第254話  指切り


 まだ雪解け間もない街道を数台の馬車が連なって走る。後ろには荷物を積んだ毛の長い牛のような生き物が大荷物を背負って続く。


 九郎達は一路アプサル王国首都、アプサルティオーネを目指していた。

 ミスラの『エツランシャ』で調べた結果、シルヴィア達が現在アプサル王国を旅している事が分かっていた。

 どうやら、アプサル王国の港からケテルリア大陸への船に乗る予定らしい。

 シルヴィアが九郎に宛てた書置きがあり、それには今迄の旅の様子や、これからの予定。九郎に対する想いや愚痴。身を案じる言葉が何枚にも渡って書かれていたそうだ。


 シルヴィア達の目的地がアプサル王国の港町だと知った九郎達は、一度王都に入りそこを拠点に街道沿いの宿を尋ね歩く予定になっていた。彼女達は冒険者として各地で依頼を受けながら、旅をするスタイルを取っていた。当然野宿や寄り道も考えられ、入れ違いに成るのを防ぐ狙いだ。

 王都を拠点に選んだ理由はそれだけでは無い。内情の視察。交易国の開拓ももちろんある。ボナクの任務も、王都を中心にして行われる予定である。


「サクラぁ……」


 御者台の上で、九郎は呟き小指を口に含む。

 鼻孔をくすぐる潮の香りと共に、僅かな旨味が口の中に広がる。


「きめーからやめろっつってんだろ! 後ろからの姫様の視線がこえ-んだよ!」


 御者台に座って馬を操っていたベーテが、眉を顰めていた。

 九郎の仕草が誰かを誘っているようにしか見えないらしい。

 しかしそうは言ってもと、九郎は片眉を上げて口を顰める。折角再会した妹分と離れ離れになってしまった心の隙間は、直ぐには埋まらないのだから仕方が無い。

 小指を口に含んで小さな溜息を吐く九郎も、後ろから聞こえる荒い息遣いは聞こえているのだが……。


「まったく……もう3日も経っていると言うのに、女々しい男ですね」


 頭上からアルフォスが追撃が刺さる。周囲の警戒を終え戻って来たのだろう。


「うるせえっ! しっかり警戒しとけっ、風見鶏!」


 九郎はアルフォスに目で訴えながら嫌味を口にする。ミスラに曲解されたままでは色々危ない。

 いつの間にかアルム公国中に自分とアルフォス達のホモォ漫画が広まってしまう恐れがある。少し仲が悪い様子を見せれば、ミスラも正気に戻ってくれるかもしれない。

 

 なんやかんや言っても、彼等とももう半年以上の付き合いになる。

 慇懃無礼を絵にかいたような態度のアルフォスと、九郎に対して強気な姿勢を崩さないベーテ。喧嘩口調はお互い様だ。

 空気を読めるアルフォスは直ぐに九郎の目論みに気付いたようだ。屋根の上でにっこり微笑み、


「被害に我々まで巻き込まないでもらえますか? 特殊性癖の変質者さん?」


 屋根の上から九郎の顔面を踏みつけてきた。


「てめえ!? 俺のどこが特殊性癖だ! ナズナは……一応理解してくれてたじゃねえかっ!」


 ここまでしろとは言ってない。実際何も言ってない。

 男に顔面をぐりぐり踏みつけられるのは、思った以上に屈辱的だった。

 九郎は眉を吊り上げ声を荒げる。多少思う所があるので、勢いで誤魔化す。


「……それをずっと舐ってるのは、流石の私も引きますよ。ヒト種に拘らない事は知ってましたが……一応妹分の物でしょう? ソレ……」


 アルフォスは眼鏡を押し上げながら、溜息と同時にジト目で九郎の手を指さす。

 九郎の左手小指は、太陽の光を反射してピンク色に光っていた。



☠ ☠ ☠



 3日前。

 ハーブス大陸に位置する巨大国家、アプサル王国の西端の岬。そこから少し離れた海域に到着した九郎は、愛しの妹分との暫しの別れに苦悩していた。

 乳白色の濃密な霧が立ち込め、彼方遠くの大地の影から登って来る太陽の光を拡散し、ぼんやりとした明かりが島を照らす中、

 

