朔~3~

 そんなこと聞いてどうするんだ俺。どんな奴かなんて知りたいわけないだろう。


「急にどうしたの?」


 今言ったこと全部忘れろ、なんて言えない。今更言えない。


「もう分かった、もう聞かねぇ。だから絶対答えるなよ!」


 俺はそう言って教室を出た。靴を履き替えようと下駄箱まで来てから、誰もいない教室に桜子を置いてきたことに気が付いた。


 ちょっとした恋愛話でこんなことになってしまった。自分で聞いておいて言うなって言ったり、勝手に話をやめてこうして出てきてしまったり。


 謝ろうと思って引き返そうにも、俺の足は教室の方へは動かなかった。



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