脳だけの僕とアンドロイドな君

夜表 計

第1話 “僕”

 話しによると僕は男らしい。別にトランスジェンダーという訳ではなく、かといって女という自覚があるわけでもない。

 そもそも、僕に性別という概念が無い。一人称を“僕”と呼ぶのは、遺伝子的に僕が男らしいからだ。

 遺伝子的に性別が決められていても、それに従う道理はあるのだろうか。それに、例え僕が女だと言っても誰も僕の性別は分からない。僕には身体が無いのだから。

 そう、“僕”を表す物が僕には存在しない。主体が存在しない。

 けれど、今話している僕が居るのだから主体は存在するだろうと思うだろう。でも、それはまやかし。機械としゃべっているのと変わらない。ただの反射でしかない。

 今の“僕”は情報と知識によって平均化された、平坦な“僕”でしかない。

 自己とは経験と身体によって生まれるモノだ。

 僕はこの水槽の中でしか生きられないちっぽけな脳だ。

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