第2話
ーーーーーーピピピッピピピッ
ベッドの脇に置いてある目覚まし時計が鳴り、瞼をゆっくりとあけた。
でも、まだ瞼を開けただけで他の体はピクリとも動かさない。
頭の中の脳がまだ覚醒していないのだ。
(まだ・・・7時にもなっていない・・。)
視線だけを向けると7時20分前。
本人としては後10分ほど夢の中へと入りたい気持ちである。
(後・10分・・いや・・30分・・・・・。)
「アオイーーー!起きろ!」
「うあぁっ!!」
「朝ごはんできているんだ!早く顔を洗ってこい!」
「・・・はーい。」
これ以上寝ていると叔母さんに怒られる。
叔母さんは怒ると怖い。
以前、朝起こされてもスルーをしたら部屋に乗り込んで来てゲンコツをもらった記憶がある。
あの時の顔と来たら鬼のようで・・・想像したくもない。
(起きよう・・・。)
ゆっくりとベッドから起き上がり、着ていた灰色のスエットを脱ぐと壁に掛かってある紺色のスーツを着た。
うん、サイズはピッタリ合っている。
やっぱり新しいスーツは、気持ちも切り替えられるからいい。
それに、やる気も出る。
「アオイーーー!!」
再度、叔母さんの声が聞こえた。
これ以上、待たせるとゲンコツがとびそうだ。
「今、行きまーす。」
急いで机の上に置いてあったカバンとメガネを手にとって叔母さんがいる一階へとかけ降りた。
******
「おはよう、アオイ。朝ごはん出来てるよ。しっかり食べなさい。」
「・・・おはようございます、アケミ叔母さん。」
一階に降りると、喫茶店になっていてキッチンを見るとアケミ叔母さんがコーヒーを入れている最中であった。
そして、そのままゆっくりとカウンターに進むとアケミ叔母さんが作った朝ごはんが置いてある。
喫茶店で置いてありそうなモーニングセット。
カリカリに焼いたパンにスクランブルエッグ。
サラダにソーセージがついて、とても美味しそうだ。
「はい、コーヒー。」
「いただきます。」
叔母さんが入れてくれたコーヒーを飲むと、今度は鞄の開けスッとあるものを取り出し、無言でそれのキャップを開けると一気にごはんの上にかけ始める。
「毎日思うけど辛くないの?それ。」
「普通に美味しいですけど、いりますか?デスソース」
「いや、いいわ。見るだけで辛そうだし・・・」
「そうですか。」
色鮮やかだった朝食がみるみるとデスソースの色に染まっていく。
他の人からみたら異常の量だと思う。
でも、この量はアオイにとって普通で、むしろ量が足らないなと思う時だってあった。
一応説明をしておくがデスソースはハバネロを使ったソースであり、けして大量にかけるものではありません。
そして、お皿全体にかけ終わると瓶をテーブルに置き他の調味料をかけずにそのまま食べ始める。
ーーーーーチリン
「やぁ、アケミさん。」
「あら、いらっしゃいシンさん。」
「モーニングセットを貰うよ。」
「卵はいつもの目玉焼き?」
「あぁ、お願いね。」
アケミ叔母さんがやっている喫茶店は、朝7時から10時までの3時間、モーニングセットを出している。
メニューは僕が食べている物と同じであるが、卵の調理方法はお客さんの好みによって変えていて、それが密かな人気を呼び、今では出社するサラリーマンが通うほどになっている。
因みに今、入店したシンさん。
アケミ叔母さんからの情報では、食品関係の会社に勤めいるらしく、奥さんと高校生の息子がいるらしい。
この喫茶店には3日に1回には来てモーニングセットを頼む。
「また、見るからに辛そうだね・・・それ。」
「オススメですよ?デスソース。」
「朝から辛いのはちょっと・・・。」
(そうなに辛くはないと思うけど・・・。)
コーヒーを飲みながら、時計を見るともうすぐ8時になろうとしていた。
本当に時間がすぎるのが早い。
これ以上のんびりとしていたら遅れてしまう。
隣の席に置いておいた鞄をもって木製の扉に向かっていく。
「ごちそうさま。アケミ叔母さん、僕もう行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
扉についているチリンという鈴の音色を聞きながら、僕はこれから始まる日々の第一歩を歩き始めた。
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