君のわたあめ

つきがせ

第1話 変わり者

 春風は君の髪を撫でる。僕は本を読む君に見惚れる。その中でもページをめくるたびに髪を耳にかける仕草がたまらない。

 僕は変態なのかも知れない。でも、僕は変態であろうと好きだ。告白する予定は無い。

 告白する勇気もない。どこまでも意気地なしだ。

 欠伸をしながら時間割を見て君はこう言う。


「次の時間、国語か。」


 一人で君はよくボヤくことが多い。独り言が多いと言うのもその一つだろうと思う。


 君は目立つ人気者ではなく、控えめで目立たない存在だった。でも、何も言わずにペンを拾ったり、手が一杯の友達が扉を開けれず困っている時、さっと手を差し伸べてあげれる。手を差し伸べてあげれる事が出来るのは同じ経験をしているからだろう。

 何気ない行動は、このクラスに役立っている存在でもあると僕は思う。君は当たり前だとかっこよく言っていたけど...。


「あっ、そうだ!」

 閃いた顔はいつもの細くて優しい目ではなく、パッチリとした輝く瞳で僕をじっと見つめてきた。


「どうかしたの?」


 変わり者だと自分で言っていた君はとても変わり者だ。唐突にひらめくのだから…。僕は驚きながらも返事を返す。


「織姫と彦星って、年に一度だけ会う。名前って覚えてるのかな?私なら忘れそうだよ。

 愛していたら別の話かな」

自問自答を繰り返し、一人で解決するようなお喋りは、少し僕に話しているのか不安になったりするのだが、君には関係ない話だ。

僕は考えているフリをして君の横顔を見惚れた。

 ペンで自分のほっぺたをつついて考えている君は首を傾げて窓のずっと遠くの空を見つめた。

飛行機雲はくっきりとして空に浮かべて飛んで行ったみたいだ。


「忘れそうだね。でも、急に七夕の話?」


「天の川を見たことがなくって…。天の川の事考えてたら七夕が重なっただけなんだ」


はにかんで笑う君は僕が好む最高な彼女だ。

そんな事を思うとニヤけるのか、想像も出来すぎだ。


彼女のお喋りは最高に面白い、人を笑わせるのが上手だ。でも、その話を好むのは変わり者だけみたいだ。女子達はキャピキャピしていて、それが「普通」の女子。

ついていけないと言わんばかりの素振りを見せる君。君の話は夢みたいで、物語のように引き込まれてしまう。


お喋りが上手なところも好きなところかな。




晴天の夜空を見上げているふたりぼっちを僕は思い浮かべ、恋に落ちる音を心に抱いていた。



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