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「でもふと思うんだ。これでいいのかなって。人はつい、所属を決めたがるから」
「所属、ですか?」
「うん。仕事をしているのかどこの会社なのか、独身なのか結婚しているのか、ゲイなのかノーマルなのか。フリーでいることをまだこの世の中は良しとしないみたいで」
フリーを良しとしない・・・確かに。企業に就職せずにフリーターとして生活している人のことを、世間的には認めていない節がある。未婚の人を下に見ている感じも否めない。
いい会社に入って安定した生活をして、結婚して子供を育てて。それが世間一般の“幸せのテンプレ”なんだ。それがさも正解のようになっている世の中に、俺も嫌になる時がある。
「だからナナが傷ついていないか、時々不安になる時があるんだ。俺の前では笑顔でいてくれるし、結婚しなくてもいいと言ってくれているけど、本当にそれでナナは幸せなのかなって。結婚と言う証明が必要なんじゃないかって思う時もあって。結局俺もそんな人種と同じなんだね」
「そんなこと」
「ううん、ごめん。自信が足りない男で。結婚しなくてもナナの事を一生幸せにする覚悟は出来ているんだけどね。子供だって欲しいし」
それからグラスを空になるまで一気に飲み込んで続けた。
「きっとナナも言わないだけでそんな不安を抱えていると思うから。それも全部、一緒に抱えて歩んで行けたらって思ってる。きっとそれが一生を添い遂げるパートナーとしての在り方だから」
それじゃぁね、と元の軽い調子に戻ってミズノさんは店を出て行った。
きっとこの後の食事は二人で楽しく過ごすのだろう。悲しみも喜びも全て二等分に抱えて。
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