俺と私の最後の恋

井戸川レン

プロローグ

俺はあの時からあの子の事が好きになった。最初は全く喋らないし、しかもいじめに遭っているような子だった。けれどあの時教室の扉を開けた瞬間、風に揺れる髪のあの子が本当に美しく見えた。

「おーい。翔弥、部活終わったから先に帰ってるぞ」

「先に帰っててくれ。教室に忘れ物をしたから取りに行ってくる」

「わかった。早く取ってこいよ」

俺は一階から三階まで急ぐように階段を走って教室まで行った。教室に着き扉を開けた瞬間に外から風が吹いてきて、そこに立っている女の子は風で髪が揺れていて、俺は、その子に一瞬で恋に落ちてしまった。

好きになってしまった女の子は、北條菖蒲と言って、どこにでもいる普通の高校生だ。

「よう。北條さん」

「あぁ。浅野君。どうしたの」

「教室に忘れ物したから取りに来た。北條さんは?」

「私はただ教室に残っているだけ」

「何で残っているの?もう下校時刻過ぎているのに」

「それは」

北條さんは少し戸惑っているように見えた。

「北條さん何かあったの?」

「私の机の上に悪口が書かれているの」

「どんな悪口なの?バカとか?」

「うん。そうだよ。私いつも皆にいじめられてて、朝来るといつもこうだから」

北條さんは何だか辛そうな顔で俺に言ってきた。

「そうなの?」

「うん」

「そんなの許せない。俺も消すの手伝うよ」

「えっ。何で手伝ってくれるの?私なんて放っておけば良いのに、浅野君までいじめられるよ」

「大丈夫。いじめられたらやり返せばいいし。それと何でって、放っておける分けないじゃん。北條さんだって、辛いことぐらい分かってる。だから助けるんだよ」

「こんな私でも助けてくれるの?」

「当たり前でしょ」

北條さんは俺の目の前で、グスッ グスッと目に手を当てて泣いていた。本当に彼女は辛いことがたくさん合ったと改めて分かった。

「浅野君。ありがとう。こんな私を助けてくれて」

「いいんだよ。何かあったら俺に遠慮なく言ってよ。守ってあげるから」

「浅野君。ありがとう。浅野君のお陰で少し勇気が出たよ」

「そう。それなら良かった」

俺は人を助けるという行為は自分や人に取って嬉しい事だと改めて分かった。

この恋は、俺にとって最初で最後の恋だ。



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