桜子~2~
経験なし、彼女もいたこと無いってことを向こうは恥ずかしそうにしていたし、笑っちゃったけれど、私はそれを聞いてちょっとだけ嬉しく思ってしまった。まだ誰も朔の特別にはなってないんだなって。
とんでもないことを言ってしまった朔は、いつまでも笑っている私が気に入らないのかちょっと怒っているように見える。
笑いすぎたかな。
「桜子、お前だって何の経験もないんじゃないのかよ」
予期していなかった質問にこう答えた。
「そ、そんなの少しくらいは経験ありますー」
……こう答えてしまった。
全く経験無いのに、見栄を張ってしまった。どうしよう。遊んでると思われたかな。どうしてこんなこと言っちゃったんだろう。
「あるってどんな経験だ。教えろよ!」
これは興味なのか、私なんかがってことなのか強めに内容を聞いてきた。
本当は無いんだから答えられないけれど、ここは嘘をつくしか方法がない。というか、嘘だと言えない。
「て、手繋いだり? そういうこと!」
あぁ、もう、繋いだことなんてないよ。
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