第304話

「いや…、それは、あくまで堕胎おろす時に掛かる費用で……。私だって、どれだけ掛かるのか、知らないし…。」

 全然、そんな知識がなかった。

 しかも産むとなれば、100万単位で金が掛かるだろう。そうなれば、那奈も肉体的にはもちろん、経済的にも両親を始め家族や学校に隠し通せるモノではない。


「あの…、彼…ユズ君は今、受験に専念しないと……。」


「あのねぇ…、シーちゃん!!」

 

「わかってるよ。イチゴ…!! だけど……、」

 シーちゃんは、本城の顔を見た。

 彼はうつ向いて言葉もない。

「私は、大学の推薦決まってるし…、卒業まで比較的、暇だから……。」


「え…?」

「私がバイトして、その子に……、掛かる費用を出すよ!!」

「えぇ…? シーちゃん!!」

 私は呆れた。

 シーちゃんが費用を立て替えると言うのか。


「シー!!」

 本城は少しホッとした顔をした。

「アンタねぇ、親に知られるのがそんなに怖いなら、避妊の仕方くらい勉強しろよ!!」


「え…? あ、あぁ…。」


 その時、着メロが流れた。サンタのスマホからだ。

「ちょっと…、ゴメン。ン?」

 サンタは、着信画面を見て眉根を寄せた。


 


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