第2話

〜前回までのあらすじ〜

オンラインゲームをプレイしていたキタキツネは、あるアイテムをダブルクリックした。眩い光に巻き込まれた先は、なんとゲームの世界だった。

かばん、博士、タイリクオオカミ、ヒグマの四人も何故かゲーム世界に飛ばされてしまうのだった...

ーーーーーーーーーーー


一応この世界を知っているであろう

キタキツネを先頭にして進んだ。


「あっ、この先モンスターがいるから。気を付けてね?」


「も、モンスター...」


かばんは声を震わせた。


「心配するな。セルリアンハンターがいるんだ。モンスターごとき楽々に...」


「なあ、ヒグマ。いつも持ってるアレはどうしたんだい?」


タイリクオオカミに指摘されヒグマは

確認する。


「武器ならここに...、

あれ?...な、ない...」


ヒグマの顔が青ざめた。


「ふふっ、いい顔頂き」


小さな声で呟いた。


「そう言えばかばんの背負っていた白いヤツもないじゃないですか」


「アレ?やけに肩が軽いと思ったら...」


「みんな寝ていた時に、持ってなかったからだよ。きっと...」


キタキツネは言った。


「もし強い奴が来たらどうすればいいんだよっ...」


ヒグマは頭を抱えた。


「そんなのツメで倒せばいいじゃないか。想像力を働かせなよ」


少し小馬鹿にした口振りでタイリクは言った。


「そ、そそ、そんなのわ、わかってるわ!」


取り乱したようにそう言い返した。


「みんな、アレがモンスターだよ」


キタキツネが指を指して言ったのは

白く柔らかそうな産毛を持ちゆっくりと動きながら飛び跳ねるモンスターだった。


「何ですか。もっとデッカイのが来るかと思ったら。あんな弱そうじゃないですか」


「博士、油断は禁物だよ!ああいうのが初心者にとっては1番危険なんだよ!」


「あのー、もし、モンスターにやられたら、どうなるんですか?」


「幽霊になるよ」


かばんの質問に緊迫した声で答えた。


「ん...、幽霊...」


小声でヒグマが呟いた。


「人間の世界で言われる、白くて半透明の怖い存在さ。そんなのも知らないのかい?ん?ん?」


「し、知ってるよ、そのくらい。

バカにしないでくれ...、全く...」


煽るタイリクオオカミが少し腹立たしかった。


「幽霊になったらどうなるんですか?」


かばんは質問を続けた。


「ゲームだったら復活出来るけど、ボク達がゲーム世界の人物じゃなかったら、間違いなくやられた時点でアウトだよね」


「武器もない状態で交戦するのはあまり好ましくないのです。避けて行った方が賢明でしょう」


博士は落ち着いて言い、結論をまとめた。


博士はかばんを抱きかかえ、上空へ。

他の三人は敵を避けながら進む。

そのうち1匹がタイリクオオカミに向かう。


「なんだ、コイツ」


タイリクはなんとポケットに入れていたボールペンを取り出し、そのモンスターに容赦なく突き刺したのだった。


「ギュフ!」


という声が聞こえた。

動きが止まったモンスターに

4、5発それを繰り返すと、モンスターはドット状の形に分解されて行き消えた。


「お、お前なかなか...、やるな...」


後ろでそれを見ていたヒグマは驚愕するしかなかった。


「どうも」


ドヤ顔をヒグマ見せつけた。


(やっぱ腹立つな…アイツ...)




少し歩くと、モンスターが居なくなり、

ハート型のアーチが特徴的な橋に辿り着いた。


「この先に女王がいるよ...!」


何故かキタキツネの足取りは軽やかだった。


「キタキツネさん、そんなに会うのが楽しみなんですかね…」


かばんは思わず苦笑いした。


「そりゃ、ゲーム好きの彼女にとってゲームの中の人物に会えるのは最高に嬉しい事なんだと思いますよ。

マーゲイだってPPPと会った時はあんな感じだったんじゃないですか」


たしかに博士の言った通りだと、かばんは納得し頷いた。


「それもそうですね」






「おぉ....」


キタキツネは思わず息を飲んだ。

視界にゲームで出てきたドラゴンが横たわっていたからだ。


「本当に...、ゲームの世界だ...」


目を輝かせ、その景色を見つめていた。

すると、前からある人物が歩いてきた。


「こんにちは...。貴方は冒険者の方ですか?」


水色の長い髪を後ろで結び、丸い片眼鏡をした女性が語りかけた。


(ナインハートさんだぁ...)

「ああっ、ええっと、その、はい!

そ、そそうです!他にもいるんですけどっ!」


緊張してか言葉が細切れになる。

後ろを振り向き、かばん達に早く来るよう手招きした。


「ここに来たということは...、

あなた方も騎士団に?」


「一応、まあ、そのつもりなんですけど、ちょっと事情が込み入ってて...

全員来たらお話させてもいいですか?」


「ええ...、別に構いませんが」


表情を一切崩すことなく淡々とそう言った。


全員キタキツネに追いついた所で、個々に自己紹介した。

その後簡単な事情も話した。


しかし彼女は至って冷静だった。


「あなた方が“普通の冒険者”ではないという事はわかりました…。しかし、その解決方法は私より、女王様の方がお詳しいかと思います。こちらに来てください。ご案内します」


ナインハートに連れられ女王の前まで来た。


大きな白い羽を持つドラゴンに白く長い髪をして安らかに眠る者がいた。

この人が女王様なのだろう。


「シグナス様、よろしいでしょうか?」


ナインハートがそう問いかけると、

シグナスと呼ばれた女王はゆっくりと目を覚ました。


「どうしたのですか...」


優しくゆったりとした声の調子で言った。


「この者達はどうやら、“別の世界”からやって来た様なのですが...

