第16話

「ほい。今日はここまで。3人ともごくろうさん」


美紀、早紀、幸の3人は、数馬のお手伝いをしておる。

今は丁度折り返し鍛錬じゃ。


「今日はもういいんですか?」

「ああ、あんまり根を詰めても悪いし、体も休めたいし明日は休みだ。手伝ってくれたお礼だ。明日は買い物でも食事でもそれでしてこい」

「いいんですか」

「ああ」

「やった~、明日は何食べようかな~」


美紀はもう使い道を決めているようだ。


「あんたには、食い気しかないの。まったく。それで、何を食べる気?」

「そんなの決まってる。回るすし行ってそれから喰い放題の餃子」

「美紀はほんとに、質より量の女ですね」

「だったら幸はどうなのよ」

「私はイタリアンがよかったですね」

「けっ、おまえがイタリアン。お前が気取っても似合わねえんだよ」

「なんですって~!」

「喧嘩すんじゃないの二人とも」


お姉さん役の早紀は、何かと大変じゃな。

こんな主じゃが、見捨てないでほしいのじゃ。

正宗が早紀に美紀のことを頼んでいた頃、小夜は村正に今日の夜出かけないかと誘われていた。


「いかない」

「なぜだ?」

「気持ち悪くなるから」


ああ、そうだった。

コイツは人混みが苦手だというのを忘れていた。

今日はこの北九州で花火大会がある。

小夜には息抜きがてら、花火でも見せてやろうと思ったのだが。

ほんとだぞ。

別に俺が見たいわけでは決してない。

とにかく、小夜を夜には外へ連れ出さねばな。

これは小夜のためだ。


「小夜、ほんとにお前は花火を見たくないのか」

「貸し切りなら見てやってもいい」


金もないのに、そんなことが出来るか。

だいたいそれでは花火大会とは言わんだろが。

う~ん、どうすればいい。

これならどうだ。


「小夜よ」

「なに」

「花火が見たくないというわけではないのだな」

「まあ」

「それでは、山に登るのはどうだ。山からなら、遠いが花火が見えるはずだぞ」

「きついからやだ」


こいつ、刀が絡んでないとほんとに何もしないな。

刀が絡むと、多少の無理はするくせに。

だがしかし俺は諦めはせん。

俺はほんとは花火が見たいのだ。

ん、たしかあの山には、いいものがあったはずだ。


「小夜よ、面白い乗り物があるのだが、乗ってみたくはないか?」

「おもしろい乗り物?」

「そうだ」


その日の夜、遠いところからではあるが、小夜と村正は花火見物をした。


「あれが花火。小さい」

「あたりまえだ。お前が人込みは嫌だと言うから、こんなところからしか見れないのだ」


村正は、小夜を山の上に連れてくることに成功した。

ケーブルカーという、文明の力を使って。


「小さい打ち上げ花火というのも、乙なもんだろ」

「・・・手持ち花火のほうがいい」

「お前には、風流というものがないのか」


小夜と村正が山から花火を見物していた頃、ある黒巫女たちも人込みの中で花火を見物していた。


「たまや~!」

「綺麗ね由美」

「うん、由紀姉」

「それにしても、あの狐面どこにいるんだか。今度会ったら、死ぬほどボコってやるのに」

「うん」


狐面の悪魔討伐隊であった。




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