066
いやぁ、参った参った。
まさか人間から魔族に喧嘩売ったとはね。
今度、大森林に帰った時ヴァローナに聞いてみるか。
気軽に帰れる距離じゃないのも問題だよなー。
こればかりは地脈がうんたらかんたらだから仕方ないんだろう。
「ルピー、ここは何してるんだ?」
「あら閣下、ハルピュイア種は情報部に所属し、主な任務は偵察と牽制です」
「牽制もするの?」
「ノレイス国の北を群れて飛ぶことで、人間側に領地の主張と
「確かに、ハルピュイアが飛んでたらその下に領地を築こうとは思わないよな。何か困ってる事はないか?」
「ん~……
「黒煙? ここらは北風が強いだろう? 南にあるノレイス国からこっち側に届くとは考えにくいが?」
「でも、実際届いてるんですよね~……」
「ふむ、身体に影響はないのか?」
「大丈夫ですわ~。ご心配ありがとうございます♪」
もしそれを意図的にやっていたとすると、真っ先に被害を受けるのはハルピュイア。
彼女たちは魔王軍の情報網と言っても過言ではない。ならばそこを潰しにきている?
ジジやヴェインたちライオス国の冒険者は皆、ノレイス国を警戒していた。
俺が彼らに出来る事は、こちら側からの牽制。ハルピュイアだけではない魔王軍としての牽制が必要だ。この問題……疎かには出来ないな。
「ミザリー」
「はっ」
「人間に化けられる魔族はいるか?」
「それならば我が悪魔一族をお使いください」
「では、ノレイス国へ侵入し、黒煙の正体を掴め。深入りはしなくていい。生きて帰る事を最優先に動けと指示しろ」
「かしこまりました」
後手に回ってはいるが、着任初日に気付けたのは大きい。
「ルピー、黒煙は避けて飛ぶようにしろ。何が起こるかわからないからな」
「はっ」
さて、ミザリーも指示でいなくなったし、ようやく一人だな。
お次はどこに行くか……? あぁ、ゴブリンにはまだ会ってなかったな。
ゴブリンは確か作戦部の管轄だったか。
◇◆◇ ◆◇◆
「うぉら! 貴様等キリキリ動かんかっ!」
物凄い野太い声で檄を飛ばす一際大きなゴブリン。
彼がおそらくゴブリン種の幹部。
「むっ、これはコディー様!」
……閣下じゃないだけマシか。
「視察ですかい!? おっといかんいかん。我輩はゴブリンキングのガジルと申します! 以後お見知りおきを!」
「コディーだ。勇壮なるゴブリン兵団の力を見せてもらいにきた」
「ありがてぇ言葉でさぁ! 貴様等ぁ! 総司令のコディー様だ! 失礼すんじゃねぇぞ!」
「「ギギィイイイイッ!!」」
ゴブリン。ファンタジーの世界ではありふれた存在ではあるが、いざ味方ともなると親近感が湧いてしまうものだ。まぁそれも、この世界の魔族だからだろうけどな。
いや、彼らは人語を操れないから魔物という扱いになるのか。
「これは訓練か?」
「へい!」
「何の?」
「人間をぶっ殺す訓練でさぁ!」
まぁそうなんだろうけど、俺が求めてる答えと違うんだよなぁ。
俺は頭を抱えて溜め息を吐く。
「……はぁ。まず、彼らは何故バラバラの武器を持ってる? ナイフ、短剣、棍棒と多種多様だ」
「拾ったから……?」
何で
「……つまり、ゴブリンの武器は人間の世界から拾った物という事か」
「へ、へい! そうでありやす!」
なるほど。
「……補給部と話を付けて来る。それまでガジルは班分けをしておけ」
「班……ですかい?」
「持ってる武器
「かしこまりました!」
◇◆◇ ◆◇◆
「で、お前が補給部の――」
「
今や五メートルはある俺とそう変わらない巨躯。
それがこのレジンだ。無骨な顔と大きな角。悪魔と違って山羊の角ではない。真っ直ぐ伸びた一本角。まるで日本古来から伝わる鬼のようだ。
この補給部では多くの道具を作っているようだ。魔王の間の大扉の改修工事もここに頼むとしよう。
「コディーだ、宜しく頼む」
「はっ!」
「早速だが依頼がある」
「何でしょう」
「ゴブリン種の武具を作ってもらいたい」
「ゴブリン共のぉ?」
おっと、種族間の隔たりもあるのか?
まるで「何であいつらの武具なんか」という鋭い目である。
「そうだが……何か問題がぁ!?」
という更に鋭い目を向けると、レジンはさっと目を逸らした。
「いや、何も……はい」
うんうん、やっぱり魔族ってこういうストレートなところが大事だよな。
その内パワハラで訴えられるかもしれないけど、今は戦時下とも言える状況だ。多少は仕方ないだろう。
「兜と軽い鎧。これを作りガジルの下へ送れ。武器は槍だけで構わない。ガジルからはゴブリンたちの正確な数を連絡する」
「し、しかし素材が……――」
「――後程オークたちからミスリルを送らせる」
「ミスリルッ!?」
空より高い声が出たぞ、この巨体から。
がしかし、着任早々から…………やる事が多すぎる……。
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