それでも俺はアニメがみたい!
鬱金香
たどりついたらいつも暗闇
死ぬにはまだ早いかなと思いました。
あー死んだのか。
実際どうでもいい。何もない世界。
成績不良、就活失敗。まぁこんなもんなのだろう俺の人生は。
そんな投げやりなことを考えている自分はもはや救いのない人間なのかもしれない。
世の中にはもっと大変な人がごまんといる。
そんなことはわかる。
だが自分の現状を考えるとこれしか選択肢がなかったのも事実だと思う。
大学に入る前は成績優秀、優良生徒、可愛い彼女持ち、期待の新星、上場企業入社、エリートコースを駆け上がる予定であったがまさかひとつも出来ないとは流石に考えてもみなかった。
童貞、貯金なし、就活失敗、趣味といえばアニメを見て上から目線の作画がどうとかネットで文句たれの日々。
まさに最高と言えるクラスの負け組だ。周りにはもちろん俺が望んだような人生を送っているやつもいる。
だがそれは幸せなのか?そんな言い訳をしつつ22年も生きてきたのだから自殺もするだろう。
母さん、父さんゴメン。親孝行も出来なかったわ。様々な思考を巡らせているうちに頭にふとよぎった。
「あっ!あのアニメ、日曜最終回なのに見てねぇ」
説明しよう!
あのアニメとは今期最高にして最良のアニメ。
女の子たちがアイドルを目指し奮闘するという神アニメ。毎日死のう、死のうと考えていた俺を毎週、来週までは生きようと考えさせてくれたタバコに並び第二の命の恩人といえるものだ。
なぜそんな大事なアニメを忘れて自殺なんぞしてしまったのか。
「今回はご縁がなかっ……」
その言葉を聞いた瞬間に思い立って近くのホームセンターに縄を買いに行ったのは覚えている。
まさに衝動的!大概アニメの主人公も衝動的に行動するものだ。
しかしよく考えてみたら来クールも目星をつけていたアニメが何個かあった。
なんという失態。これだから衝動的に行動するのは嫌いだ。衝動的に行動して成功するのはアニメの主人公補正があるからか。
そんなことを考えながらボケーとしていたが俺は一つの結論にたどり着いた。
「いや、まだ、死ねねぇ」
やっぱり最終回見たい!来クールも気になっているのも、あれの二期もある!死んだことを後悔するのは後だ。とりあえず最終回見る!
そう思い俺は何もない暗闇を走り出した。体があるのかはわからないがとりあえず生前の走っているという感覚に近いことをしてみた。
◇
走り始めて何時間過ぎた?もうすでに日曜日は終わっているかもしれない。
俺はいまだに暗闇の中を走り続けている。
このままここから出られないかもしれない。なんか昔ネットで見たことがある
『自殺した魂は永遠に逃れることができずに彷徨い続ける』
あの時はそんなはずはない、死んだら
『 無 』
なんだよ。死のノートのアニメで見たし。などと思っていた自分を殴り飛ばしたい。
その瞬間目の前に一筋の光が……!?
などというアニメっぽいことは起こるはずもなく、俺は不貞腐れたように寝転がり目を瞑った。何回も言うようだが体という概念があるかわからないので生前の感覚を頼りにしたのだが。
少しの間目を瞑りながら寝転がっていると先ほどとは違う感覚になっていることに気づいて目を開ける。いつの間にか俺は暗闇の中から出られたようだ。
目が慣れてくると、ここは俺の部屋のリビングだということを把握することができた。
たぶん隣の寝室で首を吊っている俺がいるのだろう。怖い。扉を開けるのはやめておこう。
そして気づいたことがある。地面には立っているのだが壁など、ものには触れないらしい。
これは俺が持つ幽霊のイメージに合致する。少し使ってみたがこの体は使いこなせば便利そうだ。
この体さえあれば女子風呂に入り放題、人生の勝ち組、合法的セクシャルハラスメント、幽霊特権。そんな中学生のような考えしか出てこないなんて我ながら恥ずかしすぎる。
しかし重要なことに気が付いてしまった。
「この体じゃ、テレビの電源入れられねぇじゃん」
これは一大事だ。なんの為にこの腐った現世に戻ってきたのか。
色々考えた挙句、こうなれば宿主を探してそれに背後霊として取り憑くしかないという結論に至った。とりあえずあのアニメを見ている人間が最低条件だろう。
欲を出せば女の子がいい。女の子なら女子風呂に忍び込む必要もないのだ。
寝顔をずっと見てても問題ない!素晴らしき世界。まさに現世の桃源郷。
くだらない妄想をしながらしかたないので町へ繰り出すことにした。
今は俺が自殺した時からほとんど時間がほとんど経ってなく、日付が変わった後の午前二時。深夜だが、とりあえず宿主探しの旅に出発だ。
頭の中であの有名な宝くじ勇者が世界を救うRPGゲームのテーマソングが流れテンションが上がった。
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