第6話 貴族郵便?
この場にいた人たちが全員、ラザフォード侯爵の持っている手紙に釘付けになっている。
走り寄って来たレイチェルも興味津々で侯爵様と手紙を見ていた。
「これは君に来た手紙だ。持っていてくれ、セリカ。」
「はい。どなたからの手紙なんでしょう? こういう花文字は習っていなくて。…その、読めないんですが。」
「読まなくていい……いや、それは不味いか。くそっ、クリスのやつ。」
いつも威厳のある丁寧な話し方をしていた侯爵様の口から、えらく乱暴な言葉が飛び出してきた。
「セリカ、私はちょっと領主館へ帰って来る。私が来るまで、この手紙を開けないで欲しい。」
「はい。」
何かわからないけど、どうせ開けても読めないのだ。
そのまま持っておくことに異存はない。
「これを。」
侯爵様が差し出したのは、一万ポトン札だった。
ピザ一枚の代金としては多すぎる。
「お釣りを持って来ますね。」
「いい。後からまた来るので、預かっておいてくれ。出来たら…その、おすすめを取りおいてくれるとありがたい。」
食べる気満々でしたもんね。
「わかりました。」
セリカが頷くと、侯爵様はスッと空中に浮かび上がった。
驚いて見ているうちに、みるみるうちに空高く登って行ったかと思うと、山の上の領主館に向かって飛んで行った。
……え?
まさかうちに来る時って、空を飛んできてたのぉーっ?!
「うわぁ、魔法使いが空を飛んでるのって初めて見た!」
「あらカール、見たことなかったの? 私は一度、ダレニアン伯爵様と息子さんが水害の視察に来てくださった時に見たことがあるわ。あれ、かなりの魔法量がないとできないらしいわよ。伯爵様も普段は馬車を使われるもの。」
レイチェルって何でも知ってるのね。
セリカにしてもカールと同じで、あんな風に魔法使いが飛んでいるのを見たのは初めてだ。
でも自分で森の中をこっそり飛んでみたことはあるけれど。
「ねぇセリカ、その手紙ちょっと見せてくれる?」
レイチェルが手紙を見に来たので、カールも側に寄って来た。
セリカも自分が持っていた厚めの手紙をしげしげと見る。
「この印、普通の郵便じゃないわね。」
「本当だ。郵政局のスタンプが押されてない。」
レイチェルとカールの指摘に、字を解読しようとしていたセリカもスタンプの位置を見てみた。
見たことのないキラキラした砂粒のようなもので
「これ、貴族郵便ね。王都から領主館へ直接届いたんじゃないかしら。」
「どうして王都からってわかるの?」
「だってバラの模様でしょ。ファジャンシル王国の
「レイチェル、あなたって…警察の人みたい。」
この人、職業を間違えたんじゃないかしら。
確かにレイチェルの推理は当たっているような気がする。
そう考えれば、侯爵様が顔色を変えて領主館に戻ったことの説明もつく。
けれどそんな手紙が何故、自分に届けられたのかということだ。
それについてはさっぱり意味がわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます