馬鹿と天才は…①

今日はダンジョンの調査日


なのに、私とお兄様はアヴィ家でお留守番だ。



因みに、私とお兄様以外のメンバーは調査に向かっている。


では何故、私とお兄様が調査団から離れたか…。


二日前に街で起こったある事が原因だった。


あの日。

私はボランジェール伯爵家の次男である【ミラ・ボランジェール】と街中で偶然ぶつかってしまった。


ミラはフードで姿形を隠していたし、私達は簡素な格好をしていたので、私達の立場には気付かないと思ったのだけど…。


『公爵令嬢であるシャルロッテ様に非礼をしてしまった事を謝罪したい』と、ボランジェール家から正式な申し出があったのだ。



…ミラはどうして私の事に気付いたか。


それはお兄様のせいだと思う。

簡素な服では隠し切れ無かったお兄様の美貌が悪いのだ!!


と、本気でそう思った事は置いといて…。



私のお兄様は有名らしいからね。

まあ、王家の次の地位であるアヴィ家の嫡男だし、この顔だからね?


現在、嫁入りしたい相手No.2だ。

勿論、No.1はクリス様ね。


私はそうは思わないけどね!!!!



と、まあ、特別な変装をした訳でもないから、分かる人には分かるのだ。



ボランジェール家のミラが謝罪に来ると言うのに、アヴィ家の家長である、お父様は既にダンジョンに潜ってしまっている。


『当事者でありであるシャルロッテ(私)と、目撃者+未来のアヴィ家当主である、ルーカスが居れば問題無いだろう』と言うお父様の言い分のせいだ。


…娘よりダンジョンを選びましたね?

良いけどね。別に。


それよりも、あの大人達だけでダンジョン調査に行った事の方が心配だ。


腕が良いし、力があるのは確かだけど、引き際の見極めが甘い。

魔石集めに集中し過ぎて大変な事にならなければ良いが…。

と、フラグを立ててみる。


ふふふっ。

大人なんだから、責任は自分達で取りなさいね?



まあ、もしかしたら…現当主自らが対応するよりも、子供達同士で穏便に済ませなさいと言う事なのかもしれない。貴族社会は階級社会だからね。


多分。……多分ね。



あの時の事なんて、気付かなかった事にすれば良かったのに…。寧ろ、全力でそうして欲しかった。


何でだぁぁぁぁ。



私はコテンと倒れ、隣に座っていたお兄様の膝の上に頭を乗せた。


ふふふー。お兄様の膝枕だ。


「シャルロッテ様?」

即座に侍女であるマリアンナの突っ込みが入る。


「ごめんなさい…。」

ドレスのシワを伸ばしてから、お行儀良く座り直す。

望まぬとはいえ、お客さんが来るのにシワシワなドレスはNGだよね。


現在、私とお兄様は応接間にて、ミラが訪ねて来るのを待っている所だ。


お兄様は一人で涼しい顔をして紅茶を飲んでいる。



はあー。

深い溜息を吐くと、お兄様が頭を撫でてくれた。

お兄様の肩にコテンと頭を乗せる。


これはマリアンナ的には大丈夫な様だ。




だってさ!正直、ゲームでミラを知っていなかったら気付かなかったと思うんだ。

『アルビノなんて珍しい子だな』で、終わりだ。


なのに、何故謝罪に来る?


お兄様だって、私の事が無ければボランジェールの次男だと気付いてなかったかもしれないと言うのに!




今からでも…気付かなかった事にしてくれないかな…。


人見知りなら、悪役顔の私には近付かないでおこうよー。

それがお互いの為だってー!



って、…あれ?

どうして人見知りのミラが、謝罪とはいえ、私達の前に…出てくるの?


ミラは自分の容姿を嫌っているから、正式な謝罪として身を隠す事の出来ない状況に参加する筈が無いのだ。


そんなに私にぶつかった事を謝罪したいと言うの?

どうして…?


そもそも私達の出会いは偶然だっのだろうか?



もしかして、跡をつけていた…り?


それなら…彼が自分の領地でも無い、あの場所に居た理由にはなる。



ても、そうまでして、アヴィ家に近付きたい理由があったの……?



私と目が合った後に逃げたのは、人見知りじゃなくて、疚しい所があったから?




…まさかね。


だって、研究馬鹿で発明の天才のミラだよ?!

人見知りの彼が夢中になる様な何かが、アヴィ家に有る訳が…………





って、在るじゃないか!!!


私は頭を抱えたくなった。


私にはミラの行動理由が分かってしまったのだ。



ミラはが欲しいのだ。





現在、ダンジョン内で集めた魔石は、ギルドとアヴィ家で保管している。


魔道具の研究の為にミラがそれを欲していたら…?



全てが一致するのだ。



流石は…ミラ。

馬鹿なのか天才なのか…。




今日のミラの来訪は、嫌な予感しかしない。


はぁ…会いたくない。



何度目かの溜息を吐いた所で、ミラの来訪を告げられた。

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