第301話  沈まぬ太陽


「アルト~! 『失楽園』の建設、順調か~? いつでも手伝うぜ~?」

「も~っ! その名前ホントに定着しちゃったね~……でも大丈夫っ! ボク一人で作りたいんだ。楽しみにしててね~」


 珍しく日の高い内から森へと向かうアルトリア。

 九郎が声を掛けると、朗らかな笑みと共に投げキッスが返って来る。

 いつもの黒い衣装では無く野良着に頭巾と、まさに歳若い村娘と言った出で立ち。

 春の麗らかな日差しの中で手を振る美しい少女の姿に、誰もが平和な気持ちを抱くだろう。

 ――片手に持った大量の石材に、目を向けなければ。


 拠点は日々発展していた。

 今日も威勢のいい掛け声が幾つも飛び交い、大工仕事の音が忙しい。

 次々と新しい建物が出来あがり、拠点はどんどん街らしくなってきている。


 貿易船かつ大海の休憩所を目指しているからか、建物の趣は観光地に似ており、景観を重視した造り。重要な拠点は一通り出来上がり、今は街側の建物を増やしている段階だ。

 とは言え自給自足が成り立つので、倉庫の数は少ない。

 貿易船と言いつつも、どちらかと言うと途中途中で商船などに水や食料、そして何より恩を売る事が目的となる。


(ミスラにはマジで頭上がんねえぜ)


 今日も書類仕事に忙殺されているであろうミスラに感謝の念を送りつつ、九郎は浜辺に広がる街並みに目を細める。


 恩を売る。

 普段の九郎であれば「恩は売るものでは無く感じる物。受けた恩は石にきざめ、かけた恩は水に流せって言うだろ?」と綺麗事をのたまっていただろう。

 しかし彼女は疎まれる『魔族の国』の出身。自身も魔族の被差別的な地位に心を痛めていただけに、人の悪意、偏見、噂をかなり懸念していた。


 魔族、獣人、魔物と『不死者』以外にも、今のメンバーの中には『人に疎まれる者達』が多くいる。

 平和な暮らしを願っていても、異形の多いこの島は、今はまだ武力で保っている島・・・・・・・・・にしか過ぎない。


 それではかつてのアルム公国と同じ。

 武力が弱まれば攻め込まれる危険がある。


 1年の約束で行動を共にしているカクランティウスとは、いずれ別れの時が来る。

 龍二も『神の指針クエスト』の事を考えると、いずれ別れが来るかもしれない。

 そうなると途端に戦力は半減する。


 サクラやアルトリアだけでも大概の暴力には対処出来るかもしれないが、「それよりもまず攻撃されない手立てを考えるべきだ」と、九郎はミスラに諭されていた。

 かつて人に恐れられることを恐れ、密林に引き籠っていた九郎にとっても、目から鱗の言葉だった。


 ミスラの狙いは、世論を味方に付けようとするものだった。

 例え嫌っていても、命を救われれば印象は変わる。悪い噂ばかりではなくなる。

 そうやって『不死者』や『魔族』への偏見を無くして行くのは、勿論彼女の故郷の為にもなる。


 ――この島ではわたくし達は『不死者』として生きるのですもの。他人に気を使い、自らを偽る事はしたくはないでしょう? 陸地も見えない大海原の中、『不死者』を恐れて嵐の海に飛び込むか、それとも恩を買うのか……人はどちらを選ぶのでしょうね?――


 一期一会を繰り返し、異形に対する偏見を徐々に無くす。

 優しげに微笑むミスラの目には、執念にも似た輝きが宿っていた。


☠ ☠ ☠


(ミスラはホント……イロイロ……考えてくれてるよナァ……)


 今や拠点の頭脳担当と言った感じのミスラに、九郎はいつも感謝している。

 バランス感覚に優れ、先見の明もあり、何より九郎だけでなく皆に気を配ってくれている。

 新たな環境に戸惑っているのはミスラも似たようなものなのに、他の者達が少し遠慮する中、率先して拠点を住みよい場所にしようと、日々頑張ってくれている。


(だから多少の趣味くらいっ……)


 九郎は自宅の扉に虚ろな目を向ける。


「なあ……ロリコンハーレムアニキ」


 九郎の隣で龍二が、扉の前に吊るされた銀の名札を眺め、半眼を向けていた。


「うるせえっ……これはそう言うんじゃねえ! 頭ん中覗いてみやがれ、ブラックシュバルツ!」


 条件反射で九郎は声を荒げる。


「これはだなっ……あいつらの……特にレイアの心のケアっつーか。クラヴィス達もこの所結構無理させちまってっから……。以前の日常を再現する為って言う高尚な目的がだな……。別に疾しい事は考えてねえし、保育士みてえなもんだっ!!」

「それが日常って……もしもし、ポリスメン?」


 扉の目の高さに、ベルフラム、レイア、クラヴィス、デンテの4人の名札が掛かっていた。


 何を表しているかと言うと、有体に言えば『九郎の今夜のお相手』だ。

 その下にはシルヴィアの名前が掛けられており、それは明日の晩の予約の意味がある。

 内心では自分のプライバシーが侵害されている気がしなくもない。


 3人の女性と関係し、アルトリアはまだ時間が掛かりそうと言う事で、この先の事・・・・・を考えての、ミスラからの発案だった。


 ――こう言った事は、多少『しすてまちっく』な方が、波風が立たないと思いますの。あと一人……秘めた想いを持っている方も、これなら機会を持てますし……――


 未だに名乗り出て来ない、『九郎に抱かれたいと思っていてくれた最後の一人』。

 その女性も平等に機会があるべきだと言うミスラの言葉で、今のような形態をとる事が決まっていた。

 重婚者の娘のミスラは、家庭内の環境にも気を配ってくれている。

 自らの事だけでなく、後に続くであろう者達の為にも。


 ちなみに九郎が一人になりたいと思った時は、自分の名札を掲げる事になっている。

 ――別の意味に捉えられそうな気もしているが、考えたら負けだろう。


「てかこの札俺らの名前もあんねんけど……」


 龍二が嫌そうに顔を歪めて名札の入った籠を指さす。


「男同士で飲みに行く時もあんだろ? 別にこれは『ヤル』意味じゃねえって言ってんじゃねえか」


 九郎の名札もあるのだから、当然他の者達の名前もある。

 今言ったように、この名札は九郎の夜の予定でしか無く、本来性的な意味は含んでいない。

 

