落し物、贈り物
カゲトモ
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「え?」
「これ、落とされましたよ」
突然声を掛けられて振り返ると、スーツ姿の男性がキーホルダーを手のひらに乗せて微笑みかけていた。以前リンがくれた、ハイブランドのものだけれど微妙にダサいキーホルダー。鍵につけていたのに、偶然取れてしまったみたい。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ」
男性は俺が受け取ったのを確認すると、一つの笑顔だけを残して足早に去って行った。
どこかの営業だろうか。急いでいるだろうにわざわざ拾ってもらって申し訳ない。こんなダサいキーホルダーを・・・いや、失くしたらリンが煩いし助かったかも。
「それがあなたの趣味なの?」
「ぅわっ」
手のひらで遊んでいたキーホルダーがまた落ちる。突然後ろから来るから驚いただろ。
「さっきも落としていたのに、どれだけ落とすのよ。どんくさいのね」
「え、見てたの?」
「えぇ。あなたのポケットから落ちる時からね。あの人が拾わなければ私が拾っていたわよ」
「そ、そう、ありがと」
落し物をしたのが恥ずかしいとかじゃなくて、どちらかと言うと志麻にこれを見られたって事の方が・・・十九歳の感性にはこれはどう映るのだろう?
「私はこれ、可愛いとは思わないけれど」
「あ、うん」
なんてバッサリ切られる。だよねー、俺もそう思うもん。
「それなら、なんで付けているの?」
「なんでって、まぁ貰い物、だからだよ」
プレゼントをするのが好きなのに使ってないと怒るんだよなー。まぁ贈った本人としては使って欲しいから贈っているんだろうし、使っていなかったら怒るのも分かるけど・・・もうちょい持ちやすいデザインにしてくれたらなーとか。しかもプレゼントを沢山贈ってくれるものだから溢れるんだよなー、なんて悩み、贅沢すぎるよな。言ったら怖いから全部有り難く頂くけど。
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