「サクラを宜しくお願いしゃっす!」

「一命に変えましても」


 頭を下げた九郎に、畏まったように少女が答える。

 サクラの護衛に選ばれたココ・メロウと言う名の少女だ。


 くすんだような深緑の短い髪。眠たそうな紺色の瞳。耳に当たる部分がヒレのように変化しており、肌は少し青みがかっている。ココは『水妖族セイレーン』と言う魔族らしい。

 目鼻立ちは整っているが、無口らしく多少無愛想な印象も受ける。

 ジト目がそう感じさせるのだろうか。

 頭にはバンダナを巻き、タンクトップに半ズボン。その上から割烹着のようなエプロン。半ズボンなので足しか見えず、少しドキドキする。


 ウィスティアラ号のコックとして、何度か顔を合わせていたが、実はボナクの護衛の中でもトップクラスの実力者だと聞かされ、九郎も驚いていた。しかし今は頼もしく感じている。

 

 なぜなら辺りに漂う濃密な霧は、彼女の魔法に依るものだからだ。

 青の魔法の使い手だと言う彼女は、ミスラと同じく幻影の術に長けていた。

 ミスラのように本物と見紛う虚像を作り出す事は出来ないそうだが、ココの魔法は広い範囲に霧を生み出すことができた。

 何も遮るものが無い海の上。いくら島に擬態していようとも、見知らぬ島がいきなり出現すれば騒ぎになる。それを隠すのに彼女の魔法はうってつけだった。

 本来であればいざと言う時のボナクの逃走を助ける任務を負っていたそうだが、「陛下カクランティウスもいることだし」とサクラの護衛に回った形だ。

 その他にも数人の屈強な『鬼族オーグル』の兵士も残ることになっており、九郎がこの場に残るよりも安心かもしれない。


「サクラもお利口にしてんだぞ?」

「キュゥリョ。キューリョ」


 九郎は脛をカリカリ引っ掻くサクラの頭を優しく撫でる。

 別れの時になり、急に寂しくなったのだろう。

 悲しそうに鳴くサクラを見ると、九郎も後ろ髪が引かれる。

 しかしここで立ち止まる訳にはいかない。待ってくれていた、自分を探して世界中を旅してくれている仲間達と再会する為に、九郎は海を渡って来たのだから。


「約束したろ? それに俺らはいつも一緒だぜ!」


 九郎は精一杯の笑顔を浮かべて、左手小指を前にして片目を瞑る。


「キュゥ……」


 サクラは、大事そうに胸元に抱え込んだ指と九郎の小指とを交互に見比べ小さく鳴く。

 サクラが胸に抱え込んでいるのは、当然九郎の指。今迄であれば、無くても問題の無さそうな内臓や骨を欠片として仲間達に渡していたが、今回はあえて指を渡していた。

 幼いサクラにも理解出来るよう。また見知った部位の方が良いだろうと言う考えてのことだ。

 ただ九郎は少し後悔している。


(今度からサクラの前では控えた方が良いかねぇ? 生えてくるって分かってても、いきなりブチッとやられっと心臓に悪いし、そもそも教育上なぁ……)

「どの口が言うねん。この歩くR18ーGが……」


 九郎の心情に龍二の突っ込みが入る。

 それを無視して九郎は真面目に考え込む。

 指切りな? と言った事が悪かったのだろうか。

 それとも自分の指だと分かり易いよう、サクラの目の前で指を切断したことが裏目に出たのか。

 サクラは「交換」とでも言うように、自分の前足を千切ってしまっていた。

 サクラの前足は再び生えて来たが、意識を繋げたままにしなければならない九郎は、指を再生させる事が出来ない。

 このままではサクラが心配すると慌てた九郎は、サクラの前足を体に取り込み、切断面から生やして取り繕っていた。

 サクラの体表は桜色なので、遠目には人の指に見えなくもない。

 

