12.[8月11日]

突然、今まで暑い空気を冷気にしてくれていた扇風機が止まった…。

あつい…。目茶苦茶あつい。

古い扇風機だから、というものの、帰って着て二週間目で止まるとは…。

おばあちゃん達から借用するのは罪悪感がある。

僕「そうだ、賢先輩の家がある」

・・・・・・

正則君の家を通り過ぎ、そこから道なり。

直角の道を曲がった時に見えてくる看板。

そこは――…。

『田代便利屋』

賢先輩の家は一階が店二階が居住スペースとなっている。ごく普通のパターンなのだが、少しでも居住スペースを広くしようと二階部分が少しせり出している形。柱は中央に一本。その棒を、「こわれる~」ってやるとポキッと折れて崩れてしまいそう。

ガラガラガラ…

店のほうの引戸を開く。

賢「いらっしゃ…、って賢じゃねえか」

僕「こんにちは~」

軽く挨拶。

賢「昨日はごめんな。すっかり海の事忘れちまってよ。なにせ…おっといけねぇ。注文は?」

なにせ…?あっさり先輩はスルーしていたけれど、なにせ…って何があったんだろう。

僕「ええと、扇風機なんですけれど、修理おねがいします」

賢「おう!いいぜ。現品は?」

あ…。すっかり忘れてた。

僕「…んーーーと、忘れてました」

賢「…は?」

僕「今回は大丈夫です。川に行って涼みます」

そうしよう。

賢「ま、いいけどよ。次からは持って来いよ」

はーいと返事をして出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る