It's good day!

カゲトモ

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「すみません、無理をお願いして」

「何をおっしゃいます。うちの店を選んでくれただけでも嬉しいくらいなのに」

「ありがとうございます」

 少しだけイントネーションの違う標準語を話すのは、幹事のカナエさんだ。仕事では標準語を使うのに、ついなまってしまう時があって恥ずかしいと以前言っていたことがある。

俺としては柔らかい感じがして好きなんだけどな。

「本当にありがとうございます。僕達の為に貸し切りにしてもらって」

「いえいえ、カナエさんの頼みならお安い御用ですよ」

 それに今迄も何回か貸し切りにしたことがあるし。これはこれで楽しいから。

「けれど、大した料理を出せないのが申し訳なくて」

 バーで出すおつまみ程度しか出せないから。

「とんでもない。僕、マスターのポテサラ大好きなんですよ。他の子達も楽しみにしていますし」

「ふふ、本当ですか?」

「そうですとも。それにみんな飲んで騒ぎたい子達ばかりなので、逆に良かったと言うか。場所を貸し切りにしてもらって、さらに美味しいお酒を作って出してくれるなんて、最高です」

「楽しんでいただけたら幸いです。今日はお祝いの日ですしね。あ、プロジェクターはここでよろしいですか?」

「はい。あ、そうだこれ、各テーブルに置いてもいいですか?」

「もちろんどうぞ」

 笑顔で頷いたカナエさんが手にしているのは、小さな花籠。そこに刺さるプレートにはHAPPY WEDDING! と、“MINAKO&RINA”の文字がある。今日のウエディングパーティーの主役だ。

「綺麗なお花ですね」

「僕が選んだんです、二人の明るい未来を思って。自分で言うのもなんですけれど、素敵でしょう?」

「えぇ、とっても。さすがカナエさんですね」

 キュートな笑顔のカナエさんはミントカラーのワンピースを翻して、花籠を各テーブルに設置した。

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