 全てに納得してくれた訳では無さそうだったが、サクラはしょぼんとしながらも、ココの足を登り腕に収まる。魚の特徴を持つ彼女は、サクラにとっても親しみやすいのだろう。

 物わかりのいい賢い妹分に、九郎の方が心が揺さぶられる。

 少しだけ妹分を取られたような気もしてしまい、九郎の顔がくしゃっと歪む。


「サクラぁぁぁああ!」

「クキュ、キューリョー!」

「いつまで繰り返すんだ? このやりとり……」 


 リオの呆れたような呟きは、九郎の耳には届いていなかった。



☠ ☠ ☠



 サクラと別れてから7日後。

 九郎達は王都の門を潜った。

 道中何度か魔物の襲撃にも会ったが、その全てをカクランティウスが退けていた。

 カクランティウスは道中の路銀を稼がなければならず、隊商全ての護衛を格安で引き受けていた。

 小銭で護衛を引き受け、張り切るアルムの英雄。何かしょっぱい気分になってしまうが、彼は彼で大変そうだ。


 門を潜った一行は、皆アプサル王国の王都に見惚れたという。

 アルム公国も十分に他国に誇れる美しい街並みだったが、ハーブス大陸の殆んどを支配するアプサル王国はその規模が違っていたそうだ。

 中央に天高く伸びる白亜の宮殿。見上げるような外壁。王城を囲むように5色の塔が聳え、それぞれが神殿の役割を担っているらしい。


 アプサル王国でも一際お高い立派な宿。

 その宿を丸ごと貸切り拠点としたミスラは、今後の予定を確認していた。


「嫌や……怖い……」

「何を仰ってますの? アルトリアさんの性格はもう十分承知してるでしょう?」

「んなこと言うたってやなぁ……。ちょっ、心の中で広島弁で脅すんヤメテ! ギャップ萌えとかあらへんで? 母親の故郷の言葉? 知らんがな」


 ミスラの意外な一面がまた暴露される。

 聞こえているのだが……とは口を挟めず、九郎は静かに小さくなる。


「ねえ、リュージ。お願いだよ。二つ隣町に来てるって分かったら、ボクいてもたってもいられなくって……」


 アルトリアの頼み込むような声色。九郎なら二つ返事でOKしてしまいそうな、優しい口調も龍二には今一効果が無いようだ。


「んなもん、王都入ってそっこーで連行されてったあのアホに言えやっ……いえ、言ってくださいよ~。それに俺にも仕事があるし……」

「その仕事はまだ時間がかかりそうだと言ったではありませんか。これほど早く到着するとはわたくし達も思ってもおらず、面会の調整には手間取っておりますの!」

「それもあのアホの所為やん! いや、それに関しては悪う無い。楽できるんはええことやさかい。ただ、もう少し待ってたら来るんとちゃうん?」

「でも、折角近くにいるんだよ? 少しでも早く会いたいって思うじゃん?」

「頭の中ピンクまみれでんなこと言われても……」


 アホアホ言われてムカッとするが、九郎は何も言えない。

 一応声は出せるが、今は大人しくしているのみ。何せ悪いのは自分なのだから。


「現状クロウ様がおられない以上、リュージが最適でしょう? シルヴィアさん達を見つけるのは……」


 ミスラが龍二を説得しようと、根気よく言葉を続けていた。

 彼女が言うように、九郎はこの場にいなかった。

 ミスラの持つ口紅や、アルトリアの持つ盲腸。リオやフォルテに預けてある欠片の一部があるので、いないとも言い切れないのだが、いないことになっている。


「僕達もお手伝いしたいのですが、道中の危険を考えるとまだ足手纏いでしょうから……」

