生きる屍だった僕は、最後の活路をVRMMOに求めた -三重苦青年の奮闘記-
はにゃ助
プロローグ 僕が「ファンタジー系RPG VRMMO」を選んだ理由
僕は「天魔(てんま)」。 病院の関係者から『生きる屍』『負の遺産』『ミスター情緒不安定』『歩く税金の無駄』と陰口を叩かれる18歳の男の子さ。
(『税金の無駄』については、「最低限生活保障制度(通称ベーシックインカム)」から医療費や生活費を払ってるんだ。 生きる権利のうちのいくつかを犠牲にしてるんだから「異議あり!」なんだけどね)
冷凍睡眠から目覚めると、そこは180年後の世界で、「あなたの家族・親戚・知人、頼れる人は一切いません。 蘇生には成功しましたが、過去の知識・記憶の9割と神経系の一部が消滅し、一般生活にも苦労する状況です。 リハビリをすれば運動面については、問題ないレベルに回復すると思いますので、我々病院スタッフも助力はします。 が、基本的には独りで頑張って生きてください。 我々も暇じゃないので」といわれて、「わかりました! 清く正しく周りに迷惑をかけないよう生活して、リハビリも頑張ります! 幼児から目覚めた当初の15歳までの知識と、これから生きていくのに必要な勉強も独りで頑張ります! 神様、生かしてくれて、ありがとう!」 ってなるかい?
「お父さん・お母さん、なぜ僕を未来の世界に送り出したの?」とホームシックになっても、二人の顔が思い出せなくて悶々とし、睡眠不足による不眠症を併発する。
「こんな生活やってられるか!」と壁に八つ当たりのケリを入れると、なぜか隣のクローゼットを、脳のリミッターを突破した威力で蹴っ飛ばし、ドアと自分の足を粉々にする。 (骨じゃないよ。 文字どおり、足さ)
尿意を催したので、女性職員に「チッチをしたいので、おまるはどこにありますか?」と聞いて、爆笑される。(トイレに関する記憶は3歳児のものしか持ってなかったのさ)
僕の生活って、一事が万事、こんな感じなんだよ?
僕の性格は、どんどんひねまがり、やさぐれていき、職員との壁は厚くなるばかり。 そして、立派な引きこもりの誕生さ。
この世界のゲームといえば、VRMMOを指し、ファンタジー系RPGゲームの記憶があったけど、VRMMOっていうのは、知らなくてね。 どんどん惹かれていった僕は、目覚めてからの3年間、入りびたりの生活を送っていたんだ。
完全な引きこもりじゃないのかって? コンピューターやロボット、AIの発展したこの世界では、人が外出すること自体がまれみたいで、だから、僕は人と関わらないために、気晴らしによく外出していたんだよ。
普通の人のようにまっすぐ歩くことも、普通の速さで歩くこともできなかったので、超近場限定だけどね。 病院と道を挟んだファーストフード店は、僕のお気に入り。
そこで、とある人と出会い、とある力を授かった僕は、新たな人生を歩む決心をしたのさ。その出来事については、またいつかね。
その第一歩として、友達を作ることにしたんだけど、いかんせん、僕には記憶がない。 そこで、入りびたりの世界 ファンタジー系RPGのVRMMOの世界に白羽の矢を立てた。
僕の授かった力が、この世界でも通用するからなんだ。
*****
『運命の神様の住むサイコロ』
「ロール ア ダイス」の合言葉を唱えることで、金銭のかかわらない事象に限り、確率を操ることができる魔法のアイテム。 お金がかかわるとダメらしい。
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僕は、最強クラスの必殺技や魔法を連発したり、その世界に存在しない知識や物を持ち込んだりはできない。 それどころか、ほかのプレイヤーができることしかできない。 でも、超強運を条件限定で発動できる。
ファンタジー系RPGのVRMMOをやった事がある人なら知ってると思うけど、「装備ガチャ」というものが大体のゲームで存在するんだ。 このシステムは、苦労することなく「ゲーム内高品質の装備」を規定数、手に入れることができるんだけど、より高品質なものは排出率が低くなるように設定されている。
分かったかな? 僕のやろうとしていること。 そう! この装備ガチャで最高品質の装備を出しまくるんだ。
最高品質の装備を全身にまとい、同期からは羨望のまなざしを浴び、先輩たちからは一目置かれた存在の僕! 補助職を選べば、先輩に守られながら、高難易度のクエストにも参加できる。 後ろで、先輩アタッカーさんの攻撃力を上げたり、敵の防御力を下げたりするだけなら、僕自身が高レベルである必要はないからね。
どうだい、なんとかなりそうな気がしてきただろ? 僕の成り上がり冒険者ライフ。 (ニヤリ)
そして、最終的には、友達をゲット! いける、いけるよ僕!!