「でも名札と名札の間にあるバツ印……」

「…………考えたら負けだっ!」


 分かってんよ、そんな事! と九郎は心の中で叫んで扉から目を背けた。

 名札を掛ける釘と釘の間にある×カケルの印の意味は、考えない方が精神的に宜しい。



「で? どこまで行くんだよ?」

「こっから近い場所の兵士の動きが、なんや不穏やから見て来いって。あの鳥のアンちゃんらでエエやろゆうたんやけど……」

「そう言うなって。お前の力の見せどころじゃねえか」


 無理やり話を終わらせた九郎に、龍二は面倒臭そうに肩を竦める。

 陸地の偵察を頼まれたらしい龍二に、「そろそろ移動も視野にいれておくべきか」と考えながら、九郎は小船に乗り込む。


「おい、早く乗れよ?」

「最近思うんやけど……アニキってどこに行こうとしてるん?」

「…………。……陸側に行きたいって言ったのはお前じゃねえか」

「いや、そう言う意味やなくて……」


 乗船を促した九郎に、龍二が無体な一言を放っていた。


「使いやすいんだから仕方ねえだろっ!」


 九郎はがなりながら小船の後に取り付けられた、鍋を二つ合わせたような球体に手を翳す。

 そして掌を炎に『変質』させる。

 すると球体から伸びた管が水を吸い込み始め――。


 ポンポンポンポンポンポンポンポン


 球体の中に溜まった水が沸騰し、勢いよく蒸気を吹き出し始めた。

 蒸気を吐き出した球体の中は、気圧が下がり水を吸い込む。

 その水が沸騰してまた蒸気を吐き出す。


 蒸気機関がまだ一般的ではないアクゼリートの世界に於いて、最先端の船であろう、所謂『ポンポン船』だ。


 簡単に作れて尚且つ経済的。

『ライア・イスラ』のえさ場でもある拠点の近海も全く汚さない。

 ちなみに結構スピードも出る。


 水辺の近くで尚且つ砂地が多い環境では、船の方が移動は早い。

 それを一人でも簡単に動かせるよう、九郎が考え抜いた結果がこれだった。

 ある意味これも男のロマンと言えるものだが、どうにも龍二には理解出来ないようだ。


「大丈夫やんな? この棺桶……三途の川渡るんとちゃうやんなぁ?」


 龍二には、九郎が自作した自慢の船がドラキュラの棺桶に見えるらしい。

 剣の形を模したつもりなのに……九郎は不満気に口を尖らせた。


☠ ☠ ☠


「どうだ?」

「……斥候が1人に偉そうなんが1人。兵士が8人……。あと漁師みたいなんが1人……。これあれやろ。ボナクのおっさん目え付けられてるんとちゃう?」


 浜辺の岩陰に隠れ、二人は小声で言葉を交わす。

 九郎が覗き見ても全く人影は見えないが、龍二は周囲の人影を捕えていた。

 彼の『神の力ギフト』、『ボウカンシャ』の力の一つ。『俯瞰ビューワ』を通して見ると、この人気の無い景色の中に11人もの人がいるようだ。


「どうだろうな。国がひっくり返ってる最中だから、木端役人が逃げてるんじゃね? ってミスラは言ってたけどよ」

「その可能性もあるんか。まったく碌なことせえへんなぁ……『来訪者』ってのは」


 九郎の言葉に龍二は自嘲ぎみに笑う。


 それは九郎も過去に何度も感じた事だ。

 彼は誰に向かってその言葉を発したのか。


 人形の国を作ろうとしていた雄一や五十六のことなのか。それとも彼等を倒して国が滅ぶ切っ掛けを作った九郎なのか。はたまた、かつて九郎と同じ事をしようとアルムに乗り込んだ、自分に向かって言っているのか。


「とりあえず『血界』は張ったから、後は様子見だな」


 あまり考えると気が落ち込みそうなので、九郎は話を切る。

 浜辺からここまでの道すがら、龍二にぶった切って貰った腕を掲げ、血の跡を指さす九郎に、龍二は自嘲を苦笑に変えていた。


「ほんま便利やな……アニキ」

「だから便利、便利言うんじゃねえっ!」


 離れた場所での監視なら、九郎の得意分野である。

 夜は役立たずではあるが、こうしておけば緊急時に即座に対応できる。

 ただ龍二の言葉は頂けないと、九郎は引きつり笑いを怒り顔に変えた。


「で、どの辺にいるんだ?」

「アニキ、見つからんといてや?」

「心配すんな。コレで見っからよ」


 一仕事終えた九郎が興味深げに尋ねると、龍二がまた眉を顰める。

 その言葉に対して、九郎は千切れた腕を掲げて、わきわき動かして見せる。


「大丈夫? アニキ? 人の道から外れてるん自覚してる?」

「今更だっつーの。これくらいもう皆見慣れちまってんべ?」


 千切れた腕を潜望鏡のように岩陰から出し、周囲の景色を眺める九郎の姿に、龍二は溜息を吐き出していた。


 九郎も指先に目の代用をさせる事には、もう慣れたものだ。

 今の九郎であれば、裸足をスカートの下に潜り込ませるだけで下着が覗ける。

 九郎は下着フェチでは無いのでやらないが、『ヘンシツシャ』の名に偽りなしの能力に、「最近エロ方面に寄り過ぎてね?」と思う部分が無い訳でも無い。


 この世界に来た当初は、九郎はこの『別の部位で見る力』を『フロウフシ』の力だと考えていた。

 しかしベルフラムと心臓を交換した今なら、『ヘンシツシャ』の力だと言い切れる。

 彼女の失った手を再生させたのは、勿論『フロウフシ』の力だが、彼女の心臓の代役を務めているのは『ヘンシツシャ』の力の方だ。


(ずっと痛み・・を感じねえと変質出来ねえって思ってたぜ。気付くのに5年掛かっちまった)