「クロウが抜けてんのは今に始まった事じゃねえけどよぉ……。アホなのは間違いねえよなぁ……」


 リオにまでこう言われる始末では、どうにも出て行き辛い。

 九郎は耐えるしかないのだ。

 九郎はこの状況を、遠くから聞いているのだから。

 拷問室と言う薄暗く血生臭い部屋に貼り付けにされた状態で。


☠ ☠ ☠


「クロウ、どう? 終わりそう?」

「ん~? 今指の爪剥されてるとこ」


 盲腸を通してアルトリアの囁きが響く。

 それに九郎は不甲斐無さで顔を顰めながら、声を返す。


「貴様っ! 痛みを感じていない素振りっ。噂は本当らしいな、芋の英雄!」


 表情はともかく、暢気に独り言を呟いている九郎に、拷問官の上擦った声。

 シルヴィアとの再会に浮かれ、サクラとの再会に舞い上がっていた九郎は、自分の立場をすっかり忘れてしまっていた。多くの外国人が行き交う港町では誰も気付かなかったのだが、王都に入るとなると素性の確認も厳重になる。


 そこで九郎はやっと思い出した。ケテルリア大陸で手配書が回っている龍二と同じく、自分もアプサル王国では手配書が回っていたと言う事に。


 丁度早朝の鍛錬にと一番後ろを走っていた事で、ミスラ達にまで被害が及ばなかったのが幸いだったが、九郎は見事に別室に案内され、そのままドナドナされていた。

 欠片を通してのミスラの謝罪を聞きながら、九郎も自分が迂闊だったと反省している。

 自分の事には全く頓着していなかった九郎が大体悪い。不死者に共通して言える事かも知れないが、九郎も自分の危機には鈍感だった。

 

「釣り餌作ってるの?」

「わかんねえなぁ。よう、おっさん。どっかで会ったよな? ああ、ベルを嫌らしい目で見てたロリコン共に混じってやがった奴! 出世したん?」


 アルトリアの暢気な声に答えながら、九郎は拷問官の中で一番偉そうな人物に語りかける。

 『芋の英雄』と言う名もなんだか懐かしい感じがする。その言葉と顔を覚えていると言う事は、見知った人物なのだろうと当たりを付け、九郎はからかうように嘯く。

 爪は全て剥されていたが、痛かったのは最初の一枚だけで直ぐに慣れた・・・。カパカパ便器の蓋のようになった爪を見るのは、あまりいい気分はしないが今はされるがままでいる。


「小指が欠損しているのだから噂通りの不死では無い筈だ! 次っ! 背中の皮を剥いでやれ!」


 拷問官が金切り声を上げている。

 小指の欠損はサクラの脚が大事なので体の中に仕舞っただけだ。


「つーかさぁ? なんで俺拷問受けなきゃなんねーわけ? おい、後ろの! 皮剥ぎ下手過ぎんだろ? もっと綺麗に捲れねえのかよ? うちの奴等だったらもっとペロンと剥くぞ? ペロンと」


 自分が死ぬ事はありえない。しかし何故拷問を受けなければならないのかが、九郎には分からなかった。

 この国の貴族でもあった雄一を殺した身だが、それがバレているとは考えにくい。あの場で生き残ったのはベルフラム達と九郎のみであり、いくら九郎に恐怖していたとしても、彼女達が自分を売るとは考えたくはない。


(そう言えば、決闘でぶちのめしてたな……。俺がやっちまったことになってんのか? まあ事実だけどよ……)


 以前調べた時には、国王が新たな『来訪者』を求めて九郎を探していたと聞いている。

 しかし同時に結局九郎の濡れ衣――貴族の姫君を拐したという罪が拭いきれず、罪が残ったままだとも聞いていた。どちらかなのかは、今の状況から見ても後者に違いない。


(んじゃ、適当な所でおっんでお暇しますかねぇ?)


