朔~4~

 何度も戻ろうとして、結局教室には戻れずに家に着いた。謝らなきゃと思いつつ、メールさえも出来ずにいる。


 いっそ桜子の家にとも思ったが、家を出てから家を知らないことに気が付いた。


「ほんと、何やってるんだろう」


 家の前で溜息をついていると、姉ちゃんが帰ってきた。


「家の前で独り言と溜息か、弟よ。青春だねぇ」


 姉ちゃんは俺の様子を見て何かを察したのか、面白そうにニヤニヤしている。


「何が青春だよ。こんなんなら青春なんていらねぇよ」

「まぁまぁそう言わさんな。とりあえず家入ったら?」


 家の前でこんな風にしていてもどうにもならないしな。



 家に入ると、学校から帰ってきてから相当時間が経っていたらしく、もう夜ご飯が出来ていた。俺は何も考えずにひたすら胃に入れる作業を繰り返した。



 部屋に戻ってから俺はまた考え込んだ。どうしてちょっとしたことから、ここまで悩むようなことに……。


 もう俺達は三年生で、まだ六月といえどすぐに卒業がきてしまう。ここで立ち止まってたら桜子と一緒にいる未来なんてねぇぞ。


 

決意を固めた俺は明日に備えて早めに寝た。



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