第17話
小夜のためにできた狐面討伐隊は、小夜に遭遇できずにいた。
今では妖魔封印出張隊とも陰口をたたかれていた。
「由紀姉。いつになった狐面討伐出来るんだろ」
うぐっ
痛いところを突かれた由紀は、一瞬言い淀んだ。
「そ、そんなにすぐに、あいつと会えるわけがないよ。それよりも、あいつのことは忘れて、今日は楽しもう」
「そうだね。他の人たちも、息抜きは必要だよね」
「それじゃ少し早いけど、浴衣に着替えたらいこうか」
二人は貸衣装の浴衣に着替えた。
妹の由美の浴衣は、水色の浴衣に金魚が泳いでいた。
「どう、かわいい?」
「うん、かわいいよ」
「えへへ」
「どう、わたしは?」
由紀の浴衣は、由紀らしいと言えばらしい、黒い浴衣に髑髏が描かれていた。
黒はアリだけど、髑髏はないでしょ、髑髏は。
なんちゅうセンスしてんだ、由紀姉。
この店もこの店だ。
趣味悪すぎ!
「どうした、由美?」
「ううん、なんでもない。いいんじゃないかな、それ。由紀姉らしいよ」
ほんとに黒巫女らしいよ。
黒巫女の誇りだよ、由紀姉は。
誇り過ぎて、涙が出てきそうだよ。
涙をこらえる由美と、髑髏浴衣がお気に入りの由紀は、屋台を回ることにした。
由紀に視線が集まるが、由紀はそんなことは気にしない。
「由紀姉、何が食べたい?」
「う~ん、由美に任せる」
「わかった」
由美は近くの屋台で、まずはたこ焼きを買ってきた。
もぐもぐもぐ。
二人はたこ焼きを食べ終わると、たこ焼きの感想を言い合う。
「タコが小さい」
「出汁がまずい」
すると由美は走り出し、そのまた先のたこ焼きを買ってきた。
「なんだこれ」
「タコがあったのかどうかもわからない」
そして、全てのたこ焼きの屋台から、たこ焼きを買ってしまった。
「げふ。全部不味いなんて、信じらんない」
「は、吐きそう」
二人が階段に腰かけていると、隊員の一人が声をかけてきた。
「隊長。浴衣お似合いです。もうすぐ花火始まりますよ。いきましょう」
隊員が手を引こうとするが、由紀は立ち上がろうとしない。
由紀は、手を口に当てながら言った。
「うぷ、わ、私はいいから」
「でも、なんか顔色悪いですよ」
「いいから行きなさい。いえ、行ってください」
「わ、わかりました」
たこ焼きを食べすぎた姉妹は、階段に横たわりながら花火を眺めた。
「く、くるしいよ~。で、でも、綺麗だね、由美」
「う、うん。ほんとに。たまや~。し、死ぬ~うぷ」
「かぎや~、なんちゃって。うぷ」
由紀と由美は力なく掛け声をかけるのだった
そのころ、討伐対象の小夜は、山の上から同じ花火を眺めていた。
「花火小っちゃい」
「文句を言うな、文句を」
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