 九郎は日焼けした皮を捲るように、人の生皮をベリベリいでいる拷問官を眺め、溜息を吐き出す。目玉の一個は既にえぐられ、自分の状況がよく見渡せる。

 牢獄に繋がれる事を恐れていたのはずいぶん昔の事だ。

 自分の欠片を仲間に預けてある九郎は、死体を残したまま復活出来る。ある程度死にそうな傷を負ったところで、様子を見て細胞転移し、その後顔を隠して行動すれば問題無いだろう。

 動きを制限されるのが少し煩わしいが、死んだ者を追いかける事はすまい。

 そう考えて九郎ははたと顔を歪める。


「なあ、おっさん。大体どんくらいしたら人って死ぬんだっけ?」


 今や、やっきになって九郎の背中に焼き鏝を当てている拷問官に尋ねる九郎。

 その言葉に拷問官が信じられない者を見るような目で、九郎を見やり、


「ふ、普通であれば今の拷問で発狂死する者もいるがなっ! しかし貴様は不死と目される『芋の英雄』! 本物であればかなりの時間を耐えるだろう! ほ、本物であればだがなっ!」


 弱気なのか強気なのか、良く分からない表情で口の端を歪めた。


「え~……メンドくせえ……」


 九郎は拷問官の言葉に心底嫌そうに顔を歪める。

 簡単に死んだら偽物と判断されると聞いては、おいそれと死ぬわけにもいかないではないか。

 いっそのこと死んだと思わせて、綺麗な身でシルヴィア達と再会したいと思っていたのにとんだ計算違いだ。

 シルヴィア達が近くまで来ていると言う事で、九郎も内心逸っている。

 早く会いたい。抱きしめたい。

 しかし罪人である自分の所為で、彼女達まで嫌疑を掛けられることは避けなければならない。


「アルト~。ちょっと時間かかりそうだわ。そっちの交渉はどうだ?」


 九郎は欠片を通してアルトリアに再び囁く。


「う~ん。もう少しで行けそう……かな?」


 アルトリアの苦笑いが伝わってくる。

 今シルヴィア達は近隣の街まで来ているらしい。おおまかな居場所であれば、宿帳からミスラが当たりを付ける事が出来る。しかし、九郎がいなければシルヴィア達の顔は分からず、探し出すにも時間がかかる。

 なまじ全員が腕利きの冒険者であり、フットワークが軽いので、絞り込んだと思っていても別の街に向かう可能性もある。

 だが広範囲の名前を知る事が出来る龍二であれば、人探しは容易い。

 視界をアルトリアの欠片に移すと、どうやら交渉は佳境に入っているようだ。

 

「魔導書の事……ユーリ達にばらしますわよ?」

「なっ!? 卑怯や! そんな脅しばっかり使って恥ずかしいとは思わへんのか! え、え、ええでぇ? やったらええやん。どのみち勝手に着いて来とるだけやしぃ。あいつらにも打算がいっぱいやしぃ。それにどうせでけへんのやしししぃ。アニキにも言うからな? どっちの方が正しいゆうやろうなぁ?」


 龍二が悲鳴に似た啖呵を吐く。言うも何も聞こえているとは言い辛い雰囲気だ。

 またぞろ何か弱みを握られているようだが、何を意味するかまでは分からないのが救いだろうか。


「くっ……。開き直るとは……ならばっ……仕方ありません!」


 自分が不利な状況を悟ったのだろうか。ミスラが少し顔を歪めて、龍二の耳元で何か言う。

 ミスラに預けた欠片を通しても聞えない程小さな囁き。


「ほ……ホンマか?」

「え、ええ……。恥ずかしくて顔から火が出そうですが、止むを得ません……。続刊があるのは分かっていたでしょうし、貴方も気になるでしょう? 魔法少女ゆりゆりふぁいぶの成人……」

「みなまで言うたら協力せえへんで!? ま、まあええわ! 今回だけはそれで引き受けたっても……」


 その囁きに龍二の目に光が宿っていた。

 今迄さんざん嫌々言っていたのが嘘のように、だらしない笑顔だった。

 何を対価に示されたのか、九郎は何となく感付き――今度借りようと心に決めた。

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