朔~8~

 ドアを開けた瞬間、視界に桜子が入ってきた。なんでだ、なんでだ、今は授業中だぞ。


 いや、他にも立っている奴等はいるぞ。


 そ、そうか、黒板に宿題の答え書いているだけか。それなら桜子がいるのも分かる。


 でも、でもどうしてそんなに俺のほう見てくるんだ。


 それはあれか、驚いているだけか、そうだよな、突然ドア開いたわけだし、俺も驚いているし。


「おはよう」


 声をかけられた。


 これはただの挨拶だ。ちょうどいたから挨拶してくれただけだ。


「お、お、おはよう」


 どうしてこんなにも挙動不審にしか答えられないんだろうか。折角、桜子が挨拶してくれたのに、なぜ普通に返せないんだ。


 この返事を聞くと桜子はなんだか嬉しそうに席に戻っていった。


 今度はちゃんと話したい。


 まずは早くこの授業が終わればいい。そうすれば、俺は今までのように桜子と話すことが出来るだろう。


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