そのためには、ゲーム選びが肝心だ。 決心から2週間、僕が悩みに悩んで選び抜いたのは、このゲームだった。
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『ドラゴン・ファンタジー・アドベンチャー(通称DFA)』
世界有数のVRMMOであり、非常に稀有な「国営VRMMO」の一つ。
かつて、ゲームがまだ家庭用ゲーム機と呼ばれ、テレビに別売りのゲーム機を接続、コントローラーなるもので遊んでいた時代から熱狂的ヒットを飛ばした伝説のゲームタイトルを一部、冠する。
その魔力はすさまじく日本国民の半分が当該ゲームのアカウントを所持しているというモンスターVRMMO。
『DFA』にできないことはない、を謳い文句にサービス開始から15年経過した今でも新規ユーザーは増え続けている。(ネットデータベースより一部抜粋)
*****
僕が『DFA』をターゲットに選んだ理由は、いくつかある。
一つ、アクティブユーザ数が多いこと (僕と友達になってくれる人が多い、かもしれない)
一つ、多国籍言語でのプレイを可能としており、システムによる同時通訳・翻訳対応を行っていること (語学力のない僕でも外国の人とコミュニケーションが取れる、はず)
一つ、国が運営を行っていること (ゲームに慣れたころに突然サービス終了ということがない、と思う)
一つ、電脳警察(ネットポリス)が常駐しており、ゲームマスターもプレイヤーとして存在していること (万が一、悪質なプレイヤーに遭遇した場合、助けてもらうことができる、といいな)
そして、最大の理由は……『課金が存在しない』ということ。 「確率の神様の住むサイコロ」の弱点、お金が絡む事象が装備ガチャに影響を与える可能性は、0!
なお、ほかのVRMMOと同様に『DFA』でも装備ガチャという『特別なゲーム内通貨を利用したレアアイテムの取得』が可能になっている。
(蛇足だけど、他人より良いもの・優れたものを所持したい!という人間の射幸心は、人が人として生きるためには必要な要素らしく、十数年前のなんとか学会で結論が出ている、らしい)
でも、『DFA』では課金が存在しない。ネットデータベースから抜粋したとおり、『DFA』は国営だ。運営は国の税金で行われているので、プレイヤーからお金を集める必要がないからだ。
では、『特別なゲーム内通貨を利用したレアアイテムの取得』はどうすれば可能なのか?
答えはゲーム内でプレイヤーが行う『行動』だ。
『カルマシステム』と呼ばれ、プレイヤーが良い行動をとれば『善行値』が、反対に悪い行動をとれば『悪行値』が加算される。
すべてのプレイヤーに、『善行値』『悪行値』のポイントに応じたゲーム内通貨が週一回、配布され、それを使って装備ガチャを回すことができるのである! (ネットデータベースの受け売り)
ということは、困っている僕がいる→『善行値』を貯めたいプレイヤーが僕を助けてくれる→助けてくれるほど良い人なら僕と友達になってくれる!
そう、僕の目的を達成するには、まさにうってつけのゲームなのである (ドーン!)
それじゃあ、前置きが長くなったけど、僕の冒険の話を始めることにしよう。
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