二天甲記

仁志隆生

第1話「今凄いかの?」

「信じられん話だが、嘘を言ってないのはわかる」

「やっぱ彦右衛門ひこえもんさんは信じてくれると思ったよ」

 

 ここは宇和島城下町。

 彦右衛門の元に河童の武蔵むさしが訪ねてきていた。

 武蔵はとある世界に迷い込んだ時の話をしていた。



「武蔵さんって凄い河童さんなんですね」

 香菜かながお茶のおかわりを持ってきて言った。

「たしかにな。前にも言ったが、武蔵はいずれ大きな事を成すような気がするのだ」

 彦右衛門がそう言うと、そこにいた他の友人達も頷いた。


「え~、そうかな?」

 武蔵は首を傾げた。

「ああ。きっとな」





「ひょっひょっひょ♪ 彦右衛門さん、皆。わし、今すごいかの?」

 もう老人となった武蔵、いや池免武蔵いけめんたけぞうは既にこの世を去った友人達に語りかけていた。




 この物語は河童から人間となった男がいろいろとやっていく物語である。



 その名も


「二天甲記」

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