第369話

「元気だなァ~!! イチゴは!!」

 ショーリもかなり疲れた顔だ。

 平坂を昇り、図書館への急勾配の坂道は元気な時でなければ、うんざりしてくる。

 振り返ると、全員、疲労困憊だ。


 無理もない。朝からずっと立ちっぱなしで、パーカーを売ってきたのだ。


 早々に、ユリアンとニコは脱落していった。

 それとムッチとシーちゃんも途中棄権だ。

 残りの私とゴンちゃん、サンタ、そして横にいるショーリだけが、閉館した図書館への坂道を昇っていた。


 ふ~ーー……

 さすがに私の太ももにも乳酸が溜まってきたようだ。

 足取りが重たい。


 冬は、陽が暮れるのが早い。あっと言う間に辺りは夕闇に包まれてしまった。


 それでもLED電灯のおかげか、ひと昔まえよりずっと明るい。

「うっわ~ーー!! 綺麗!!」

「ああ…、やっと着いたな……」

 丘の上から横須賀の夜景が一望できた。


 彩色いろとりどりのイルミネーションが輝いて見えた。

 遠く東京湾を挟んで、房総半島にも数えきれないほどの明かりが光輝いて見えた。


「宝石箱を引っくり返したみたいだな……」

 柄にもないことをショーリが言った。


「フフ…、彦マロかよ」

 私の突っ込みに、ショーリは「フフ……」っと笑った。


「今日はありがとうね……」

「別に…、やったのは、イチゴたち、【YSプラス】のメンバーだろ……」


「まぁ、そうだけど…… まさか、ドブ板通りでダンス大会が開かれるとは思わなかったよ!!」


「フフ…… 綺麗だったよ!!」

「え…… 何が…!!」

「イチゴが、さ。マジで、他のアイドルが霞むくらいな……」

「フフ…、ありがと。でも…、何にも出ないよ」

「別に……」


 そこへようやくサンタとゴンちゃんが現れた。

「何よ。二人で……」サンタが勘繰った。


「別に…、何にもないわよ」


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