第5話 涙の星

「苦しいと思う。… 違う。辛いんだ」

心臓が痛い。いっそ死んだ方がいいとか、そうじゃないんだって。


「でも、どうせ死ぬんだよな」

だからって、生きること。死んだふりをしていたらいいのかな。


エゴを抱えている人間。平和ならなんでもいい。地獄を味わうなら天国を願う。当たり前だ。少年は青年となる。

いつしか、大人という枠に入るが心は子供の枠だと。生まれた環境ばかり憎んでも意味ない。そんなことわかる。 ため息をついた夕日。


夕焼けに照らされた頰。自分が言いたいことは「寂しい」だと感じた。

心臓がもし動いていなかったら良かった。

感情がないから、何を伝えても意味がない。

伝わりやしない感情。言葉は記号で、挨拶みたいに同じことを返す。


寂しい。泣きたい。


もし、私に愛を感じる「あなた」がいたら違ったのかな。「あなた」に甘えて。私が泣いた時、「あなた」は涙から笑顔にする魔法をかけてくれるかな。


夜空に浮かぶ雲の向こうから聞こえたんだ。


『泣きたい時は、何も言わなくていいよ。』


頰が濡れ、丸い粒には星が映っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る