第3話 雨が降れば

私は、傘をさした。雨の中、わざと水溜りに足を浸して泥水に自分の顔を写した。


なにもかもうまくいかない。

誰でもいいから私の手を握って抱きしめて。

どうしたって、どうやって、何も出来ない。

相手と話す。舌を噛む。ごもり黙る。

ずっと、あなたに憧れてたのに。


あなたは、居なくなった。


「全部手放せばいいとか思っていたけど。それは自分が無くなることだった。」

今更気づいた。


生活の嘘だって。

奪われて隠されて

「ごめん」って、返されて。

なんでも受け止める人ではないのに。

誰に対して言っているんだよ。


分かり合えるはず無いんだ。


あなたなら、きっと。

『あなたらしいペースで元気にやればいい』

って、言ってくれる。

泣きながらスキップしたら天気も晴れて、雨も降る。

「まさに天気雨さ」

後悔も握ってもらえた右手も、抱きしめてもらった感覚も全部夢の中に収めた朝。


曖昧に愛を紡ぐのもありだと。


あなたならきっと。

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