現代病床雨月物語     秋山 雪舟(作)     

秋山 雪舟

第12話 「生戦(せいせん) その4 難病治療を開始する(前編)」~ノーベル賞受賞薬プレドニンの投与~

 2017年3月に「特定医療費(指定難病)受給者証」が届きました。病名は「特発性血小板減少性紫斑病」です。

 私は、3月の受診時に血液内科のA医師から血小板数が1万5000なので入院治療を考えて下さいと打診されていました。4月の受診時には、とうとう血小板数が1万になってしまいました。A医師に入院が必要ですと断言されました。私は、認定が降りたので入院治療に挑みますと言いました。A医師は何が降りたのですか?と私に尋ねました。私はA先生(医師)の「臨床調査個人票」のおかげで難病認定が降りたのですと応えました。それなら秋山さん堂々と治療に専念して下さい。

私はいつでも入院しますと返事をしました。A医師は病室が空きしだい連絡しますと応え席を立って帰ろうとする私と妻(宝雪)に、そうそう秋山さん外科のX副院長は3月で退職されましたと知らせてくれました。私は、これで前回の入院よりも希望が持てると確信しました。

 この時期の私の体調は、血小板が少ないために右腕の肘から手首までに紫斑が現れ、両耳は外耳炎になり痒くて耳鼻科を受診していました。またおでこにニキビの様な吹出物ができ皮膚科から軟膏を処方されていました。日常生活で一番不快だったのが最もやわらかい歯ブラシで歯磨きをしても歯茎から出血することです。また鼻の粘膜が弱くなり少しの力で鼻をかんでも血が滲むことです。

 4月の血液検査の結果は、血小板数1万の他に、白血球数が1500と低く、好中球数は180しかありませんでした。CRPは高く0.47でした。この数値では本来外出はできません。入院時の診断書には、「好中球減少症・血小板減少症の疾患にて1ヶ月の入院加療を行う予定であることを証明する」と書かれています。

 国の指定難病である「特発性血小板減少性紫斑病」の治療ガイドラインでは私はステージ4になり入院治療によりステロイド投与となっています。また好中球数がステージ4で、白血球数でステージ3になります。入院は、4月の下旬に決まりました。この病院で3度目の入院になります。1度目は「リンパ節」の摘出。2度目は「痔瘻(じろう)」による高熱で入院。そして今回は難病治療による入院です。私は3度目で始めて血液内科の専門病棟に入院することになりました。病室は4人部屋で私は窓側のベッドでした。病室の他の3名は、私より年輩の方々でありその内の2名は癌で1名は血液の病気でした。

 私も含めてあまり自分の病気の事で話すことはありませんでした。なぜならいちいち話さなくとも医師や薬剤師・看護師と患者との会話が筒抜けなので聞くまでもありません。2名の内の1名の癌患者の方は直接的な癌治療ではなく生活の質の向上の為に痛みを取り去る薬の調節の為に入院されていました。もう1名の癌患者の方は抗癌剤を投与されていますがなかなか熱が下がらず苦しそうでした。残りの1名の方は血液の病気で赤血球数が少なく頻繁に輸血をされていました。

 入院の翌日(2日目)は、朝から採血をしてその後で血小板の輸血をしました。入院3日目からは、朝食後にプレドニン(ステロイド)の投与を開始しました。プレドニンは、5㎎を朝に6錠、昼食後に4錠を服用します。

 入院2日目の血液検査の結果は、血小板数1万1000、白血球数1190、好中球数160、CRPは0.27でした。

 入院6日目の血液検査の結果では、2日目の輸血とこれまでのプレドニンの効果により、血小板数7万1000、白血球数2450、好中球数210、CRPは0.20(正常範囲)になりました。この時にA医師から秋山さんこれで命の危険はなくなりましたと言われ自分でも危なかったんだと認識を新たにしました。

 入院17日目の血液検査の結果で最高値の24万4000の血小板数になりました。これは正常範囲です。白血球数5790、好中球数3420、CRP0.20これらも正常範囲になりました。

 これらが正常値になると目に見えて体の調子がよくなってきました。腕の紫斑については血小板が7万を超えた時にはすっかり消えていました。しかしそれ以上の正常値になった時には肌の艶が良くなり歯茎からの出血もなくなり歯槽膿漏の治療後のように歯茎が締まり色も良くなりました。また耳の外耳炎も自然治癒してまったく痒くなくなりました。鼻の粘膜も強くなり血が滲むことがなくなりました。おでこの吹出物も少しよくなりました。正常値の体の状態とはこんなに快適なのかとビックリしました。

 医師からはプレドニンを開発した人はノーベル賞を受賞していると聞かされていた私は、さすがノーベル賞級の薬だと思いました。これで私は難病治療が順調に終わり退院も近いと思っていました。

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