大学生は暇らしい
@scmizu
第1話 とある5月の大学生
「大学一年生の今だから本読んだりアートに触れたりしてほしい。どうせ三年になると研究ばっかりだよ。みんな三年生後期には教養を深めてほしい。まあ、こんなこと言っても1割くらいの人しか実行しないんだけどね。」
その言葉を聞いたとき、もしかしたら自分は暇なのかもしれない。そう思った。
「いやいや、めちゃくちゃ俺っち忙しいじゃん!」
隣で嘆いている浅見は、新歓で仲良く(?)なった同じ生命工学科の一年生だ。ちなみに俺っちとは俺達のことを指す方言のようなものらしい。
「けど、先輩はみんな一年生はゆとりだって言ってるからそうなのかもよ。」
「じゃあ聞くけどさ、今週提出の実験レポート終わった?」
「終わってない。」
「明後日の基礎分子生物学のテスト勉強やってる?」
「やってない。」
「教職のレポートはやった?」
「やっていると思うのか?」
「答えは聞く前から分かってた。やっぱり暇なんかじゃないよ。」
たしかにハンググライダー部、ジャグリングサークル、塾のバイト、教習所などやることはたくさんある。けど、そんな未来のこと考えたってしょうがないさと自分を納得させることにした。
「浅見、早く学食に行こうぜ。」
「よし行くか。」
今の大学には学食パスというなんとも過保護な仕組みがある。親が一人暮らしの子供のために振り込むとそのお金は学食でしか使用できないというものだ。浅見は昼にしっかり食べて夜を節約しているらしい。
「…やっと今週末にハング行けるな。」
「…そうだな。本当に楽しみ。」
こんな感じで食事中はお互い口数が少なくなるけど気まずくならないから一緒にいられるのだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます