意外な告白
やっぱりどこか疎外感を感じる。
二か月の時間差というものがこれほどまでに人間関係を構築してしまうものなのかと改めて感心する。
俺の周りには休憩時間になっても誰もいない。話しかけてさえ来る人はいない。
いくつかのグループに分かれてしまった教室の中で、俺は一人で小島にでもいるみたい…。
「 滝川君も話そうよ 」
「 え!? 」
目の前の椅子に腰を下ろした黒髪を揺らす女の子。
学校で初めて会った同級生にしてクラスメイトはいきなり目の前に顔を近づけてくる。
そんなに近いと、俺も男だし勘違いが…。
でも浮いてる俺に声を掛けて来てくれるほどやさしい子だってことは嫌でもわかる。
どちらかというと人気者の集まってるグループで楽しく話をしてたこの子は、俺のような奴を放ってはおけないのだろう。
「 いや、遠野さん。気遣ってくれるのは嬉しいけど遠慮しておくよ 」
「 えぇ!! なんでぇ!? 楽しいよ? 」
なんだろう本気でガッカリしてるような気がするんだけど…まさかな。
「 ごめん。本当にいいよ 」
「 う~ん。気が向いたら声かけてね!! いつでも歓迎だから 」
「 あ~…うん。気が向いたらね 」
彼女はそれまで話していたグループに何事もなかったように戻ていった。
それからたびたび彼女は俺の前に現れるようになった。
そんな日が続いたある日の昼休み。俺は教室から逃げるように一人屋上に来ていた。
グループに入っていない俺にはどうしても長い休み時間は時間をつぶすことも辛くなる。それなら一人で静かなところで寝ていた方がいい。
空はこんなに青くて広いのに俺は一人か…。
「 たっきが~わくん!! 」
「 うおぁ!! 」
横になった俺の顔と空の間に、突然遠野さんの顔が表れる。
「 ビックリした!! 」
「 いやこっちがびっくりだよ!! 」
共に胸を押さえるようにしている様子がなんかおかしくて笑ってしまった。
そのおかげかその場に和やかな空気が流れる。
体を起こした俺はそのまま端まで歩いて鉄でできてる柵に外を見るようにしてもたれかかった。
もちろん女子と話すことに恥ずかしさもあって、顔を見られないようにするためだけど。
「 こんなところで何してるの? 」
遠野さんも俺と同じように歩いて来て外を眺めている。
「 う~ん。居場所がなくてさ 」
「 なんで? 」
「 なんでって…。ほら、俺と特別仲がいいやつとかまだいないからさ。なんか、教室にいると一人を実感するって言うか 」
「 ふ~ん、わかんないこともないけど…でも、私がいるでしょ? 」
「 え!? 」
言葉を交わしてるけど顔は外を向いたまま。だからそう言っている彼女の顔は見えていない。
「 どうして俺なんかに優しくするんだ? 何も得することないだろ? 特に君みたいにあのクラスでは人気ある人達のグループに居るんだから 」
「 人気なんてないよ 」
いやいやいや。クラスの男子がヒソヒソ話してるの聞こえたけど、遠野さん君はクラスでも一、二を争っていて学年でも五本の指に入るらしいぞ!!
これが人気者ゆえの無自覚というやつか。
「 何で俺なんかを? 」
「 う~ん。言えない 」
「 俺の事が好きなの? 」
そんな事言うつもりじゃなかったんだけど…。
俯いた遠野さんに視線を向けたら、彼女は首から顔までを真っ赤に染めていた。耳までも真っ赤だ。
一瞬で悟る。
[ やっちまったな ]
完全に嫌われるパターンだ。もうわかっている。
この先は「キモイ」とか「ウザい」とか言われて害虫みたいな扱いをされるんだ。
そしてクラスに広まり、学年に広まり、学校中に広まる。
俺の高校生生活は今まさに終わりをとげたのだと。
「 そ、そうだよ 」
「 え!? 」
小さい声が聞こえて聞き返した。
こっちを振り向いた彼女はなおも真っ赤な顔をしたままで、それでも頑張って言います!!って態勢になっている。
「 そう!! 私は滝川君が好きなの!! 」
屋上に響いたその声は、なんの用意もしていなかった俺の心に見事に突き刺さった。
二人しかいない屋上に、新緑の匂いが混ざる風が二人を優しく包みながら吹きながれていった。
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