 九郎は自分の鼓動の音を確かめ、その考えを確信に変える。

 ベルフラムと交換した結晶化した心臓には、今は九郎の血肉が纏わりつき、心臓の代わりを果たしていた。


 無くても良い物ではあるが、自然とそうなっていた。

 心臓は二度と自分に戻さない――九郎がそう心に誓った事で、他の血肉が『心臓の代わり』に『変質』していた。


 『ヘンシツシャ』の力に必要なのは『感じる事』。

 痛みだけでは無かったという訳だ。


 炎の熱さを感じ、凍える寒さを感じ、毒の苦しさを感じ、痛みを感じる。

 痛みに慣れた・・・時点で体を『変質』出来るようになっていたのは、言わば合図の代わりなのだろう。

 様々な刺激を体に覚え込ませ、痛みを理解して体を『変質』させて来たのが正解で、自分の肉体は生まれた時から感じて来たものだから、最初から『変質』できて当然だった。


「ほな帰ろか」


 九郎が自分の力を再確認していると、龍二が突然立ち上がり船に向かう。

 意味が分からないと九郎が目を瞠る中、龍二は肩を竦めて笑って見せる。


「どうも貴族が揃って傀儡化しとったから領地が混乱してて……今この辺をうろついてんのは、その混乱に紛れて横領かました奴や。んで、逃げる方法を探ってた時にボナクのオッサンの噂を聞いて、あわよくば船に乗っけて貰おうと企てとる」


 ドヤ顔を浮かべた龍二に、今更ながらに反則級だと、九郎は感嘆の溜息を溢す。


 龍二の『神の力ギフト』、『ボウカンシャ』もかなりチートな能力だ。

 特に相手の心を読む『諦観モノローグ』は反則級である。

 相手を見つけさえすれば、心の中を読んでしまえる。

 正に偵察要員にうってつけの能力だろう。


(エロいこと考えたら一発でばれちまうよな……こいつ、ホントにアルトやシルヴィ読んでねえんだろうな?)


 九郎は龍二に、拠点では出来るだけ『諦観モノローグ』を使わないよう言っていた。

 仲間の心を覗くのは、ギクシャクした関係にしかならないし、何より恋人の頭の中を除かれるのは九郎の気分も良く無い。


 ――隠し事の一つや二つあるのが普通だし、それを気にしていては信頼など築けない――


 恐ろしい見た目を何度も晒しながらも、多くの人に囲まれている九郎に、龍二が相談して来た時に答えたセリフだ。

 

 チートな能力に対して、九郎は場違いな感想を思い浮かべていると、龍二はその心を読んで心配無いと言いやる。


「アニキ、俺の禁忌タブー忘れてへん? 女目の前にして興奮したら死にかけるんやから、今島で『諦観モノ』使ったら、自殺行為やん……。あと、アニキは口にせんでも顔に出るさかい、読むまでも無い。大体男のエロ文章読んだかてキモいだけやし……ちゅーか、大概の男はおっぱい、おっぱい思うとるで?」


 心を読んでおきながらその言い分もどうかと思うが、納得のいく答えに九郎の顔には苦笑が浮かぶ。


 考えてみれば男の思考にエロいことが混じらない方が珍しい。

 龍二にとって、男が思い浮かべるエロスなど、見慣れたものなのだろう。

 第一男の思考で興奮していると、どこかのお姫様に目を付けられてしまう。


 龍二は九郎の思惑をまたもや読んで、うえっと舌を出していた。


☠ ☠ ☠


「うわぁ……」


 夕陽を全身で浴びながら、ベルフラムが目を見開いて溜息を溢す。


 沈む太陽を追いかける。

 彼女のこれまでの4年間を表すかのような景色に、自然と目尻に涙が浮かんでいた。


「どうだ? 1日が長く感じんだろ?」


 ベルフラムの万感の思いに気付かないまま、九郎は自慢気にサクラを掲げる。

 九郎はベルフラムの事を太陽に見立てていたが、自分に太陽のイメージは持ってい無い。

 ただ美しい景色を長く見せられたことに、満足気に頷き「来しなは1日が短かったけどな」と付け加えていた。


 巨大な『ライア・イスラ』の泳ぐスピードは、かなり速い。

 本体の大きさに比べれば牛歩のように感じるが、規模が規模だけにそこいらの帆船よりも遥かに速く進む。

 流れていく景色が変わらないからこそ、ゆっくりと感じるだけだ。


「少し早いかと思いましたが、混乱は起きていないようですわね」


 街の方角を眺め、ミスラはほっと胸を撫で下ろしていた。

 大地が動くと言う常識外の出来事に、多くの元奴隷達が怯えるかと心配していたが、大きな混乱は起きなかったようだ。

 今いる場所が怪魚の背中だと知らされていない者達にとっては、大地が動いている感覚も無いのだろう。

 海を滑るように進む『ライア・イスラ』の動きを感じるのは、前方から流れてくる潮風だけ。

 沈まない夕陽と言う止まった世界に風だけが流れていた。



 大陸側の様子を報告すると、ミスラは即座に拠点を動かす事を決めた。

 丁度ボナクが帰って来ていた事もあり、良い頃合いだと判断したようだ。


 国の混乱に乗じて横領をやらかした人間を拠点に招く事は自分も反対だったので、九郎もホッと胸を撫で下ろしている。


「別に誰も攻め込まれへんとちゃう?」


 と言う龍二のセリフは、ミスラの


「良い噂をこれから流して行こうとしているのに、横領犯が初めての客だなんて幸先が悪すぎます!」


 と言う尤もなセリフで返されていた。


「本当に静かに泳ぐのですね……」


 レイアが感心した様子で感想を述べていた。

 九郎は再びサクラを掲げてドヤ顔を浮かべる。


「うちの操舵手に掛かれば、嵐も高波も屁見てえなもんだ」

「キュッキューキュリョッ!」


 九郎の腕の中でサクラも胸を張って踏ん反り返っていた。

 その微笑ましい姿に場が和む。

 サクラも大分溶け込めているようで、九郎は一人満足気だ。


「んで何処に向かえばいいんだ? 航海士様?」


 頭の上にサクラを乗せ、九郎がミスラに問いかける。

 突然移動する事が決まったが、目的地が他にある訳でも無い。

 このまま大洋にまで出て、再びのんびりするのもありだけどよ……と付け加え、九郎は夕陽を背にして格好を付ける。


「船長の思うがままに……と言いたい所ですが」


 キメ顔を晒した九郎に、ミスラは優雅にスカートの裾を摘まみ、


「アルムへ戻るにはあまりに早急すぎますし……。このまま南下して他国を目指すとしましょう」


 片目を瞑って、次の目的地をふわっと告げた。


 巨大貿易島の発進宣言に九郎の口角が引き上がる。

 建物はまだ建設途中のモノも多いが、一応人を迎え入れられる設備は整っている。

 大海原を股にかける生活の始まりに、否応にも冒険心が踊っていた。


「サクラッ! このままぐるっと世界を回って、ミラデルフィアまで行っちまおうぜ! 覚えてっか? 俺が昔話してた場所だっ!」

「キューーーー!」


 九郎は夕陽を指さし、遅れていた船出の合図を声高に叫ぶ。

 威勢のよい鳴き声と共に、新たな生活の幕が開けた。

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