保険実技

第1話

「え？セックスしたことないの？」

マウンティングである。

25歳まで恋人なしセックスなしを貫いてきてこの週末ようやく人生で初めてセックスした。質問し返されたら仕方なさそうに答える準備万端だ。

質問している相手は職場の後輩の石田くんで、本来ならセクハラにあたる質問だけど今週だけは許してほしい。僕のセックス記念週間なのだ。

「そうなんすよ。いや違うんです」

「違うって？」

「セックスのときインフルかかって学校休んだんですよ」

「学校も休んで、デートもキャンセルしたってこと？」

「いやデートは僕経験ないんですけど、学校のセックスをインフルで休んじゃったんですよ」

「学校でセックスって具体的に何よ」

「え、保険の...」

「何で保険が出てくるの？」

「いや、保険でセックスしないですか？」

「授業でってこと？」

「そうです」

「えーーー...」

石田くんの顔は冗談を言っているようには見えない。

周りのお客さんが聞き耳を立てている気がする。

「人権侵害じゃん」

「そうですね」

「それって具体的にどうやんの？」

「えっ...セックスですか？」

「いや、授業？」

「いや、当日休んじゃったんで全部は分からないですけど...」

石田くんが語ってくれたところによると、保険の授業のセックスとは次のようなカリキュラムであるらしかった。