第6話 気象魔法士、ただいま参上 !~コヨミ姉
人はいつも探している。それは生きるためなのか、死を見つめるためか、終わりのないその戦いがいつから始まったのか、それは誰も知らない。
この世界に暮らす私たちが気付いたときにはすでに始まっていたもの。
そんな戦いを終わらせるには何が必要なのだろう。
……中略……
人は、いつも探しているのだ。……その答えを。
「ふうん、魔法書が読めるというのは、やっぱりあんたは魔法使いなんだね」
感心しているのは、普通人ノーマルの友だちのマナミ。マナミ・フレグランス。
「でも、魔法が全て発動しないんだから、魔法使いって言うのも変だよ」
突っ込んでくるのは、魔法使いの友だちのユメミ。 ソノ・ユメミ・ヨーダンス。
「ハハハ、ほんと…変だよね」
そして、わたしはコヨミ。 ワガ・コヨミ・ワダンス。
魔法使いの家に生まれながら、魔法が全く発動しない魔法使い。
それは、わたしの
普通人の学校では、その魔法として発動しないはずの波動がなぜか発動してしまい、それに酔う者が続出したということ。……って、なんで?
魔法使いの学校に編入しても、その講義の意味は理解できるのだが、実践が伴わないため、
最近、
わたしは、ずっと魔法が全く発動しない魔法使いだったから、このまま埋もれていくんだって思っていた。
でも、今こうして
その魔法は、魔法使いの学校に編入して初めて
突如として、わたしの視界が右上から左下へと流れた黄色い何かで覆われた。
透明だけど見透かせない……、大きな大きな旗のようなそんな黄色い布みたいな何か。
一瞬だけ、わたしの視界を覆って、地面に落ちたはずだった。
その何かで覆われた世界には、わたしだけしか存在していなかった。
ユメミや級友たちも存在していなかった。黄色い視界とわたしだけ。
黄色い視界が無くなってキョロキョロとするわたしに、ユメミが不思議そうに言った。
「コヨミどうしたの。何か、落とした・・・・の?」
「落ちてきた・・でしょ。黄色い布か何かが……」
キョトンとしたユメミは、わたしの額に手を当てた。
「熱は無いみたいだね」
彼女によれば、話ながら歩いていて、急にキョロキョロし出したというのだ。
級友たちも頷いている。
「変なの」
わたしは不思議な気持ちのまま、みんなと歩き出した。
その時は何とも思っていなかった。
だって、わたしには、魔法は近くにあって、遠くにあったものだったから。
初めてのそれは、いきなりだった。
「コヨミ、
そう言って、エト・ランジェ・エドッコォ様と出掛けてしまった。
ご子息で弟と同い年のエト・セトラ・エドッコォとわたしが留守番。
だけど、わたしは、弟のウェーキのイタズラにほとほと頭に来てしまった。
魔法使いの家族の中でも魔法が全く発動しない魔法使いだったわたしにとって、天敵と化していた。二つ年下の弟。水の魔法が得意で、いつも、ビチャビチャにされる。
今回もそうだった。小さな水鉄砲で、
「も~、えっちっちなんだから」
わたしよりも小さい体を活かして、足下に潜り込んでくる。狙いは分かっているのだけど、わたしの魔法は未発達で、出来るとしたら蹴り技しかない。
「きゃん、冷た~い」
凄腕のスナイパーのような一撃が…下腹部を直撃。
殺す。
ふと、湧いた感情が、初めての魔法を成立させた。スカートの中に雷鳴が轟いた。
「わぁー!」
ウェーキが転がり出てくる。転がり出てきた後を追いかけるように、稲光がチロチロとスカートの中から舌を出す。ウェーキを威嚇しているのだ。
その時そこまで、ずーっと本を読んでいたセトラがなぜか拍手をしていた。
「コヨミ姉、やったね。初魔法、おめでとう」
「?」
訳が分からなかった、何でセトラは喜んでいるのだろう? ウェーキの悪戯を止めもしなかったのに。
「ウェーキ、やったな。作戦通りだったぞ」
「セトラ、ありがとう。姉ちゃん、やれるじゃん!」
その二人の会話で気がついた。あんたたち、知っててやったんだね。
やられたよ。チクショウー!
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