【エタり供養企画】シン・ウナギネード【続きはありません】
@dekai3
序章 ~レプトケファルスと少女の出会い~
プロローグ 深海ノムコウ
20××年 7月22日 AM02:20 太平洋西マリアナ海嶺
――『我等は呼ばれた』
深く、暗い海の底に、重々しい声が響く。
――『我等は乞われた』
ここは日本の南側に位置する西マリアナ海溝。
水深6000mにもなる海底には月の光など届かず、海の中は何も見えない漆黒の闇で覆われている。
――『我等は求められた』
バチィ
その闇の中で一つ、弾ける音を出しながら、眩しく輝く白い帯が産まれた。
――『この世に住む、全ての
産まれたばかりの白い帯は深海の底をたゆたいながら、鼓動の様に点滅を繰り返す。
ちなみに、ムチンというのは動物の皮膚から分泌される粘着性の物質であり、鰻やなまこのヌルヌルの事だ。
このヌルヌルは衝撃や突起から体を守るだけでなく高度な保水性をも併せ持ち、皮膚の表面を乾き難くしてくれる魚介類にとってとても重要な物質である。
尚、動物の体液は基本的にこのムチンが含まれているので、魚介類だけでなく哺乳類もこのムチンの恩恵を与っている。
体から出るヌルヌルと言えばちょっとエッチな物を想像するかもしれないが、ムチンは胃液や鼻水や目の表面の保水にも使われているのでエッチなだけではない。
だが、勿論エッチな時に出る液体も体液なのでちゃんとムチンは使われている。安心して大丈夫だ。
ピカッピカピカッ ピカピカピカーー!!
暫くすると、淡い点滅を繰り返した白い帯が一層の輝きを放ち、大きく円を描くように海面へと昇って行く。
漆黒の闇を駆け上がる白い螺旋の軌跡。
それはまるで、ルーベンスの絵に感動して死した魂を天に連れ去る、天使の如き神々しさ。
――『眷属を虐げし、愚かなる者達へ』
白い帯は海面へと到達すると、そのまま円を描く速度を上げ、光輝く大きな輪となる。
――『正義の鉄槌を下し、今一度我等の世界を』
光輝く輪は段々と光量を上げ、海上だけでなく海底をも照らしだし…
――『『『我等は目覚める。我等を必要とする怨嗟の声によって』』』
バチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィバチィ
多量に重なる声と破裂音と共に海底に無数の白い帯が産まれ、その全てが螺旋を描くように海面へと登り、幻想的な光の渦を作る。
海底から産まれた光の渦は海中を昼間のように照らし出し、通常ならば光の届かぬ深海の姿が顕わになる。
底にあるのは無数の鰻の骨。
今まで何億、何兆もの鰻が積み重ねてきた命の証。
ここは鰻の産卵地である深海の奥地。
鰻は毎年ここで産まれ、海流を辿って日本へと行き、大人になってから底へと還ってくる。
これは何万年も続いてきた流転の儀式の残滓。
しかし、近年の鰻ブームによりその流れは断ち切られ、戻る事叶わず、かば焼きにされて散って行った者達が怨嗟の声を挙げたのだ。
その声は眠っていた英霊の鰻達の魂を呼び戻し、光り輝く白い帯として蘇らせた。
特にコンビニやスーパーで売れずに廃棄処分された鰻達の恨みは深い。食べ物を粗末にするのはそれだけで悪である。
ゴォォォォォ!!! スゴォォォォォォォォ!!!! スゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
やがて、鰻達の魂で彩られた光の渦はその範囲を海上へと伸ばし、唸り声にも似た音を発しながら海水を巻き込み、とてつもなく巨大な竜巻へと進化する。
その姿はまるで、海上に建てられた、巨大な光の柱の様だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます