第11話 過去と未来と
〔これが貴様が隔離されている理由だ〕
映像が終わり、沈黙を破ったのはサンドラだった。
「司令、私の身に何が起こったんですか?」
だが、あんな映像を見たにも関わらず、マイは不思議と不安も焦りも戸惑いもなく、自分でも不思議なぐらい落ち着いていた。
〔それについては医療センターが全勢力をあげて調査中だ。だが、これだけは間違いなく言える。
貴様は人類最後の希望になった〕
「最後の希望?」
その言葉の意味が分からず、マイはサンドラにそう聞き返していた。
〔これから見せる映像、話す内容は最高機密だ。外部に漏らすと死刑・・・ふっ〕
と、サンドラは思わず笑っていた。
〔自分自身が最重要機密になった貴様にこんな話しをする必要もないか〕
「え?」
サンドラの言葉の意味が分からず戸惑うマイを置き去りにして、再び彼女の前にスクリーンが浮かび上がり、映像が流れ始めた。
〔アステロイドベルトで資源衛星を探していた国際宇宙開発機構はある日、特異な小惑星を発見した〕
そこに映し出されていたのはガリレオだった。
〔この、オーストラリア大陸ほどもある、後にガリレオと命名される小惑星はスキャンの結果、天然資源の宝庫であることが分かった。
だが、それ以上に調査隊の興味を引いたのは、この小惑星の中心部に、あらゆるスキャンを受け付けない未知の‶何か″が存在することが分かったことだった〕
マイの前に、ガリレオをスキャンした数十枚もの画像が並べられ、その全てが、ガリレオの奥深くの中心部に黒く丸く映し出される未知の‶何か″があることを示していた。
〔調査隊は試験採掘と虚偽の申請をして中心部まで穴を掘り進めることにした〕
その言葉を補足するかのように、ガリレオの表面から中心へと掘り進められていく様子が映し出された。
〔3年後、調査隊はようやくガリレオの中心部に到達した。
そして、岩盤の中から姿を現したのは、直径が1㎞にも及ぶ巨大な球体だった〕
周りの岩石が全て取り除かれ全貌をあらわした球体は、球形にえぐられた岩場の中に漂うように浮いていた。
そして、その周りに足場が組まれ、岩場を更に削りながら、球体を包み込む球形の壁が、マトリョーシカのように幾重にも作られ、壁と壁の間に衝撃吸収ジェルが流し込まれていく。
〔だが、ここで調査は行き詰った。
一体これは何なのか?
専門家や有識者をまじえ、調査隊の間で激論が交わされた。
鍾乳石のように数十億年かけて形成された鉱物ではないか?
だが、調査の結果、これはガリレオに存在しない未知の鉱物で形成されていることが分かり、この説は否定された。
となると、残されたのは、人工的に作られたものではないか?という説だ。
もし仮にこれが高度な文明を持つ知的生命体によって作られたのだとしたら、何の目的で作られたのか?
そして、何のためにこれを巨大な小惑星の中心部に埋めたのか?
何か危険なもの、例えば放射性物質や使用禁止になった兵器などを廃棄するためのカプセルではないか?
王や貴族、もしくはそれらに類する身分の高い者たちを埋葬した墓ではないか?
罪を、しかも死刑に値するような重罪を犯した者たちを永久に閉じ込める監獄ではないか?
なかにはブービートラップではないか?という意見まであった。
激論の末、調査隊は球体の表面を採取することを決定した。
レーザーカッターに始まり、ドリルや液体窒素、爆薬、果ては試作段階の新型兵器まで投入したが、表面に傷一つ付けることさえ出来ず時間だけが過ぎ、その全てが徒労に終わった。
が、裏を返せば、この球体はこれだけのことをしても反撃してこなかった。
つまり、仮にこの球体の内部に空間、空洞が存在するとしても、そこには好戦的な思想を持つ危険な生命体や、それに準ずるAI兵器等は存在しない。
調査隊はそう結論付け、ガリレオの地球圏への移送を認めた〕
スクリーンには、数え切れない程の超巨大な推進器をそこら中に取り付けられ、そこから噴き出す眩い炎の光りに押し出されるように、ゆっくりと動き出すガリレオの姿があった。
〔今考えればゾっとする話だ。
純粋な研究目的とはいえ、このような未知の物体を地球圏に運ぶことを許可し、それを本当に実行するなど。
・・・しかたないか、当時の人々は私も含め‶我々は無敵で、その力と英知を結集すれば、どんな困難も乗り越えられる″と本気で考えていた。
今から考えれば平和ボケもはなはだしいが、な。
話が逸れたな。
その後も調査は幾度となく続けられたが結果は同じ。
そして、調査と並行してガリレオの本格的な開発と移住が始まって10年が過ぎたあの日、それは起きた〕
サンドラの言葉と共に映像が切り替わり、ポールシフトが起こると同時に、球体表面に穴が出現した瞬間が捉えられていた。
〔見ての通り、ポールシフトと同時に球体表面に穴が現れた。
調査隊は国際宇宙開発機構に穴の内部へ入る許可を申請したが、ポールシフトの影響で地上との通信は途絶。
仕方なく独断で球体内に入ることを決めた。
そして、それに私も参加した〕
「え?」
〔当時私は落ちこぼれの大学院生だった。
私が受講していたゼミの教授が球体の調査を依頼されガリレオに行くことになり、落第寸前だった私は他言無用を絶対条件に、助手をしたら単位をやると言われ、喜び勇んで同行していた〕
その言葉を裏付けるように、パワードスーツを装着した調査隊が穴の中に入って行く様子がスクリーンに映し出された。
〔これは私が装着していたスーツのカメラの映像だ。
当然と言えば当然だが、助手の学生がそんな未知の危険な場所に同行させてもらえるはずがない。
私に与えられたのは、穴の前で待機し、教授たちが撮影した映像を有線で受信して記録することだった〕
カメラが捉えた穴の内部は戦車が通れるぐらいの広さの楕円形の通路になっていて、その通路の壁全体が発光していた。
だが、歩いて行くうちに通路はいつの間にか狭まり、最終的には、人ひとりが歩くのがちょうどいいぐらいの大きさの菱形の通路になっていた。
〔球体の奥へとつながる通路は、予想通りと言うべきか、拍子抜けと言うべきか、教授たちは全く抵抗を受けることなくあれに辿り着いた〕
通路を抜けた先にあったのはドーム型の空間で、そこには巨大な胸像があった。
複数の装甲が重なる額から4本のツノが生え、その下にも4ツノ目があるのが分かる。
鬼とも悪魔とも形容しがたい不気味な顔だけでも、その長さはゆうに10メートルはあるだろうか?
その下の胸部も、そして斜め後ろに伸ばした、手首から先を壁に埋める格好で固定された両腕も、幾つもの漆黒の装甲が複雑に重なり合い、要所要所から伸びる大小様々なツノが、更に不気味さと恐ろしさと禍々しさを増長させているように見える。
その姿にマイは見覚えがあった。
「・・・ハーケリュオン」
そう。巨大過ぎるオブジェのように圧倒的で絶対的な存在感を示すそれは間違いなくハーケリュオンだった。
そして、その床に埋まる胸の中心に三角形の穴が見えた。
「あれは・・・」
それは、上半分しか見えないが、ハーケリュオンの胸の中心にあり、紅蓮の炎を噴き上げている菱形の穴に間違いなかった。
だが、ハーケリュオンの装甲の隙間から赤い炎の光りは見えず、胸の穴も人工的に作られたトンネルといった感じだった。
教授たちは穴の中にドローンを飛ばしたが、穴の内部は電波が遮断されるらしくドローンは操作不能になって墜落し破損。
協議の末、彼らがトンネルの中へ入ろうとした刹那、映像の上に表示されている年月日と時間があの時刻を指し示した。
それはまさに、日本とニュージーランドにブロッケンが出現した時間だった。
その瞬間、教授たちのカメラに映る真っ暗なトンネルの彼方に赤いひかりが灯ったかと思うと、それが一瞬にして太陽の如き眩い光りとなって全てを飲み込み映像が途切れた。
「!?」
そして、それと同時にサンドラも球体の穴から噴き出した紅い炎に吹き飛ばされ、後方の壁に叩き付けられていた。
「ぐうぅ」
スーツを装着していなければ即死を免れないほどの熱と衝撃を受け、薄れゆく意識の中で彼女は見た。
噴き出した赤い炎によってドロドロに熔けた穴の中から何かが姿をあらわすのを。
それは人間、しかも全裸の美少女だった。
だが、その頭には禍々しい大きなツノが生え、腕も肘の上あたりから見たこともないような鱗に覆われ、指の先には鋭く伸びるツメが伸びていた。
そして何より異様だったのは、その下半身が蛇か竜のそれのような太くて長い尻尾のようになっていたことだった。
「・・・ツルギ」
それは間違いなくツルギだった。
〔この時我々が遭遇した生命体のことは、今更なんの説明もいらないだろう〕
「はい」
〔この生命体は、抵抗もせず我々の捕虜となった。
いや、当時我々がそう思っていただけで、実際は逆だったと私は思っている〕
「逆?」
〔この生命体は囚われたふりをして、逆に檻の中から我々人類が交渉するに値するか否かを観察していたのだと私は思う。
彼女が本気になれば、どんな檻も意味をなさないからな。
だが、そんなことにさえ気付かない我々は、彼女と、彼女がハーケリュオンと呼ぶ巨大兵器の解析に取り掛かった。
しかし、ハーケリュオンの装甲のサンプルを採取することも、内部構造をスキャンすることも出来なかった〕
スクリーンには、窓一つない巨大過ぎる空間が映っていた。
映像の中のツルギは、ワープドライブエンジンの爆発さえ吸収するジェルに満たされた爆発物処理室の中心に浮くガラス張りの小部屋の中で、貫頭衣に身を包み、調書に応じていた。
しかも、椅子に座る彼女の下半身は、尻尾ではなく2本の脚になっていて、頭のツノも背中の翼も、腕の鱗もツメも消えていた。
〔しかも彼女は驚くべき適応能力を我々に見せつけていた。
ツルギはたった1日で我々の言語を理解し会話が出来るようになっていた。
それだけではない。
見ての通り、彼女は僅かな時間で我々と同じ姿になったのだ。
これが擬態なのか変態なのかは分からない。
だが、これほどの適応能力を持つ生物は見たことがない。
この能力を遺伝子レベルで解明できれば、人類は地球と大きく環境が異なる惑星にも移住できるようになるかもしれない。
すまない。また話が逸れたな。
3日目、我々は彼女に対話を申し込んだ〕
静止していた調書の映像が動き始めた。
「えっと、あなたのこと、なんて呼べばいいのかしら?
あなたの名前を教えて?」
ツルギにそう訊ねていたのはサンドラだった。
「また名前?それ何回聞くの?何度聞かれても答えは同じ。私は兵器。私に名前はない」
「兵器って兵士ってこと?」
「う~ん。そうだけど少し違う」
「何が違うの?」
「私たちはあの大きな兵器を動かすために創造された生命体」
「創られた?誰に?」
「神」
「神?ですって?神、神ね」
「信じられない」
「いえ、信じるわ。これだけのものを見せられて、現実だと受け止められなかったら只のバカでしょ。
・・・ということは、やはりあの、私たちがブロッケンと呼ぶバケモノと戦うために神はあなたたちを創ったのね?」
「そう。ぶろあなたたちの言うブロッケンはロキに、私たちはオーディンに創られた生命体」
「・・・ラグナロク」
「ラグナロクが終わる直前、私たちは神の命令により柩の中で眠りについた」
「なぜ?」
「敵の中にラグナロクの業火を掻い潜り生き延びる者があらわれるかもしれないから。
そしたら目覚めて、それを倒すようにって・・・