私には少々複雑な事情なので、神獣様のお力をお借りできればと、思いまして」


「...わかりました」


息を吐くように呟いた。

すると、シグナスは耳を神獣に近付けた。


僕らには単に横になっているだけにしか見えないが、彼女にとっては神獣とコミュニケーションを取るための大事な手法なのだろう。


「...そうなんですね」


シグナスは起き上がり、こう話した。


「5人の旅の方...

どうやら、開けてはならぬ書を開けてしまったようですね...」


(あの冒険の書のことか...)

少しキタキツネは責任を感じた。


「ですが、それは致し方ないことです。

貴方達のお仲間が冒険の書によって開かれた暗黒の力に閉じ込められています。

この世界から助け出す術は暗黒の魔法使いの化身を、討伐することです...。

化身は時間の神殿におります。

しかし、貴方達がそこへ行く為には力が必要です...。

よって、貴方達を騎士団の一員とし、その力を授けましょう...」


「ありがとうございます、シグナス様」


キタキツネは社交辞令的に頭を下げた。


「では、我々シグナス騎士団について

簡単にご説明しましょう。

我々騎士団は5つの系統に分かれております。炎の魔法使い、フレイムウィザード、風の弓使い、ウィンドシューター

光の剣士、ソウルマスター

闇の盗賊、ナイトウォーカー

そして、雷の海賊、ストライカーです。それぞれ団長がいて個性的なのですが、全員優しい人ばかりで慕われております...」


「もうどの職業にするか決めた?」


キタキツネが嬉しそうに小声で僕に聞いた。


「いえ...、なんかゲームの世界ってわかりにくいですね...」


「炎使う以外なら...」

博士は小声で言った。


「ストライカーとナイトウォーカーねぇ...」

心做しか楽しみにしてそうなタイリクオオカミ


「何が何だか...」

それに比べヒグマは状況理解が追いついていない様だった。



「どうぞ、皆様、お好きな団長の所へ」



5人は一度輪を作り話し合った。


「じゃあボクは実際のゲームのキャラと同じソウルマスターにするよ」


「僕は...、何かを投げることが得意ですからウインドシューターでいいです」


「じゃあフレイムはヒグマで良いですね」


「おい、ちょっと待てよ。

博士それはズルいんじゃないか?」


「私はナイトウォーカーかストライカーならいいや」


「待ってください!ここは公平を期すためにくじで決めましょう!」


かばんはそう言った。

キタキツネは代表して、ナインハートに紙を求めた。かばんがタイリクオオカミのペンで職業を書いた。


「じゃあ、ボクから引くね」


かばんの手に握られたクジをキタキツネは引いた。


「一斉に見ましょう」


かばんの提案に頷いた。

その次は博士、タイリク、ヒグマ、かばんの順だった。


「行きますよ...、いっせーの...」


一斉に表を返した。


「やった!ソウルマスターだ!」


「僕はウィンドですね」


「フ、フフ、フレイム...」


「ナイトウォーカーねぇ...」


「ストライカー...」


「あ、あの、やっぱり、変えませんか?」


「博士、ここはゲームの世界で実際の

炎じゃないんだよ。それに賢いんだったら苦手を克服しなきゃ」


「まあ私からしてみても博士が火を使えるようになれば毎度料理を作りに行くことも無いし...」


「僕も助かりますけど...」


三人に見つめられた博士は溜め息を吐いた。


「わ、わかりましたよっ...

やればいいんですよね、やれば...」


苦虫を噛み潰したような顔をした。

それぞれ団長の元へと向かった。










「貴方達、どうしてあの鉱山にいたの?」


「アライさん達は別の世界から来たのだ!」


「変なこと言ってる訳じゃなくて、

本当なんだよー」


オレンジ色の髪をした女性にそう訴えた。


「...よくわからないけど、あなた達が嘘をつく理由もないからね...」


思い悩んだような顔をした。


「ところで、あなたは誰なのだ?」


「私はレジスタンスのベルよ」


「レジスタンス...?何なのだ?」


ベルは一度口を右手で抑え咳払いした。


「この街、エーデルシュタインは

ブラックウィングっていう悪い奴らに

支配されてるの。それに抵抗する為に私達はレジスタンスを結成したのよ」


二人は取り敢えず頷いた。


「あなた達これからどうするつもり?」


「ジャパリパークに戻りたいのだ!」


アライさんはそう述べた。


「...、元に戻る方法がよくわからないわ。けど、大陸の方に何でも知ってる魔法使いのいる街があるの。そこに行けばある程度の解決方法は出るかもしれないわ」


「じゃあその魔法使いのところに行くのだ!」


「待ってよアライさん。監視されてるんだよ?周りは敵が多いってことじゃないかな」


フェネックは冷静に言った。


「そうね。確かに彼女の言う通りだわ。

この辺りにはモンスターが大勢いるわ」


「モンスターってセルリアンみたいなものなのか?」


「たぶんね」


小声で交わした。


「あなた達、レジスタンスに入る?」


「アライさん、ここは入った方がいいかもね」


「フェネックが入るならアライさんも

入るのだ」


「いい?レジスタンスは

ワイルドハンター、バトルメイジ、

メカニック、ゼノン、ブラスターって

5つあるけど...、私はその中のワイルドハンターの教官なの。どんな戦い方をするのか、見てみるなら、私について来て」


二人はベルの誘いに乗り、ついて行った。


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