第305話

「那奈からだ!!」

「え…?」

 全員が一斉にサンタの手元に注目した。


「出るね。」

 サンタは一度、背後を向き応対した。

「もしもし…、私だけど……。」

 何が話し合われているのか、聞き耳を立てていたが、全然、聴こえない。


「うん……、うん、え?

 マジで……!!」

 急に、サンタの表情が明るくなった。


「ちょ、イチゴに代わるね!!」

「え?」私に……。

「はい! イチゴ!!」

 スマホを私の前に差し出した。

「え、何…?」

 サンタから受け取って、

「もしもし…、代わったけど…。」

『あ! イチゴ!!私、那奈だけど…。』

 那奈の聴いた事のない明るい声が響いた。


「うん…、どうしたの? 何かあったの……?」


『うん…、ちょっと、ゴメンね。

 昨日は夜に押し掛けて行って……。』

「別に…、そんな事は良いけど、体調は良いの?」


『その事なんだけど…、来ちゃったのよ!!』

「え、来ちゃったって……?」

『だから、アレが……!!』

「あ、あぁ…、アレ…、じゃぁ、妊娠してなかったの?」

『そう…、ゴメンね。』


「いや、別に…、良かったって言うべきか…。」

 複雑だが…。

「じゃぁ…、今、サンタに代わるね。」

 私はスマホをサンタに返した。





 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る