第30話

先日の鬼蜘蛛の件を伝えに、咲夜様と千姫様がある人物に会いに来ていた。

その人物は陰陽師の中では有名な、賀茂家の血を継いでいるらしい。

咲夜様は相談事があると、よく賀茂 忠兼(かもの ただかね)様に相談に来ていた。


「うむ、お前の言うことはわかった。妖魔が妖魔を喰って力をつけて行っているということだな。まるで、京の都が蟲毒の壺になっている、か・・・」

「どう思いますか忠兼様」

「近頃の騒ぎを聞いた限り、その可能性は捨てきれんな」

「それでは私たちはどうすればいいのでしょう」

「うむ。星読みの婆さんには私から伝えておくから、咲夜と千は最低5、6人選抜して組を作れ」

「わかりました」


はあ、俺にはよくわからないが大変なことになってきたみたいだ。

面倒くさいのは勘弁してほしいぜ。

まったく。


「・・・すけ・・・わよ・・・ただすけ!」

「は、はひっ!」

「しゃきっとしなさい。しゃきっと」

「す、すみません。それで、報告はおわったのですか」

「ええ。それで、とりあえず、さやかを呼んできてください」

「え~、さやか姉をですか?」

「そうです。何か問題でもあるのですか。蟲毒の妖魔退治にはさやかの力が必要なのです」

「しかたがありませんね。さやか姉を呼んで来ればいいんでしょ。それでは行ってきます」


忠助がさやかを呼びに行こうとしたとき、咲夜が呼び止めた。


「忠助、聞きたいことがあるんですが」

「えっ、もしかして、さやか姉はいらないとか?」

「ちがいます。私が聞きたいのは、忠助とさやかは仲が悪いのですか。いつも喧嘩していますし」

「う~ん、そんなことはないと思いますよ。それにあれは、喧嘩というより俺が一方的に怒られているだけですから」

「そうなのですか」

「そうなのです。それでは咲夜様、行ってまいります」


忠助がさやかを呼びに行ってから半時もしないうちに、さやかが走ってきた。

息一つ切らさずに。


「咲夜様、只今参りました。何用でございますか」

「走ってまでこなくともいいのに」


咲夜は辺りを見回した。


「忠助はどうしたのですか」

「はい、あれならどこかで、きっとへたばっています」

「そうですか。ならいいです。さやか、あなたは腕の立つ黒巫女を数人用意してもらえますか」

「それは、先日の妖魔が関係しているので?」

「はい、そうです。さやかには私の右腕として働いてもらいたいのですが、いいですか」

「はい!もちろんです。咲夜様とご一緒できるなんて光栄です」

「そこまで言ってもらえると、ちょっと恥ずかしいですけど、ありがとう」


咲夜とさやかの話が終わったころ、息を切らした忠助がやってきた。


「ぜえぜえぜえぜえ、んぐ、さやか姉、ぜえぜえんぐっ、俺を置いてくなんてひどい女だな」

「なんですって~」

「いや、じょうだんじょうだん。それで、話はまとまったの」

「ええ」

「それはよかった。これで、休みがもらえる」


忠助は、もう自分の役割は終わったと思い、休みの間何をして遊ぼうかと考えていた。


「なに言ってんの、あんた。あんたなんかに休みがあると思ってんの。あんた大体姫様のお世話係でしょうが。ねっ、ひめさま」

「そ、そうね。忠助は、一生私の世話をするのです。それが忠助のお仕事です」


なっ、俺には休みなんかいらないというのか。

それに、俺は一生咲夜様のお世話係だと。

馬鹿言うな!!


「わかりました。俺は一生咲夜様のお世話係です」

「は、はい、よろしく、ただすけ」

「あれ、今日は妙に素直ね。まあいいわ。がんばるのよ忠助」


うっさい、くそ姉貴が。

なんで俺が一生世話係なんだよ。

ボケがっ!


「ん?なんか言った、ただすけ」

「いえ、言ってません」

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