Sanctions

高原江

第1話 第二の人生

第二の人生は、突然始まった。




「ガロウズ!!!お前宛に手紙が来てるぞ!」


「…俺宛に…?」




ここはとある町外れの炭鉱。


俺はそこで働く退役軍人だ。

戦争で妻と娘を無くし、これからの余生をただ一人で生きていくと思っていた。

そんな俺に一通の手紙が届いた。


その一通の手紙から、俺の第二の人生が始まった。




「…誰からだ…?…さんくしょん…?」


綺麗なセピア色の封筒の宛名を見るが、誰からか、全く見当がつかなかった。


「サンクション…?お前それって…」


「お前知ってるのか?」


「あぁ、確か街のギャング共やチンピラ…時にはヤくザやマフィアなんかも相手にする組織。

名の通り、サンクションは制裁という意味で。

悪人に制裁を与える、という組織だ。

…でも…なんでお前に…?」


「ンナの俺もわかんねぇよ…」





手紙の内容は

○月○日

カタレア町3番地

サンクション本部まで来てください。


といった、内容だった。


「…来いって言ってるからなぁ…行ってくるか…」





呼び出しの日付が今日だったので、所長に許可を貰い、何年ぶりかに制服を着る。


いつも適当に流していた髪を綺麗に後ろでまとめる。


妻が買ってくれた懐中時計の鎖を腕に巻き、家族写真を胸ポケットにしまい家を出た。







「…ここが…」


見た目は普通のビル…と言ったところだった。


「…ここでいいんだよな…?…誰もいない…あ…あの〜、誰かいませんかね〜…あー…」


フロントに入るが、人がいなかった。

置いてあるソファは破けスポンジが見えていた。

机は欠けており、ライトはほぼ消えていた。


「…どうすりゃいいんだ俺は…」







「あれれ、お客さん?」



突然後ろから声が聞こえた。


「っ!?あ…あのぉ…俺……私宛にこんな手紙が来ていたのですが…」



声の主は金髪銀目の俺と同じ歳ぐらいの男だった。

ガタイがよく比較的背が高い俺でもデカく感じる。

グラサンと縦縞のスーツのせいもあるのだろうが…


「…あ〜…あーはいはい、うんうん、わかったとりあえずここじゃなんだからうちの部署に行こうか」


と、いい男は階段を上がって行った。


「あ、自己紹介まだだったね、俺はゴルゾ。

ゴルゾ・エイブラムズ。

よろしくな」








「んー…と?

ガロウズ・ザゴアさんね…

43歳…188cm…ほぇーデカイな。

78kg…平均だね。

あ、元軍人なの、ふーん。

今は炭鉱で働いてると…そうか…戦争で奥さんと娘さんを…なるほどねぇ…うん、飽きた。」


ゴルゾさんは何処から引き出したのかわからない俺の情報を読みながら独り言をブツブツと唱えていた。

そして何故かわからないが突然飽きたと言い放ち、資料をぶん投げた。


「うん、たしかにこの前ボスから手紙を出したようだ。

なるほどねぇ…君が…


ようこそ、サンクションへ」


俺に右手が差し伸べられる








「いやちょっとまってください!!!!!」


「ん?」


「俺入るなんて一言も…」


「あら、そうなの?」


「大体俺はなんで呼ばれたんですか!ここは何なんですか?教えてください!」


「んー、まぁそうなるよな。

わかった、説明するよ。









ここは、サンクション本部。

Sanction…聞いたことないか?

我々の仕事は主に街の警察が相手に出来ない奴らを制裁すること。

ここで働いてる奴らは全員訳ありだ。

んー…例えば俺。

俺は空間を操ることができる。」



「…は?」


「説明しにくいから感じてもらうね。」



ゴルゾさんが左手をあげ、俺と重ねる。

そして、右に振った。






振ったと同時に俺の世界が横に飛んだ。


「は…」


そのまま、右の壁に打ち付けられる。


「うわっ、ごめんごめん、ちとミスった」


「ッ…ってぇ…」


「まぁ、こんなところだ。

今、俺はお前のいる空間だけを切り取り右に投げた。

俺のこの空間操作は

空間は3次元のユークリッド空間、すなわち、3方向に無限に拡がる均質なもので、物質の存在から独立した空虚な容器のようなもの、均質に空間や物質とは切り離されて存在する時間がある、いわゆる「絶対空間」と「絶対時間」

そこを操ることが出来る…と考えてくれ。

実際、俺にもこの力の構造はわからん。」


「…マジかよ…」


「まぁ嘘ではないな」


「…で…なんでそんな中に俺が…俺はなんの力も持ってませんよ」


「あれ、もしかしてまだ気付いてない?」


「なに…?」


「んー…どうすれば使えるかなぁ…先生を呼ばないとわからないな…

ちょっと待っててくれない?」


そう言って、ゴルゾさんは誰かに電話をかけ始めた。


『何だってんだ…ここは本当に大丈夫なのか…?

…俺死んだりしねぇよな…』


「あー、ガロウズ。

先生が今すぐ来いとの事だ。

ここからそう遠くない、移動するぞ」


ゴルゾさんは足早に階段を降りて行ってしまった。

その後ろをのそのそとついて行く





俺の第二の人生はかなり危険のようだ…





to be continued…

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