お酒のために乙女ゲー設定をぶち壊した結果、悪役令嬢がチート令嬢になりました

馬鹿と天才は…③

どうもー。シャルロッテです。

現在、私は現実逃避の真っ最中でーす。

「シャルロッテから離れて。」

「お兄さん！」

「…僕は君の兄ではないよ。」

私から無理矢理にミラを引き剥がしたお兄様は、私を背中に庇いながら、ミラとの攻防をしてたりする。

「君にシャルロッテの何が分かるの？」

「僕はこの半月程、シャルロッテ様をずっと見ていました。」

ストーカー的な発言来たー！

半月前から見られてただと？！

思わず、現実世界に戻って来てしまったじゃないか…。

「シャルロッテ様が炎の魔術を使えば、高圧な炎の柱が上がり、氷系の魔術を使えば、一瞬にして全てが凍る死の世界！！」

それって…ダンジョンの話？

まさか…着いて来てたの？！

「昨日は、歌いながら浮いてましたよね？」

ギクリ。

「シャル…何してるの？」

お兄様が振り替える。

「あはは。えーと、それはですね？」

今日のダンジョン調査が終われば『リカルド様に会える！！』って、天にも昇る気持ちになって…。

いつの間にか浮いてたんだもん！

気付いた時は焦った、焦った。

「あはははは。」

笑って誤魔化す。

「他にも…」

待てーい！！

ほ、他って…アレとか…ソレとか？！

「ミ、ミラ様？」

口封じしたいのにお兄様が邪魔していて出来ない。

「後でゆっくりお話（説教）しようか。」

お兄様が楽しそうに笑う。

ミラー！！

「どんな魔術を使っても疲れた様子を見せない、貴女に興味があります！是非、僕の実験協力者（モルモット）に！！」

だから、実験協力者（モルモット）って言うな！！

この馬鹿嫌だ…。

これで天才って…神様、おかしいよ！

お兄様は、ガックリと項垂れた私を見てから、ミラへ向き直った。

「シャルロッテの魔術に関しては、秘密事項なんだよね。それも国家レベルの。実際に知っているのは主要メンバーなんだ。」

はい？

いつの間にそんな話に？？

て言うか、ハワードもそれに入るの？

ああ、でも奴は騎士団長の息子だしな…。

「だから、伯爵家の次男でしかない君が知ってるのは非常にまずい。この意味は分かる？」

あれ？何だか空気が冷えてない…？

顔を上げてお兄様達を見る。

無表情のお兄様と、顔を強張らせているミラ。

「口外したら消す事も厭わないけど…どうする？」

脅してる！

誰かに言ったら殺すって言ってる！！

青冷めているミラはギュッと唇を噛み締めている。

お兄様怖いよね…。分かるよ。

気を抜くと涙が出そうな空気だ。

なのに…

「僕を助けてくれるなら、口外しません。」

ミラはお兄様を見て、はっきりと言った。

ミラ偉い！頑張った！！

心の中でミラを称賛しながら、成り行きを見守る。

「ふーん。ここでそう来るか。」

お兄様は面白そうな物を見つけた時の様に瞳を輝かせた。ミラに興味を持った様だ。

「君に先行投資をしよう。」

ニコリと笑う。

「ルーカス様！！」

「但し条件がある。」

「はい！」

「シャルロッテの嫌がる事はしない事。」

「…それだけですか？」

首を傾げるミラ。

「シャルロッテを泣かせたら消すからね？」

魔王様（ルーカス）降臨！！

ミラはコクコクと何度も大きく頷いた。

「それなら良いよ。助けてあげる。シャルロッテも良いよね？」

「…はい。お兄様（魔王）に従います…。」

ジーっと物言いたげなお兄様の視線を感じるが…無視だ！！

どうせ後からお話（説教）があるんだもん(涙)

「じゃあ、今日からミラ…には、邸に住んでもらうからね。」

「…っ！ありがとうございます！」

頭を下げるミラに、不適な笑みを浮かべるお兄様。

こうして、アヴィ家にもう一人の玩具（ミラ）(お兄様専用)が滞在する事が決まったのだった。

ミラ頑張れ！！

後からお兄様に聞いた話だけど…

ミラの立場は私が思っていたよりも深刻だった。

ボランジェール邸が半壊した日。

ミラの暗殺が実行される予定だったそうだ。

邸を半壊させる程の爆発。それにミラは不慮の事故として巻き込まれ、命を落とす予定だった。万全の体制で実験をしていたミラは巻き込まれる事も無く無傷だった。

邸を壊したから、追い出されると思っているミラは真実を知らないらしい。

聡いミラだから全部分かってると私は思うけどね…。

…どうして自分の子供を…家族を…殺せるのか。

ボランジェールが【アルビノ】を長年排除して来た家だからだ。たったそれだけの理由。

【アルビノ】を穢れた血と勝手に決めつけ、

中身を見ようとはせず、ミラまで排除しようとした。

そんな歪んだ家なら滅びてしまえ。

ミラに出会いたくなかった私だけど、今は出会えて良かったと心から思う。

関わりたくないだけで、死んで欲しいなんて願わないもん。

失敗した暗殺は成功されるまで実行される。

若き天才であるミラの危機に気付いた、お父様を始めとした国の中心の大人達は、ミラを救おうと画策していたらしいが、ミラ本人が私達兄弟を選んだのを知り、警護を付けた状態で静かに見守る事にした。

このままミラは、国の命令の元に【ボランジェール家】とは絶縁される。

言うなれば、『お前達のした事は全て知っている。手を出したら国が相手になるぞ？』の脅しだ。

本人が望むなら何処かの家に養子に入る事も可能だ。

アヴィ家もその候補である。

次代の当主になるお兄様に、その見極めをさせる為に…と、お父様はダンジョン調査に入り、不在とした。

一応、理由があったんだね…。

フラグ立ててごめんなさい。お父様。

どうか、ご無事で…？

お兄様的には、私に害があるかどうかだけを見極めたかったらしいけど。

お兄様！大好き！！

近々、アヴィ家の裏山に研究所兼、居住施設を立てるそうだ。

ミラだけでなく、他の研究者も入れてダンジョン研究も一緒にするらしい。

これはお兄様の発案だ。

私のお兄様最高！！愛してる！

これでスタンピードが起こる可能性がまた一つ減る理由になるかもしれない。

歴史は変えられる。

私は自分の行動が無駄にならない様に動き続けるのだ。