Work 2 外出ぎらい

 ヤツにジッパーがないことだけは判明した。ヤツとの妙な暮らしもすでに二年を過ぎた。


 そこへもってきて、このウイルス騒ぎである。外出するな、とかいうわけだよ。そこはさすがに犬をつれて近所の散歩もダメだと言われはしないが、こっちだって朝早くから出歩きたかないよ。だって、休みだよ。


 なのに朝は、あいかわらずの散歩の催促である。いやなんだよ、こっちだって休みくらいはゆっくりしたいのだ。しかし、根負けするのはいつものことである。


 でもってだよ。癪に障るのだが、いざ散歩に出かけたりすると、急にヤツはやる気がしぼんできてしまうらしく、排せつをすますとくるりと方向を変えたりするわけだ。いくら辛坊強いわたくしだって頭にくるのだよ。


 くるりと変えるタイミングも急で、排せつを済ませて「フー」などと一服してからせかせかと引っ張りまわすわけだ。まるで、電車待ちしてるオヤジが、駅の喫茶店にある喫煙コーナーから立ち去る時みたいだよ。


 わたくしとヤツの散歩が終わってから、朝飯なんぞ作っていると、ヤツは偉そうに新品ソファーで朝寝である。寝転がってテレビを見てる後ろ頭が実にふてぶてしい。ときたま見える横顔もじつににくたらしい。


 朝飯終わってから、これを書いていているのだが、ヤツが後ろからじっと見ていて気味悪いからやめる。

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