異世界に男がボク一人!? 女性恐怖症なのに、ハーレムなんて要りません!

松葉たけのこ

0=人生最期最悪のキス

 僕、霧上きりがみ雅也まさやは女性恐怖症である。

 それも重度。並大抵のものではない。


 触っただけでダメなのはもちろん。

 同じ部屋で同じ空気を吸うだけで気分が悪くなる。

女子がさっきまでいたと意識しただけで、猛烈な拒否反応に襲われる。

吐き気、めまい、じんましん。笑い事ではない。笑う奴はすぐさま死ね。


 それくらいに僕は女性がダメだ。

 嫌いとかではない。無理なのだ。


 「なんだ。酒は嫌いかえ?」


 嫌いとかではない。無理なのだ。

 無理なのになぜ――


 「それとも酌が気に入らんのかのぅ」


 目の前の女性、はだけた和装、銀髪の大和撫子。それが酒を口に含む。

 そのさまを見て、僕はほっと一息を吐く。

これ以上、関わられたら死ぬ。命の危機だ。


 「ふぉれ、ちこう寄へ」


 撫子の隣の女兵士に睨まれ、僕は首を振る。

 死んでも嫌だ。死ぬから嫌だ。こんなものは権力の横暴だ。


 「興のわからん奴じゃほぅ……ほうじゃ」


 仄かに香の匂いがして、大和撫子が口に広がった。

 熱く、触手のように舌を絡ませ、酒を伝わせ、口内を征服する。

その行為は彼女のように、高圧的で。

彼女のように可憐だった。


 誰もが羨む絶世の美女、その接吻……というかキス。

 僕以外の誰か、頼むから変わってくれ。僕の意識が持つうちに。


 「ぷはっ……およ?」


 嫌いとかではない。無理なのだ。

 気絶して終わるような、そんな生易しいものではない。


 「オゲェエエエエエエエエエッ!」

 「ぬぅわぁああああああああ!?」


 なんて不運なことだろう。

 その瞬間、女性しかいない、その世界で――



 僕の死刑が確定した。

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