ブラック・アベック #08

黒色スライムは、エキノコックスに飛び掛かると、素早く身体を包み込みおぞましくうごめき始めた。

かなり気持ち悪い。

「うああッやめろぉ!気持ち悪い!!

ウヒッイッヒヘ変な所触るなぁ

うあああぁアァアアァ」

ブラック・ロックが、ブラック・パレードの後ろに半身を隠す。

「なん、なんですかあれ

ギモ"イ"……ッ」

「あ━━━━………アイツはだな」

『そう、オレサマこそハ────』

喋った。

今、確かにスライムが人語を発した。

ロックとエキノコックスが目を剥く。

突然、スライムが迫り上がり、大雑把に人型を取った。

服や肌、頭髪がだんだんと浮かび始め、とうとうスライムは、完全に人の姿に変身した。

「ス━━━パ━━━━━ァバッッド!

ドク、タ━━━━━━………

───待てヨ

おい女!!

テメェ今オレサマの事"キモイ"ッつッたカ!?」

「いや名乗ってよ!?」

「Huh 面白みのないツッコミ」

「はーぁ!?ムカツク!」

ロックは溜息を吐いた。

呆れているのだ。

「この人絶対マトモな人じゃない」

床に倒れているエキノコックスが、ロックに顔を向ける。

「お嬢さん、こいつがレジーだよ

レジー・レッドマン」

「違ウ」

「───Dr.ローグって言わないと今みたいに不機嫌になる」

「違ウ!」

スライム男は、誇示するかのように両腕を広げた。

両目も、口も、限界まで開かれていた。

「オレサマの名はローグ改め

───『ラージローグ』!!」


一行は船内の廊下を進んでいた。

壁面や床は真っ白に塗装され、小綺麗とも無機質とも取れる雰囲気を醸し出していた。

ラージローグは、遊園地に来た子供のように楽しげだった。

毎日通っている筈の廊下にも関わらず、まるで始めて来たかのように、しきりに周囲を見渡しては鼻歌を歌っていた。

ブラック・パレードが口を開く。

「しかしまぁ、相変わらずいつ見ても、よな

この船は」

「だロ〜〜〜!?

コレが解ッてくれるのはBP

オマエだけだゼ!?

惜しむらくは、サイズがより大分小さい事だガ」

「サイズまで再現したら、街もろもろ潰れるな」

2人は友人のようだった。

ロックは、パレードが誰かと楽しげに談笑するのを始めて見た。

「アリックにも勧めたンだけどさァ

コイツぜーんぜん観やがンねーノ」

「オレはそういうの興味ないんで

───リヴァイアサンでしたっけこの船の名ま」

だ二度と間違えるな

糞 ガ ッ ッ ッ ! ! !」

「す、すみませんっ」

「いーや許さンッ!

後でアニメ視聴会開催ダ!

全2クール分観終わるまで帰さねェからナ!!」

「それ少なくとも24話はありますよね!?

嫌ですよ!!」

「駄目ダ!

せめて第11話『騎士が最期に託すもの』は観ロ!

泣くから!絶対!!」

3人がやかましく会話してる少し後ろを、ロックはすこしつまらなそうに歩いていた。

戦前組の会話に、ロックは全くと言っていい程着いて行けていなかったのだ。

アニメ等という単語は生まれてこの方聞いたことがない。

「戦前から生きてる人って少ないんじゃなかったっけ

───なんで3人も集まってんだろ」

「大隊は割と戦前組多いンだぜ嬢チャン

幹部とかほぼ全員戦前生まレ」

「ほえー、そうなんだ」

「幹部と言やァ、"マリィリーン"も観てたよナ」

「世界が滅びさえしなければ、後4クールは続いただろうにと、よく嘆いていたな」

「あ、原作あるんですかアレ」

「あるヨー

クッッソ長い上に未完

読ム?」

「いやぁ結構です

───あの、そろそろオレをここに連れてきた理由を教えてくれませんか?」

「アレ?BPから聞いてないノ?」

「私も聞かされていないんだが」

「アッレーそうだッケ

イヤー別に、旧友見つけたかラ、また一緒に仕事したいナーッテ」

「───嘘」

男達は振り返った。

「それだけの理由で、わざわざあんな仕事依頼する筈がない

他にもっと大事な理由があるんでしょ?」

ブラック・ロックは続けた。

「ワイルド・フォックスのアジトの中見たけど、

途中、武器庫を見つけたんだよね

エキノコックス連れてたから聞いたけど、全部

唯の一ギャングが持てるような物じゃない

バックに絶対に巨大な組織が付いてる

ラージローグが聞きたいのはそれについてなんでしょ

違う?」

一瞬の静寂。

「───BP

おまえ随分と頭のキレる女捕まえたナ」

「まぁな」

「───馬鹿ではなかったか」

エキノコックスは呟いた。

「ま、その組織が何かは検討が付いてル

どうせ"十ノ月"だロ

大隊以外に魔法武器量産するような所はあそこぐらいダ

オレが聞きたいのハ

───工場ダ」

エキノコックスの前に立ったラージローグは、不愉快な笑みを浮かべる。

「どーうせオマエも共同開発してンだロ

ま・ほ・う

魔法武器作る工場の場所、知ッてる筈ダ」

「場所知ってどうするつもりですか?

潰す?」

「そりャ潰すがネ、それ以上に

───技術を、吸収したイ」

「技術を?」

「そうダ!!

アリック!オレサマはアニメと魔法が大好きダ!!愛していル!!

戦後から今まで200年!

他の低脳共がどのように魔法を発展させていッたのか興味がある!

アリック、オマエもネ」

「オレ?」

「そうだ、アリック

オマエがこの200年で発展させてきた魔法に、興味があル

オマエは優秀だからナ」

「なるほど、大隊の魔法研究が進む訳か」

「いや、それはついデ」

「なら、本来の理由は?」

「知れたこト───」

口角が上がる。


「このラージローグが全使の頂点に立つ為ダ」

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