桜子~3~

 手を繋いだなんて真っ赤な嘘。強がって言ってしまったけど、すぐに後悔している。朔はこんな嘘つきな子嫌だろうなぁ。

 

 私がそんなことを考えていると、朔はこう言った。


「どんな奴とだよ。今もそうなのかよ」


 嘘なの、嘘だからそんなこと聞かれても困るの。なんて返したらいいんだろう。

 私がモゴモゴしていると、朔は急に右に左にうろうろし始めた。


「急にどうしたの?」


 気になって聞いてみると、こちらを見て一瞬何かを言いかけ口を噤んだ。本当にどうしたんだろう。分からないけど、聞かれたことにはとにかく何か答えなきゃ。でも何を。


「もう分かった、もう聞かねぇ。だから絶対答えるなよ!」


 そう言うと朔はスクールバッグを持ち、教室から出て行ってしまった。

放課後の教室で話していたのは私達だけだった。誰も止める人がいないせいか、いつの間にか遅い時間になってしまっていた。教室に一人取り残された私は、ただ立ち竦んでいた。



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