広がる世界。
あの後チームラボのアスレチックみたいなところで二人(一人)で思う存分遊び、満足した俺たちはショッピングモールでお昼ごはんを取ることにした。
店員さんは見た感じ熊井さん一人なので一人席に案内しようとしたのだけれど彼女は頑なに二人席に拘った。
些細なことだがほんとうにデートしているみたいで嬉しかった。
お昼ごはんも食べ終わり外に出る。
「次の目的地はこっちです!」
彼女の中では次の目的地が決まっていたらしい。
なんにも考えていなかった、かつ、お台場の情報が極端に少ない俺としては助かるしさすがだなと思った。
「次のところはテレビかSNSで見てからずっと行ってみたかったんです」
彼女に連れられるように俺は歩みを進める。
「ここ、風すごい強いですね」
向かう途中大きな橋を渡るときに彼女は飛ばされそうになりながら話しかけてきた。
今日の熊井さんの格好は淡い軽そうなロングスカートにブラウスだ。
何が言いたいかと言うと
そうパンツは見えない。
台風のような風が吹いている橋の上でさえもバンツは見えなかったのである。
これは由々しき事態である。そろそろ物語的にも水着回のようなテコ入れ回をしないと読者が離れていってしまう。
俺は願う、このロングスカートが普通パンツが見えることが絶対ないロングスカートが上昇気流に巻き上げられてくれと。俺の為ではなく、読者や視聴者の為に!!!
その瞬間横からは吹き付けて来ていた風が止み。ものすごい勢いで下から風が吹いて来た。
熊井さんはさながらマリリンモンローのようなポーズを取らざるをえなかった。
俺の位置からではパンツは見えなかった。
しかし位置によっては、画角によっては見えたのではないだろうか。あとは任せたよアニメーターの諸君……。読者の皆……。バタリ……。
まるで後の世界を仲間に託した勇者のように、最後の任務を遂げるために進む主人公の盾になる仲間のように俺は力尽きた。
「今のすごかったですね、びっくりしましたよ」
彼女の言葉を聞いて俺は力尽きていないということに気がついた。
その後は特に何かあるわけでもなく雑談をしながらのんびり二十分ほど散歩を楽しんだ。
「ここです!」
連れて来られたそこは倉庫街のような場所の一角だった。
大きな建物の入り口は小さく、そこには『small worlds TOKYO』と書いてあった。
「私ミニチュアとかそういうの好きで来てみたかったんです。栃木の鬼怒川温泉の所にもミニチュアの施設があるらしいんですけどね」
中に入ると小さなミニチュアの世界が広がっていた。
宇宙空港で過ごしている人や、中世の様な世界で日々を暮らしている人、飛んでは戻ってくる飛行機。
そんな実際にはないけれどありそうな世界がそこにはあった。
「この小さい世界を見てるとこの中でも色々物語があって、そういうのを見て想像したりするのが結構好きだったり楽しかったりするんですよね」
彼女はそう言いながら一生懸命ミニチュアの中の世界を見ていた。
彼女の目に映る世界にはどんな物語が広がっているのか、どんな物語を創っているのか俺にはわからない。
しかし目を輝かせてそれを見ている彼女は楽しそうだった。
俺も楽しかった。
ちなみにこの『small worlds TOKYO』にはヱヴァンゲリヲンシリーズの第三新東京市がミニチュアで再現されており、オタクの俺からしたらテンションダダ上がりだったのは言うまでもない。実際動いている街を見るのはすごい!もう一回ヱヴァンゲリヲンを見たいと思ったことも言うまでもない。
楽しかったミニチュアの世界も終わり、日も暮れて夕方になっていた。
「あと、考えていた予定は一つだけですが末松さんは何かやりたいことはありますか」
彼女にそう言われて俺は必死に考えるが特に浮かばない。
というよりここら辺の地理がよくわからない。
なんならスマートフォンも無い俺にはここがいまいちどこかもよくわかっていないという有様だ。
しかし頭に思い浮かんだことはある。
ありきたりでロマンティックではなく、理想的なデートではないかもしれないけれど俺は言う。
「海を見ながら歩きませんか?」
「そうですね。じゃあそうしましょうか」
彼女はそんな当たり障りない提案をとても嬉しそうに受け入れてくれた。
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