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「ふーん。嫌々でもつけてあげるくらいの相手からの贈り物って事ね」

「そういうわけでもないけど」

 リンはただの悪友だし。男だし、おっぱい付いてるけど。

「あなたはとてもシンプルなものしか持たないと思っていたわ」

「それは正解。基本的にはシンプルな物しか持たないよ」

 スマホのケースもバッグも、基本は無地。カラーで遊んだりはするけど、そっちのセンスは芳しくないし。無難な物しか持てない。

「それなのに、それはちゃんとつけるのね。明らかに浮いている気がするけれど」

「まぁそう言わないでよ。おじさんが持っているものだし」

 志麻から見たら三十路も立派なおじさんだよなぁ。

「私ならもっとあなたに相応しいものを贈るのに」

「え?」

「あなたが恥ずかしいと思わないキーホルダーだって選べるわ」

 そう自信満々に志麻は言う。もちろん、その気持ちは嬉しいけれど。

「だめ、志麻ちゃんからはもらえないよ」

「・・・どうして?」

「俺よりもうんと年下だから」

「子供だから、だめだって言うの?」

 子供だから・・・そう、子供だからだめ。いい大人が未成年から贈り物をされるなんて。

「バレンタインの時は受け取ってくれたじゃない」

「それは・・・イベントだったからね。でもあのチョコ凄く美味しかったよ」

 そう言った後志麻の顔を見ると、眉をひそめて言い表せない表情をしていた。

「あなたが嫌ならやめる。けれど子供だからって理由じゃ納得できない。私だってもうすぐ二十歳になるのに」

「志麻ちゃん・・・」

「・・・今日はもう帰る。また来るわ」

 視線を合わせないで身体を反転させた志麻は一度も振り返らずに駅の方へ消えて行った。

「・・・」

 きっと困った顔をして志麻を見ていたに違いない。あの表情の志麻は初めてだった。例えもうすぐ大人になろうと彼女はきっと俺の中では変わらず、ずっと少女のままなんだろう。

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