第17話 素っ裸の女の子
「な、なななな! 何で服を着ていないんだよ!?」
「うぅ……うえぐっ、ぐすっ、うええええええ! もう最悪ですうう! うわあああああ!」
俺は思わず目を背けて目を瞑り、素っ裸の女の子を指差しながら叫んだ。女の子は子供のように泣きじゃくりその場に座り込んでしまう。洞窟の暗がりの奥からはこの女の子の足音よりもずっと重く、それでいて複数の足音が響いている。まさか……この子、オルクスから追われているのか!?
「もう良いです! 覚悟は出来ているです! 犯すなり慰み者にするなり好きにするが良いですよ!」
「あんた気は確かか!?」
「確かだから言っているですよ! どうせ滅茶苦茶に犯して捨てる気でしょ!」
「初対面の人間に対してなんて事言っているんだよ!」
「うわああああん! こんなところで死ぬのは嫌です! 嫌だ嫌だ!」
全てを諦めて開き直ったのか女の子はその場に寝転がり大の字になって叫んでいる。かと思えば手足をバタバタさせて駄々をこねる子供のように泣き叫んでいた。この子の中では俺を強姦魔か何かと勘違いしているみたいだ。
「あんたちょっと落ち着け! と言うか頭冷やせ!」
そう口論している間にも女の子を追ってきたオルクス達はその姿が伺えるまでに近付いて来ていた。コルトから聞いていた通りの外見で、手造りの木製の防具を身に付けているようだ。中にはこのオルクスの親玉なのか金属製の防具を身に付けているオルクスもいるが、武器は共通して木製の棍棒を持っている。体長は2メートルを超えており、ヴェルガさんよりも体つきは良く筋肉質で、そのためか手に持っている棍棒も丸太を削ったものをそのまま武器にしていると思えるほどに巨大だ。あんなので殴られたら一溜りもないぞ。
「ぎゃああああああ! もう追い付いてきたです! ボクは一体どうなるんですか!? 人間の男とオルクスに散々に犯され尽くされるんですか!?」
「俺は何もしねえよ! それより、逃げるぞ!」
寝転がっている女の子の手を掴み無理やり体を引っ張り起こして出口へと引き返す。オルクス達はそんな俺達を見て再び追いかけてきた。体が大きく、胴に対して足が短いようで走るスピードは遅いが油断は禁物だ。一発でもあの棍棒の攻撃を受けるわけにはいかない。
「コルト、コルト聞いているか!? オルクス達を引き連れている。準備していてくれ」
横で常に俺の姿を追跡している球体に声を掛けるが通信しているコルトからの返事がない。けれど、球体から僅かに人の声が混じって聞こえてくるからミュートにしているわけじゃないようだ。じゃあ、何で返事がないんだ? まさか……またハメられた!?
「……ん?」
騙されたか、と思った瞬間、人の息遣いのような音が人々の声よりも近くで聞こえて俺は耳を澄ませて音を確認する。それはコルトの声と息遣いのようで、すうすうと静かな息遣いが聞こえた。
「って……寝てるじゃねえか!」
「寝てるですね」
こっちが必至こいて魔物を引き連れているというのにコルトは呑気に高みの見物をしながらお昼寝かよ!? 事情を察したのか女の子は俺を可哀想なものでも見るような目で俺を見つめている。そんな目で見ないで! 余計に悲しくなる……。
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