?」

『ダ、大丈夫デス……』


うーん……怪しい。

だけど、これ以上追求しても無理な気がする。

既にしつこい位に質問をしてしまっているし……。

だから少し気にかけておこう。うん。

ロッテ②の爆発なんて事態がリアルで起こったりしない様に……。


「じゃあ、お酒造っちゃおう!!」

『『オー!!』』

「……って、気合いを入れたのは良いけど……これからどうするの?」


ロッテ達に尋ねると、今後の流れをロッテ①が説明をしてくれた。


先ずはロッテ①でお米を炊き、炊いたご飯と水を一緒にロッテ②でチンする。

そうすれば、純米酒の完成らしい。

……マジですか。チートだな。

簡単な方が私は嬉しいけどさ。


「でも、どうして作業をロッテ①とロッテ➁で分けるの?どちらかで全工程

もしくは……それぞれが作れたりしないの?」

私は素朴な疑問をぶつけてみた。


『二台デ作ッタ方ガ美味シイノガ出来マス!』

ロッテ①が断言した。


「どうして?」

『妹ノ方ガ、ゴ主人様ノ好ミヲ把握シテイマスシ?ネエ……妹?』

『イ、イエ!オ姉様ノ方ガハイスペックデスカラ!』


……とまあ、何とも歯切れの悪い感じでお酒造りは進み……。

どうなるか不安だったが……。



無・事・に・完成しました!!


ロッテ達の中に入れて作る為に、大容量とまでいかないがワンカップ十本位なら一気に作れる。

今後の課題は大量生産の確立になるだろう。


私は出来たばかりの純米酒入りの瓶を手に取った。


この澄んだ透明感と日本酒独特な香り……。

出来ちゃった。ロッテ達のお陰で作れちゃった!


「ありがとうー!!!」

私はロッテ達をまとめて抱き締めた。


『キャア!』

『ワーイ!』

抱き締められたロッテ達は嬉しそうな声をあげている。

私はロッテ達に改めてたくさんの感謝の言葉を言ったのであった。



***


……と、いう事で試飲会です。

新しいお酒を作ったのだから先ずはみんなで試食をしないとね!!


因みに本日の肴は……

『焼きホッケ(ホキ)』、『焼き鳥』、『イカ(ツツ)焼き』、『山菜の天ぷら』、『アサリ(カラカラ)の酒蒸し』です!


日本酒に合いそうな物を肴として用意してみました!!

ヒャッフー!

これらも全てサイラスの好意でライス島で手に入れました!


もう私……ライス島に永住したい。

どうしてこんなに揃っているの……!!



と、まあ前置きはここまでにして……早く味わおうではないか!


メンバーはお兄様とサイ、金糸雀カナリア、クラウンです。



「かんぱーい!」

私の合図で各々がお猪口を傾ける。

実は……このお猪口はミラと一緒に作った魔道具だ。

魔力を流せば冷やから熱燗へと、瞬時に温度の変更が可能な素晴らしい魔道具だ!!

取り敢えず私は常温のまま飲んでみた。


ん……!お米そのものを感じさせる奥深く甘い香りと、旨味の強い味わい……。

これは肴が進んじゃうね!

日本酒が苦手な私でもコレならグイグイといけてしまいそうだ。


涼しい顔でお猪口を傾けるお兄様の姿はまるで、日本に遊びに来た外国の人の様だ。(おい!語彙力!!そのまんまじゃないか)

「へえ……面白い味だね」

そう言いながら魔力を流し、早速色々な温度でお酒を楽しんでいる。

お猪口を持っても絵になるとは……流石はイケメン……。


因みに、黒猫のサイは器用に前足二本でお猪口を持って飲んでいるし、黄色の小鳥の金糸雀はくちばしを器用に使ってテーブルに置かれたお猪口から飲んでいる。クラウンは少年の姿で飲んでいる。


「主よ!私はコレが好きだぞ!!」

トロンとした瞳で上機嫌に笑うサイ。


「奥深い味ねえ」 

金糸雀は頬を染めながら笑っている。


クラウンは……

「グスッ……グスン」

泣いている!?

どうした!?まだ何もしていないぞ!?


「どうしたの……?」

「いや……美味しくて」

美味しいと泣くんかい!!

ツッコミそうになったが……コレ系のお酒はアルコール度数が高いのだ。

だから多分クラウンは酔っているのだと思う。

お猪口一杯分で。


「あらあら。あんたお酒弱かったのねえ」

カラカラと金糸雀が笑う。

「金糸雀も知らなかったの?」

「まあね。姉弟で飲んでもねぇ……」


そう……なのかな?私はお兄様と飲むの嫌いじゃないけどね?

和泉もたまーに弟と会ってお酒を飲んだりしていたからなあ。


「ふふっ。まだまだお子ちゃまね?」

「お子ちゃま!?」

「お酒は男と一緒の時に……」

「ストップ。シャルロッテに余計な事を吹き込まないでくれるかな?」

「あらあら。過保護な坊やね。ふふっ」

「何とでも。シャルはこのままが良いんだから」


……金糸雀とお兄様が何やらバチバチと火花を散らし始めた。

あー……どうしょう。コレ。


チラッとサイを見るとサイは両手でお猪口を抱えたまま涙を流していた。

「サイ!?」

「父子で杯を交わせる日が来るとは……」


……クラウンの泣き上戸はここからの遺伝だ。

私はそう悟った。


「父上ー!!」

「おー!!息子よ!!」

今度は二人で抱き合いながら泣き始めた。


「無駄に何年も長生きしているから頭が固いんじゃないの?」

「はあ?どういう意味よ?」

「そのままだけど?」

「相変わらず可愛くないガキね……」

こっちはこっちでギラギラとケンカを始めた。


……どうしてこうなった。

私はみんなでお酒を楽しみたかっただけなのに……。


「もー!!折角の肴とお酒が勿体ないでしょ!?」

大きな声で叫んでみるが……。


「父はお前とこうして分かり合えた事が何よりも……ううっ」

「グスッ……父上……」


「ハッキリ言って欲しいの?お・ば・さ・ん?」

「誰がおばさんよ!!殺すわよ!?」


誰も聞いちゃいない……。


いつもはもっと和やかなんだけどなあ……。

お酒の中に何か入ってた……?

いやいやいや、そんな事はないはずだ。

ただの美味しいお酒なはずなのだ。


でも……ロッテ達の微妙な態度が影響に出ていてもおかしくはない気がする。

だってロッテ達はチートだもの……。


私は取り敢えず、ロッテ達の関係修復に全力を注ぐ事を……心に誓ったのだった。

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