神は直接手を出すことを止めたって・・」
「なぜ?」
「ラグナロクの反省。神がいろんな争いに直接干渉すると、宇宙を滅ぼしかねないって悟ったんだって。
でもすごいね。神の力を借りず、自分たちの英知だけでブロッケンを倒すなんて。まさかここまで進化した生命体があらわれるとは思ってなかった」
「確かに倒したかもしれない。けど、失ったものが大きすぎる。
地球そのものを破壊しかねない大規模破壊兵器はも使えないわ。
あれはまたあらわれるの?」
「あの穴は向こう側の宇宙とつながってるから、これからも来るよ。間違いなく。
終わらせるには、あらわれ続ける敵を全部倒すか、穴を完全に塞ぐしかない」
「あの巨大な人型のことを教えて。あれは、あの未確認巨大生命体を倒すために創られたと言ったわね。今の私たちにはあれが必要なの」
「無理だよ。あれは私たちにしか動かせない」
「私たち。その基準はなに?種族?性別?」
「その両方」
「あなたたちの種族の中でも、女性でなければ動かせないのね?」
「そうじゃなくて、私たちは女しかいない種族なんだ。
それにあれは2人で動かすものだから」
「1人じゃ動かせないの?」
「動かせないことはない。けど、1人じゃ本来の力の20%も引き出せない」
「あなたのパートナーは今どこにいるの?」
「死んだよ、ラグナロクの戦いで。ハーケリュオンの半分と一緒に持ってかれた」
「あれで半分なの?」
「いや、神が創った兵器は自己修復するから、ハーケリュオンは元どおりになってる。でも、操縦者はそうはいかない。・・・私たちは戦力じゃなくなった。
柩に封印されたのにはそういう理由もある」
「操縦者を私たちが補うことはできない?」
「ニンゲンが?どうかな?加護の光りを浴びても死ななかったら出来るかも・・・」
「加護の光りってなに?」
「あの胸の真ん中から噴き出している赤い
「え?あれ?」
「あの焔を
そこで映像が途切れた。
〔組織は極秘裏に女性限定で志願者を募り、ツルギと一緒にハーケリュオンへの搭乗実験を行った。だが、全て失敗に終わった〕
「志願者って、どれくらいの数の人が?」
〔正確な数は私も知らされていない。そのほとんどは科学者や軍人たちで、成功したら刑を免除することを条件に死刑囚を参加させたという噂もある。真意のほどは分からないけど・・・。
でも結局多くの尊い命を奪っただけで適合者はあらわれず計画は中止。
国連はこれと同時に進行させていたもう1つの計画を主幹作戦とした。
軍と民間企業が協力し、ツルギから聞いたハーケリュオンと同等の力を持つ巨大兵器を造る、コードネーム、ギア・プロジェクト。別名、G計画〕
「だからギアのパイロットは女性しかいないんですか?」
〔そうだ〕
「これと私が隔離されていることがどう関係してるんですか?
ツルギと私をどうするつもりですか?」
〔ツルギは封印されることが決まった〕
「え?」マイはその言葉に意味をすぐに理解することが出来なかった。
〔今回の戦闘、いや、ある意味虐殺と言っていいだろう。
この責任は誰かが取らなくてはならない〕
「ま、待ってください。あの出撃を主張したのは私です。ツルギはなにも・・・」
〔ハーケリュオンが2つのチーム、合計12人ものパイロットを虐殺していた時、貴様は意識を失っていたと聞いたが〕
「今回の事態を招いたのは私です。
私がハーケリュオンの力を過信し、なおかつブロッケンの能力を分析することなく不用意に出撃を強行したのが原因です。ツルギに過失はありません。
それに、ブロッケンを迎え撃つにはツルギとハーケリュオンがいることが絶対条件なはずです」
〔確かにそうだ。だが、ツルギとハーケリュオンが
最高評議会の出した結論はこうだ。
‶ハーケリュオンは必要だがツルギは必要ない″〕
「そんなバカな。ツルギ無しでどうやってハーケリュオンを動かすんですか?」
〔貴様がいる〕
「え?」
〔加護の光りに焼かれても、ツルギの血を飲んでも死ななかった。
貴様ならハーケリュオンを動かせるはずだ〕
「そんなのメチャクチャです。ツルギを封印して私がハーケリュオンを動かせなかったらどうするんですか?
最初からツルギの封印ありきで話が進んでいるとしか思えない」
〔本来ならツルギも貴様も死刑だ〕
「!?」
その瞬間、自分が置かれた立場と、その身にかかる現実を知らされ、マイは時間が止まったように動かなくなっていた。
いや、あまりに唐突に聞かされた、自身に圧し掛かる現実の大きさと重さを理解し受け入れることが出来ず、一瞬思考が停止したと言ったほうがいいかもしれない。
〔ツルギの脳に処置を施し、脅威を払拭したうえで、貴様をメインパイロットとして引き続きハーケリュオンに搭乗させようという意見もあった〕
「・・・司令、何を言ってるんですか?」
〔だが、彼女の回復力は我々の理解の
四肢の欠損はもちろん、生死にかかわる臓器の損傷もすぐに治癒する。
脳もその例外ではなかった〕
「試したんですか?信じられない」
〔彼女の同意の上でだ〕
「同意?」
〔しかし、今話した通り全て失敗に終わった。となれば、残るは貴様しかいない〕
「私、私をどうするつもりなんですか?」
〔貴様にハーケリュオンを操縦させるために複数の案が上がった。
その中で一番現実味があるのが貴様のクローンを造ることだ〕
「クローン?クローン人間を造ることはメアリー条約で禁止されてるはずです」
〔そんな悠長なことを言ってる場合か。人類が滅ぼされたら条約もクソもない。そうだろ?
・・・それに、これも成功するかどうか既に怪しくなってきている〕
「え?」
〔貴様の髪の毛から細胞を培養しよとした。
が、ツルギと同様に今の我々の技術では増殖させることの出来ないものに変異していた〕
「私が意識を失っている間に勝手にそんなことをしたんですか?」
〔となれば、残る手は1つ。
貴様の胎内から卵子を取り出し受精させ、クローン人間を造る。それしかない〕
「え?司令、何を言って・・・」
〔だが、これには貴様の同意が必要だ。同意してほしい〕
「・・・私のクローン・・・」
〔正確にはクローン部隊だ。そうすればギアのパイロットを補充する必要がなくなる。
未来ある若い命を戦場に送らなくて済む。
だがこれも、貴様の卵子と人間の男性の精子が受精できればの話しだがな〕
「それって、どういう意味ですか?」
〔ツルギと違い人間だった貴様の卵子なら、まだ受精する確率が残っている。
そしてそれが、現時点で我々が勝ち残るために残された最後の希望だ〕
「・・・人間だった?司令、何を言って・・・」
〔映像を見ただろう。
カニやトカゲじゃあるまいし、どこの世界に切断された四肢が再生する人間がいる?
だが、その遺伝子を受け継ぐ命を造り出すことができれば、無敵のパイロットを生み出せる。
そうすれば、少なくとも命の消耗戦だけは避けられる。
分かってくれるな、マイ?〕
「わかりません」
〔なに?〕
マイは気丈に、そしてハッキリと自分の意志を口にしていた。
だが、そんな返事が返ってくるなどとは心の隅にも思っていなかったのか、サンドラは戸惑いの声をあげていた。
〔き、貴様、気は確かか?自分が何を言っているか分かっているのか?〕
「司令、その言葉、そっくりお返しします」
〔なに?〕
「私の身体に何が起こったのかも分からないのにクローンを造って、クローンの大部隊を造って、もしそれらが私たちと同じような過ちを繰り返したら、制御不能になったらどうなりますか?
人類がブロッケンではなくギアの大部隊に滅ぼされるかもしれない。
ツルギのことを危険だから封印するといっといて、あなた達はそれを遥かに上回る、もしかしたら取返しが付かなくなるかもしれないぐらい危険なものを生み出そうとしている・・・」
〔子供が分かったような口を聞くな〕
マイの心の叫びはサンドラの絶叫に掻き消されていた。
「・・・司令」
〔そんな綺麗ごとはもうたくさんだ。
我々が今日までなんの努力もしてこなかったとでも思っているのか?〕
「え?」
〔ハーケリュオンがいくら無敵でも1機ではどうにもならなくなるのは目に見えていた。
だから我々はツルギのクローンを大量に作り、量産されたギアに搭乗させる計画も立てていた。
だが、彼女の細胞は培養することができなかった。
おそらく悪用させないために神がそう細工をしたのだろう。
・・・そのせいで、どれだけの若い命が奪われた?
何百人のパイロットが死んだ?
貴様と同期で今でも生きているパイロットが何人いる?〕
「同期で生きているのは、・・・アンナだけです」
〔そしてこれからも死に続ける。それを防ぐには貴様のクローンを造るしかない〕
‶ビ~、ビ~、ビ~、ビ~、ビ~、ビ~″
その時、けたたましいサイレンがガリレオ内に鳴り響いた。
〈つづく〉
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